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教室運営で思うこと(5)プログラミング教育の落とし穴

プログラミングの指導をされている方、この落とし穴に気付いてますか?

※この記事では教室運営について思うところを書いています。


意外なところに落とし穴

エジソンアカデミーのフランチャイズ校として8年目になります。
授業に使用するテキストは本部から仕入れています。
カラーの写真とイラストがふんだんに使われ、解説もわかりやすく、
懇切・丁寧に作られた良いテキストだと思います。

さすが「教材メーカー発のロボットプログラミング教室」と謳うだけあって、細部にわたり子供たちが困らないように配慮されています。

当然、競合する他のプログラミング教室も
子供たちの使うテキストは分かりやすいものになっていると思います。

それとは別に研究のため、市販のさまざまな小中学生向けプログラミングの書籍を購入し、目を通しています。
どれも最後は誰でも完成できるよう懇切・丁寧に作りこまれています。

でも、この懇切・丁寧なテキストが、
プログラミング教育の「落とし穴になる」可能性があります。

ロボットの組み立てパートは問題なし

私の教室に通う生徒を観察していると、
テキストを渡したとたん、写真とイラストを見てロボットを作り始めます。

ロボットの体をつくるアーテックブロックは、
ブロック同士をくっつける突起が
レゴブロックのように左右対称になってません。

くっつける場所がずれると、途中で組み立てが上手くいかなくなるか、出来上がりが全く違ってきます。
入会して日の浅い子は、そこに気が付かなくて
完成したと思っても出来上がりが違うので作り直すということがままあります。

そういう経験を通して写真の読解力がついてきて、
ロボット組み立ての写真の見方もブロックの突起の向きに注意するようになります。
手前味噌ですが、
アーテックブロックを使ったロボットの組み立てには、今のところ何の懸念も持ってません。

要領のいい子に注意!

プログラムを作るパートも、パソコンの画面をキャプチャした図で「何をすればよいか」わかりやすく描かれています。

とはいえ、ブロックを組み立てるのと違い、子供たちのプログラムを作る経験値はほぼ”0”です。

思い通りに進みません。

そこで悪戦苦闘しながらも、
試行錯誤を繰り返している子は脳みそフル回転の状態です。
思考の邪魔をしないよう口を挟まず様子を見守ります。

一方、
要領のいい子はテキストの後ろのほうを見はじめ完成例を探します。
最後はプログラムを完成させてロボットが動くようにテキストができています。そこを逆手にとるという知恵者です。

完成例として記されているプログラムを見つけると
何を作っているのかわからないまま、
目に入ってきた情報で手を動かして(少しは考えるかもしれません)、
プログラムをつくって、
それでロボットを動かして満足しています。

「習うより慣れろ」とは言うけれど

大人がプログラミングを学習するときは、「習うより慣れろ」とよく言われます。簡単にいえば他人の作ったプログラムを真似して頭と体を動かしたほうが習得が早いからです。
もちろんこれは、目の前の出来事を分析する脳力が備わっているからできることです。頭脳が絶賛成長中の子供たちはまだその域の成長に達していません。
つまり、要領のいい子は「写しとるだけの作業」になっているのです。

やっていることを理解しながら写しているなら、
それは学びになります。
しかし、何もわからずに行えば、
それはただの作業です。

私が落とし穴と考えているのは、懇切・丁寧なテキストであるため、

わからないままプログラムを完成できてしまう」

ということです。

これは、テキストの問題というよりも、指導者が留意して子供たちを指導しなければならない課題と考えています。

どのように指導しているか

私の教室は
「自らの頭で考えて答えを見いだせるようになること」
を目標としています。
くだんの生徒が満足しているところを見過ごすわけにはいきません。

指導としては、
テキストに記述されてない課題を与え、ロボットのプログラムを改造するよう指示を出します。

彼が参照できる範囲に答えはありません。
意味も分からず写しただけですから大変です。
改めて写したプログラムとにらめっこします。

どこがロボットの動作に関係しているのか、
どこをどのように変えれば課題をクリアできるのか、

頭をフル回転させて課題に取り組むことになります。

限られた時間で完成させて、子供たちに満足感を与えておしまいにしてもいいのですが、それは私たちの提供するサービスではありません。

テキストの完成度が高いからこその「落とし穴」です。
指導者が注意してみていないと、自ら考えもせず自分以外のところに答えを求める要領の良さだけを覚えてしまう子になるのではないかと心配になります。

余談:ビジネススクールなら絶賛されるかも

もし、私の教室がビジネススクール風で、
「早くロボットを作って動かす」
という課題を出したのであれば、

くだんの彼は利用できるものを利用し、
効率よく短時間で目標を達成したことになります。
その判断は合理的で彼は褒められるべきでしょう。

でも、やっぱりそのままで終わらせないでしょうね。

次の課題では、
「今回導入したプログラムが著作権で保護されていて使えない」
という前提を加えて、目標を達成するにはどうするか考えてもらいます。

さて、彼はどうするでしょう?

著作権者と交渉して使えるようにするのか、
それとも自ら開発に着手するのか、
協力者を探すのか、

どういう答えを見つけるのか、やらせてみたい気がします。

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