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2024年8月10日の日記「ブルーピリオドの原作改変について」

※この日記は映画『ブルーピリオド』のネタバレを含みます。

・ブルーピリオドを観ました。原作は履修済みで、もう何周もするくらい読み倒しました。一般大学と違いはあれど、僕の受験期の苦しみを八虎と共有して乗り越えた、とても思い入れ深いマンガです。

・実写映画化すると聞いた当時は、思い出のマンガを手を替え品を替え語り継いでくれること、それだけでも嬉しかったのを覚えています。世間の風潮では「実写化」というだけで厳しい目を向けられることが多かろうが。

・せっかくだし原作と比較しながら語ってみよう。個人的によかった原作改変を取り上げてみる。

・まずは八虎の家庭環境について。父親の職業が夜勤の清掃員であるという改変。これは生活が困窮している為、嫌でも国公立に行かせたいという母親の意思の裏付けになっている。また、「藝大を目指す」という決断の重さ、後の無さを際立たせており、良い改変だと思う。

・森先輩と出会うシーン。原作では森先輩の荷物を代わりに美術室まで運んであげるところだが、映画では転んだ時に散らばった画材を拾ってあげる、というように変わっていた。「代わりに運ぶ」ことが美術室への自然な動線になっていたのに、とは思ったが、八虎がしゃがんだとき森先輩と視線が合う瞬間がスゲ~素敵だったので、イイ。

・八虎が「好きな風景」を描くシーン。上述の場面から地続きで森先輩と一緒に描くよう変わっている。ここは単純に、森先輩の出番が増えて嬉しかった。森先輩って八虎にきっかけを与える舞台装置みたいなもんで、いちキャラクターとしての掘り下げが滅多に無い。だから初対面の金髪に一緒に描こうって言えるくらい図太いんだ、って原作キャラクターの補完となっていてよかった。

・恋ちゃんがパティシエ専門学校に行くことを八虎に打ち明けるシーン。原作だとラーメン屋のカウンター席で横目に話すふたりだったのが、ケーキ屋のちいさな机を挟んだ状態で面と向かっての告白になっていた。水族館の巨大水槽を背景に龍二と傷心旅行するシーン(原作には無い)然り、マンガでは細かいコマでブツ切られていたモノが、ワンカットで一本の線のように流れていたのが、映像だからこそできる表現だな~、と。

・結論としては、原作ファンからみても大満足でした。大学受験編の単行本第1〜6巻分を115分に収める訳ですから多少早足にはなっていましたが、大事に、大事に描写すべきシーンの力の入れよう、紙っぺらを映像作品に落とし込んだ際の違和感の中和、原作改変の程よさがすごく上手。「流し」で、なんとなく撮りましょっか〜、のケはほとんど無い。

・強いて言うなら、ラストの森先輩がお化粧してたところ、森先輩はずっとイモ臭いままで、油画一筋、男っ気をちらつかせないでほしかった。生身の人間が『ブルーピリオド』を演ってしまったせいで、多面的で肉のついたキャラクターだと脳が認識した。実写化の弊害、こんなところに出るのか。どうやら俺はユニコーンだったらしい。俺、悔しいよ。(悔しいと思えるならまだ戦えるね)

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