口唇口蓋裂で生まれるということ

40年以上も前に、両側完全唇顎口蓋裂で出生した。

現在42歳。

無事に生きているが、多くの試練や困難があったように思う。

寿命タイマーで、残り寿命を計測してみたらあと36年らしい。
つまり、折り返しはとうに過ぎているのだ。

正月に両親に会って、ふと生まれた時のことを想像し、なぜか過去の記録(記憶)を文字にして残したい衝動に駆られた。

まずは、生まれたときのことを想像してみた。
当然、生まれた当時の記憶はまったくない。

両親の話では、”かなり長い間”鼻からのチューブで栄養補給をしていたとか?!
現在ではHotz床を装着するため、唇顎口蓋裂以外の障害がなければ考えにくい対応だが。まぁ、”かなり長い間”というのは、両親の体感によるものなので、正確な期間は不明。生まれてきた息子が母乳も飲めない状況であれば、長く感じるだろう。

当時は、出生前エコーなどはほとんどなかったようだから。

生まれてきて、初めて、息子が口唇口蓋裂であることを知るわけだ。

いや、正確には、生まれてきて息子が唇顎口蓋裂だと知ったのは、父親だけだと聞かされている。
母は、1週間は息子(私)には会えなかったとか。当然、会えなければ、不安になるだろうが、息子と対面して、口唇が裂けている姿を見せる方が、母胎に悪影響を及ぼすという病院の判断だったそうだ。

さて、出生前検査についてだが。
エコー、絨毛、羊水、コンバインド、母体血清マーカーなどの検査がある。
現在では、出生前にエコーをするのは一般的なようである。
そして、エコーをすれば、両親は、生まれてくる子どもの口唇裂・口蓋裂の有無を”出生前に”知ることができる。

生まれてくる子どもが、出生前に口唇裂・口蓋裂であると、知ることは、両親にとっては、よいことなのか?

国によっては、口唇裂・口蓋裂であれば、合法的な期限を超えても人工中絶を許されることもあるそうだ。

日本では妊娠22週以降の人工中絶は禁止されている。

胎児エコーで、口唇裂・口蓋裂を確実に診断できるのは30週頃。
しかし、15週頃から、診断できる場合もあるらしい。
裂の大きさや、エコーをする医師に技量に左右されるだろうが。

さて、43年前、お腹のなかの子どもが、妊娠21週6日までに、口唇口蓋裂だと知っていたら。。。

両親はどんな選択をしたのだろうか?!

ぼくは、愛情をもって育ててもらったと自覚している。

しかし、生まれてきてしまったんだから、もう育てるしかない。
つまり、ぼくが生まれたことによって、両親が覚悟を決めた。という可能性もある。特に、”父親が”である。

生まれる前だったとしても、胎内に子どもの命を宿した時から、(多くの)母にはその覚悟はあるだろうが。(多くの)男親というのは、その覚悟を持ち合わせていないように思う。

そして、母一人だけの育てる覚悟であれば、どうなっていただろう。
生まれてきたことで、父にも育てる覚悟ができた。
2人の覚悟によって、愛情を注がれ、育ててもらった。

これは、本当に両親に感謝している。いつかは、面と向かって、感謝を伝えなければ。。。

さて、出生前エコーなどの検査数が増えることで、人工中絶の数が増加しているのだとしたら、、、
(調べていないので知りませんが)

これは、大きな問題を孕んでいることになります。

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