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⑤私は22歳年上の彼の愛で再生していく。彼はアウトドアが好きだった。不登校になった私を、あちこち連れ出してくれた。勉強も彼が教えてくれた。

10代の頃、集団レ〇プされた。自殺未遂を繰り返していた。搬送先の病院はたいてい同じ。
「とても辛いね。死んでしまえば楽なのに、とか思うよね。でも、自殺すると天国には行けないんだよ。地獄に落ちるんだよ。もっと苦しむことになるんだよ」
気づいたら救命救急の医師と交際していた。22歳も年上だった。私は、彼の愛で再生していく。彼は私の人生において、最大の恩人であり、最愛の人。私は彼のことが忘れられない。

彼はアウトドアが好きだった。不登校になった私をスキューバーダイビングや、登山に連れ出してくれた。私は根暗なインドア派だったけど、アウトドアも好きになった。でも、後に色々あって、私は仕事ばかりするようになった。気がつけば趣味といえるものもなかった。アウトドアを趣味にしておけばよかったと、今さらながら思う。

「傷ついて苦しんでいる理由を教えてくれたね。絶望感でいっぱいになって当然だよね。でも、信じてほしい。人によって傷つけられるけど、救ってくれるのも人だから。 今までやってきたことは全部無駄、なんて思わないでほしい。諦めないでほしい。僕は、愛の笑顔を見たいんだ」

22歳年上の彼は、夏に登山をした。不登校になった私も一緒に連れていってくれた。彼は長野県の、とある山頂ヒュッテで、救護所のボランティアをしていた。目的地に着くと、医学部や看護学部の学生たちがいた。彼は楽しそうに学生たちと話していた。当時の私には、話の内容は意味不明だったけど、みんなが楽しそうにしている場に、身を置けるのが心地よかった。笑って話す彼を飽きもせず、ずっと見つめてた。

山頂からの眺めは雄大だった。自分の悩みが少し小さくなったように思えた。山頂から見る、夕焼けや雲海が美しかった。夜になると、ふもとの街の灯りが雲に反射して、虹色の街が投影されているかのようだった。でも、1番美しいと思ったのは、朝日だった。
日の出前にヒュッテの外に出た。標高2700m。真夏だけど肌寒かった。彼はヒュッテから少し離れた場所にある穴場を知っていて、2人きりになれた。地面にすわり、彼が後ろから私を抱きしめる。彼は身長175cmとかだったかな? もっと高かったかも。私は149cm。彼の腕の中に、すっぽり丸ごと入ってしまう感じ。外気が冷たい分、私の頬に触れる彼の頬を温かく感じた。周りは静かで彼の呼吸音が聞こえた。彼の腕の中には、揺るぎない安心感があった。ずっと抱きしめててほしかった。
「もうすぐだよ」
朝日が美しすぎて、本当に感動した。涙がでた。彼がキスして涙を拭きとった。いつのまにか正面から抱きしめられてて
「愛にも、新しい1日が始まるよ」
と、彼は唇に何度もキスをした。
「大丈夫。僕がついてる。愛は、どんな困難も乗り越えられるよ」

彼は、スキューバーダイビングにも連れて行ってくれた。自力でウエットスーツが脱ぎ着できなくて、彼に笑われた。海へのアクセスは、砂浜から海まで歩く「ビーチダイビング」と、ボートで海に出て、ボートから海に飛び込む「ボートダイビング」がある。私はビーチダイビングは苦手だった。足にフィンをつけてるし、ボンベなどの機材が重くて、上手く歩けなかった。彼は私が転ばないように、後ろから支えてくれた。
水深20mから見上げると、水面がキラキラしてた。海底の白い砂、水面の青、魚が空で泳いでいるかのようだった。小さな魚たちが群れを作っている。群れが方向を変えるときに太陽光を反射して、これもキラキラしていた。岩を、よ~く観察すると体調2mmのカラフルでかわいい、ウミウシがいた。水中で美しい物たちをたくさん見れた。呼吸するとエアがボコボコして、その音だけ聞こえた。そして、いちばんハマったのが水中の無重力感だった。
嫌なことを考えずに済んだ。汚れた自分を洗い流してもらえる気がした。
ナイトダイビングもよかった。日没直前に水深10mぐらいで待機する。水面が夕日で赤くなる。次第に真っ暗になる。水深はたったの10mなのに、深海に来たかのような錯覚に陥る。このまま海の藻屑になるのも悪くないって思った。

「愛、この世界には知るべき素敵なものが、たくさんあるよ」
「愛、僕は、生きるに値する世界だと思うよ」

 私は不登校になり、高校は留年した。彼には勉強も教えてもらった。特に英語を。
「学校は行きたくなければ行かなくていい。僕が教えてあげる」
「英語論文が読めるくらいになろうね」
なぜ英語論文が読めることが目標だったのか、当時は分からなかったけど、用意周到の彼だから、私の進路も予想していたのかも。それを目指したことは、今の仕事でとても役に立っている。でも、未だに英語は下手。翻訳機も頼りながら、永遠に勉強中って感じ。

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