せっかくの生前贈与・遺贈がひっくり変える!?「特別受益の持戻し」

安易な相続対策は注意が必要

世間のある程度資産がある方はみな相続や、相続税に関心があるのではないでしょうか?

関心があるばっかりに、相続や相続税対策として様々な提案を受け、様々な対策をしている人が多くいらっしゃいます。

対策には色々な方法がありますが、もっともポピュラーなものが生前贈与をするというものがあります。

こんなセリフをよく聞くのではないでしょうか?

「年間110万円までの贈与なら税金はかかりませんし、確定申告も不要です!」

またこんなこともきくのではないでしょうか?

「ただし被相続人の死亡時から三年遡った期間までの贈与は相続財産とみなされ、相続税の対象になってしまうので注意です!」

はい。どちらも間違いではありません。しかし、ある人にとってメリットがあることがある人のデメリットとなり得る。これが相続対策であるということも念頭にいれなければなりません。

相続税自体は安くなったが、渡したい相続人に思うように渡せないなんてこともおこりうるのです。

特別に得た利益は相続人の間で分け合わなければならない

民法には,複数の相続人(もらう人)の中に特別に被相続人から利益(「特別受益」といいます。)を得た人がいる場合,その相続人の特別受益の分だけ遺産の取得分が減額されるという制度があります(民法903条)。

これは他の相続人との公平を図るための制度で、これを特別受益の持戻しといいます。

つまり相続人は公平であるべきだという理論がここにはあるわけで、渡したい人に多く渡すことは不公平であるという解釈になるのです。

よくやりがちなのが、子供が複数人いる場合に、近くにいてくれる子にどうしても多額の資産を贈与してしまうなんてことです。

これも正しく対策をしなければせっかくの努力が水の泡となってしまします。

分け合わなくてもいい場合(特別受益の持戻しの例外)

ただし、特別受益の持ち戻しには以下ような例外があります。

当然すべて被相続人から相続人に対する贈与の場合です。第三者に対する贈与や、相続人に対してであっても売買契約で譲渡した財産(適正価格である必要あり)は除きます。

・遺言や生前の書面で特別受益を計算に考慮しないよう決めている場合(持戻しの免除)

・黙示の持戻し免除の意思表示があったと判断される場合(説明省略します)

・婚姻期間が20年以上の配偶者に対し、遺贈または贈与した居住用建物又はその土地

・社会通念場相当と認められる生活費の贈与


持戻しを防ぐには

前項で書いた通り例外規定がありますので、これを上手に使う必要があるでしょう。一番簡単なのが、持ち戻しを免除することを被相続人がしっかりと書面でのこしておくことです。

持ち戻しの免除をしても慰留分は侵害できない

持戻し免除の意思表示があっても,遺留分の計算においては特別受益も合算しなければならないものとされています(民法903条3項)。

慰留分とは相続人が相続できる法定相続分の1/2の金額です。この金額を侵害してしまっている場合には、相続時に金銭で侵害分を補填しなければならないので注意が必要です。

持ち戻しは永遠に遡るのか?

では一体どれくらい前の贈与まで遡るのでしょうか?

こちらは最近法律が変わったのですが、10年間まで遡ることとなっております。

逆に言えば10年以上遡ることはできなくなっています。

実務で言えば、10年以上まえの贈与の証拠を掴むことはなかなか困難なので、やはり10年という数字は妥当な数字なのだと思います。

ルール通りにやっても揉める

ここまではルールに基づいたことを書きましたが、実際人は感情でうごきますので不公平感がうまれているのであれば揉める可能性は大いにでてきます。

あいつはそういうことしないから大丈夫とおもっていても、いざ当事者になると入れ知恵する第三者がでてきたり、専門家がでてきたりして予想だにしない請求をされることも多々あるのです。

ルール通りに進めることや、被相続人の意思を最大限尊重することはすべきことですが,相続人の最小限度の利益と相続関係人間の公平を図ることもとても重要なことです。

最後に

いかがでしょうか?言われてみれば単純なこの制度も、そもそも知識がなければだれもやろうともしません。なにか対策をする際にはメリットを考えると同時にリスクをくまなく洗い出さなければなりません。

今回のテーマで言えば、財産の移転対策をしたにもかかわらず、思い通りにならなくなるケースがありうるということになります。

また、相続税対策をしたがために相続人の間で揉めてしまったなんてこともよく起こります。

リスクを洗い出すには専門家の助けを借りるのが一番です。

しかし、専門家を探すのも一苦労だったりします。

弊社は選りすぐりの専門家とのパートナーシップを結んでおります。専門家の目利きもお客様に行っておりますので、何かあればお気軽にご相談ください。



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