shichi_mibu

私、日頃からヒマ(ヒマばかり…🤔)を見つけては、つまらない【(ほとんどが短い)散文】を…

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私、日頃からヒマ(ヒマばかり…🤔)を見つけては、つまらない【(ほとんどが短い)散文】を綴って参ります。気が向くようでしたらご笑覧くださると幸いに存じます。

最近の記事

【官能小説#(囚われの女刑事)】

(官能小説を投稿しています。 SM、フェチシズムが苦手な方、18歳未満の方は閲覧はご遠慮ください。) 「女刑事(デカ)さん、あんたもずいぶんムチャするね。こんな悪党のアジトにひとりで乗り込むなんてね…」天井に括られた滑車を通した麻縄に両手首を頭の上で縛られた格好で揺れている奈保子のブラウスのボタンをゆっくりと外しながら壬生が言う。 「やめなさい!こんなことをしてどうなるかわかっているの⁉」 奈保子は自由を奪われた身体をくねらせながら壬生を睨みつける。 「どうかなあ…そ

    • 【ある日の出来事(紳士)】

      『あ、大丈夫ですから』  発車を待つ混雑したバスの車内によく響く声に他の多くの客が顔を向けた。その客のひとりに壬生七郎がいた。  杖をついて、いかにも不自由そうにしながらバスに乗り込んできた六十絡みの髭を蓄えた紳士然とした男に席を譲ろうと中年の女性が声を掛けたのである。  いや、紳士然というのはいささか褒め過ぎか。突き出た腹のために仕方なくサスペンダーに吊った裾を大きく折り曲げたジーンズ、肩にぶら下げたビジネスカバンそして厚底の登山靴風のスニーカーすべてがいかにも安物に

      • 【短編小説“モデル”】

         どっ、振動が伝わってくるほどの乱暴な音でまどろみを解かれた番は不機嫌な表情を向かいのシートに向けた。番はセーラー服にふくらはぎまでの白い靴下、ピンク色のラインの入った白い運動靴、長い脚を開き気味にして無造作に投げ出した姿に目を凝らした。-子供か。しかたない、といった表情でつぶやいた。金曜日の午後二時、車内に客はまばらだった。番と彼女以外には勤め人らしい男が数人だった。いずれも相方がいる様子もなく、目を閉じているか、携帯端末の表面に指を滑らせている。はぁ、少女は不意にもらした

        • 【短編小説#10】

          (第10話)  この話は午ごはんには遅い時間に昔ながらの喫茶店でナポリタンを口に運んでいる時に耳にした、話し好きな初老のママと常連客らとの会話です。 一 「まだ早いか…」ママは煙草のヤニでくすんだ壁に掛かった時計に目をやった。 「なに?」客らしい茶(黄?)髪女のかすれた声は大きい。女の前のビールの中瓶の半分ほどが空いている。女と私のほかに客のない店だから二人の声は否応なく耳に入ってくる。 「あのね、この前、小学生の男の子がここに来たのよ」 「へえ~」女の間延びした

        【官能小説#(囚われの女刑事)】

          【短編小説#26(官能小説(後編))】

          二  頭の上の鴨居に両手首を麻縄で縛りつけられた奈保子が薄暗い蛍光灯の中で静かに揺れている。  深く項垂れた奈保子はブラウスを脱がされ、手まりのような乳房と青みがかった腋の下を露わにしている。  初めは奈保子の求めにどのように応じて良いのか戸惑っていた七郎だったが、今や目の前の自由を奪われた奈保子が、自身の手によって、これから受ける仕打ちにどのような反応を示すのか興味以上の扇情感を抱いていた。 「どうですか。こんなふうにされた気分は」 「…」 「自由を奪われたあな

          【短編小説#26(官能小説(後編))】

          【短編小説#26(官能小説(前編))】

          (共通の友人の伝手(つて)で、桜庭奈保子は資産家の親から相続した貸家に壬生七郎を住まわすこととなった。奈保子は夫と死に別れ、七郎は妻と生き別れたばかりであった。寿命を迎えて燃え尽きる寸前に強い光を放つ名も知れぬ星のように枯れようとする最後の性の炎を燃やす中年男と横溢な性の盛りを持て余す、もう若いとはいえない女とが歓(かん)を交わすのは自然の成り行きであった。ふたりは刹那の快楽を貪りあった。) 一  春のぬくもりに微睡み(まどろみ)始めたとき、玄関の呼び鈴が鳴った。 (も

          【短編小説#26(官能小説(前編))】

          【うつろい(雑感)】_190719

          (2019.07.19)  このところ、移ろい(季節、歳月)について感じるところを映画(【阿弥陀堂だより】(2002年)と【雨あがる】(1999年))と流行歌(【親父の一番長い日】(1979年))を通じて綴ったところでありますが、今回は毛色を少し変えて『恋心』の移ろいを英国のポップソングを通じて綴ってみたいと考えました。  その歌とは【いとしのレイラ】(バンド名:デレク・アンド・ザ・ドミノス、作詞・作曲: エリック・クラプトンとジム・ゴードン(1971年))であります。ご

          【うつろい(雑感)】_190719

          短編小説#46

          (第46話)  夫の七郎が旅立って一年が経つ。 『ご臨終です』医師の言葉が奈保子の耳に遠くで響く。  夫はたった数時間の入院であっさりと逝ってしまった。極めて珍しい型の慢性白血病で四年あまりの闘病の末のことであった。  そのころ、壬生七郎は、社員三十人ほどの会社の会長を務めていた。自身で立ち上げて、育てた会社である。目をかけていた社員に社長の座を譲ったのであったが、経営権を譲ったあたりから、会長室を取り上げられ、明らかに冷遇される屈辱を味わった。  葬儀は、奈保子た

          短編小説#46

          【うつろい(雑感)】_190712

           さて、前回までは季節の移ろいについて感じるところを映画(【阿弥陀堂だより】(2002年)と【雨あがる】(1999年))を通じて綴ったところでありますが、今回はそれを流行歌を通じて綴ってみたいと考えました。  その歌とは【親父の一番長い日】(作詞・作曲:さだまさし(1979年))であります。ご存知の方もいらっしゃることでしょう。曲名からもイメージできるとおりの十二分を超える大作でありまして、例の、【さだ】のあざといくらいの技巧によって、ユーモアチックに始まってドラマチックに

          【うつろい(雑感)】_190712

          【うつろい】_20190705

           さて、前回は季節の移ろいについて感じるところを映画【阿弥陀堂だより】(2002年)を通じて綴ったところでありますが、今回は雨のシーンが印象的な映画【雨あがる】(1999年)に、この季節のイメージを重ねてみました。剣の達人でありながら人の良さが災いし、思うように仕官になれない浪人(これもまた寺尾聰)とそんな亭主を支えるその女房(宮崎美子)とのジプシー的な生活を抑制的に描いた秀作です。ご覧になられた方も少なくないのではないでしょうか。物語のそこはかとない爽やかさもさることながら

          【うつろい】_20190705

          【うつろい】_190823

           このところ、移ろいについて感じるところを映画、流行歌、ポップソングそして自伝・エッセイを通じて綴ってきたところではありますが、今回は『今あるそのこと』の移ろいを、哲学的アプローチにより綴ってみたいと考えました。  今から二十年程前、それまで、自由にできる(使える)金のそのほとんどを酒に費やしていた私が、“ものを知らなすぎる!”と突然感じて、本、すなわち小説とかノウハウ物ではなく、“理解できなくても、とにかく買って読み切る”精神をもって、前回、ご紹介した小林秀雄の文芸批評を

          【うつろい】_190823

          短編小説#14

          (バブル経済の名残りが失せ切らぬ頃の話である。) 一  奈保子は縁側の柱に寄りかかって、春めき始めた陽の光に煌めく庭木の蜜柑の実を眺めていた。まどろみ始めた奈保子は幼い頃の出来事を夢に見た。 …  ソフトボールチームの夏合宿の時だった。  三年生の夏、ひとり寝を始めていくらも経たない頃だった。その寂しさにも慣れはじめていたが…チームメイト8人の部屋で四つの二段ベッドから寝息が響き始めた頃、奈保子ひとりが闇の中で目を光らせていた。奈保子は隣りの仲間に気づかれないように

          短編小説#14

          短編小説#28

          【プロローグ】  奈保子は壬生が自身に好意を持っていることを感じていたし、そう想われることに悪い気はしなかった。  しかし、その愛くるしい容姿ゆえに、生まれてこのかた、恋愛に対する態度は常に受け身で、自身の距離感を崩すことなく維持してきた。  初めての壬生からの食事の誘いに、「主人にきいたら、あまり…」そう言って断った。  すでに奈保子夫妻の仲は破綻しかけていたが、主人という言葉に自身、空々しさを覚えながらも表情にはそれを微塵も出すこともなく… 一  美術館に近い

          短編小説#28

          短編小説#37

          一 「旅に出よう」 と、壬生七郎が桜庭奈保子を誘った。奈保子はすぐに同意した。奈保子は逃げ出したいような、また、追われているような心持ちで毎日を送っていたので、彼の誘いにやすやすと乗ったのである。奈保子が何から逃げ出したく思い、何に追われているのか、といえば、それは甚だ(はなはだ)曖昧で漠然としていた。奈保子は自身の後ろに張り付いている奈保子自身の背中に追いかけられているのかもしれなかったし、あるいは、自身を包み込んでいる肌の袋から逃げ出したかったのかもしれない。ともかく

          短編小説#37

          【うつろい(雑感)】 (20190816 )

           このところ、移ろいについて感じるところを映画、流行歌そしてポップソングを通じて綴ってきたところではありますが、今回は毛色を変えて、『蟠り(わだかまり)』の移ろいを、あるふたりの文化人の交流を描いた文章(自伝、エッセイ)を通じて綴ってみたいと考えました。  その文化人とは評論家・小林秀雄(当時、日本一の知性と呼ばれていた近代日本の文芸評論の確立者)と詩人・中原中也(知人のバーを潰すほどの酒乱)であります。ひとりの女性(長谷川泰子)を巡って三角関係となったふたりが、鎌倉の妙本

          【うつろい(雑感)】 (20190816 )

          短編小説#22

          (第22話) (プロローグ)  神崎武美は桜庭奈保子から預かった手紙をどうしたらよいものか思案していた。 一 「みぶさん」奈保子は壬生七郎をそう呼ぶ。もっとも、社の人間のいる前では「部長」と呼ぶ。  みぶさん、と呼び始めたときと自身から願い出て経理から商品開発に異動してきたのと時を同じくする。  彼女が企画した商品が当たった。  男尊女卑のこの会社でも彼女の評価は一気に高まった。  実際の年齢を思わせない愛くるしさに向けられた社内の若手独身男性の関心をよそに彼

          短編小説#22