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トレニックワールド彩の国100mile&100km備忘メモ【⑤South1】

South1の概要

 彩の国100mileの2周目となるSouth1は、サンピアを起点に南西方向を走る53.6km、累積標高3,393mD+のコース。
 最高点は関八州見晴台の771mで、それ以外は500〜600mくらいのピークを登り下りするレイアウト。この次のSouth2との違いはkinoca〜竹寺の区間で、South1は天覚山のピーク手前から北側(大高山、長久保坂)を経るコース。
 この区間はアップダウンがきついだけでなく、大部分が夜間走になるので、そういった意味でも体力と精神が追い込まれる。

Southのコースレイアウト South1は黒い線を辿る

サンピア〜A6桂木観音下:7.4km(436mD+)

 サンピアの滞在は到着から出発まで16分くらいかかった。予定より6分オーバー。ほぼ同時に到着したTYさんは10分程度でスムーズに出発したので、今後追いつくことはないだろうなと思いながら、自分は自分のペースで行こうと淡々と歩みを進める。

 サンピアの体育館を出てすぐの裏山を通るのはNorthとほぼ同じだが、裏山から舗装路に出たところを今度は左折する。この舗装路は五大尊つつじ公園まで約3kmあり、山の中と違って日差しが直接降りかかるのですぐに汗ばんでくる。
 市街地の方がコースロストしやすいので道路に書かれた矢印や取り付けられた標識を見落とさないように進む。途中で100mile駅伝の第2走の方に追い越された。駅伝は交代したばかりなので元気いっぱいだし足も軽そう。動画も撮っているらしく、おそらくフレームに入れてもらったと思う。
 この区間は五大尊の直後に急登があるものの、全体的には走れるなだらかなシングルトラックが続く。まだ陽もあるので明るい。木漏れ日の中を気持ちよく走れるが、ここまでくるとペースが落ち着いていて、上げることもなければ下がることもほとんどない。
 途中で100km優勝の吉野選手に抜かれた。ここから100kmの選手に抜かれまくるのか〜と思ったが、結果的に吉野選手以外には抜かれず。
 コース上には桂木観音を示す標識が何度も出てくるが、なかなか到着しない。今回からエイドの場所が変わっていて、ロードに出て少し登ったところにエイドはあった。

A6:桂木観音下エイド(61.4km地点、標高265m)

 昨年の100kmに出た際、このエイドにあるはずのフルーツポンチが時間の都合で食べられなかったことから、今年は是が非でもフルーツポンチを狙いに行く。
 フルーツポンチは少しシュワシュワしていて、聞くとサイダーを混ぜているらしい。フルーツも去ることながら汁も美味しく「いくら食べてもOK」とのことなので2杯いただいた。
 あわせて、こちらのエイドには豆乳スープもあり、そちらもいただく。いくら外が暑くても、長い距離のレースでは温かい食べ物・飲み物が体に優しい。
 この先、KinocaエイドまではSouth最長の11kmあるので、水分を補充しつつ、梅干しなどもつまんで出発。

A6〜A7 kinoca:11.1km(568mD+)

 桂木観音下エイドからkinocaエイドまでは累積標高はそれほどでもないが地味にキツイところが多い。最初の鼻曲山まで急登があり、その直後の岩場はかなり気を遣う。ビビり症の自分としては苦手なサーフェス。
 それでも一本杉峠まで登ってしまえば、アップダウンはあるものの基本は下り基調。そろそろ陽も降りてきていて、うっすらと明るさが落ちていく。
 この区間の途中で、サンピアを先に出たはずのTYさんが後ろからやってきた。聞くと、桂木観音下エイドを出た直後のトイレに立ち寄っていたとのこと。まずは同じようなペースで進んでいく。

 この辺りから、何となくお腹が張って(気持ち悪いわけではないが)ドリンクが入っていかない感覚があり、少し水分の摂取頻度や量を抑えてみる。胃に水が溜まった状態だとしたら不調の原因になるかもしれないと思う一方で、脱水も頭をよぎる。暑さもあまり感じなくなっていたこともあり、これまでの補給ペース(10〜15分)から20〜25分くらいに開けてみることにした。また、補給も基本は水にしてみた。そうしたところ、お腹に何かが溜まった感じななくなり、水もするすると入るようになった(むしろ水が美味しいと感じた)。

 ユガテから民家のあるあたりに下りてくると、集会所では地域の方が集まり(おそらく宴会)を始めていた。外にあるトイレを拝借して舗装路をエイドに向かう。舗装路は長く感じるが、里に降りてきた感じは安心感がある。

A7: kinocaエイド(72.5km地点、標高130m)

 Kinocaエイドでは数人が地べたに敷かれたビニールシートの上で寝ていたり、休んだりしていた。外見的には熱中症っぽくなって調子を崩しているようだった。

 ここのエイドではクリームシチューが出る。やはり温かい食べ物・飲み物はありがたい。美味しくいただきつつ、オレンジをいくつもいただいた。オレンジは止まらなくなるくらい美味しくて、お言葉に甘えて4〜5切れくらい食べたと思う。
 今回の大会で初めてエイドで携帯コップを取り出す。これまでのエイドでは時間を気にして水分補給は自前のボトルからエイドの前後で済ませることが多かったが、こちらのエイドで豆乳を見かけたのと、サッパリ感を求めてカルピスソーダをいただいた。

 ここから次のエイドがある竹寺まではSouthの核心部になり時間もかかる。ジェルも飽きが始まってきたので、カロリーがありつつ、あまり甘くない粉末ドリンクのチャレンジャーを投入する。1つで280kcalあるのでジェル2つ分+ドリンク500ml分のカロリーと水分が摂れる。
 ここからは確実に夜間パートになるので、ザックからLEDLENSERのヘッドライトを取り出し頭に装着して出発。

A7〜A8竹寺:10.5km(996mD+)

 kinocaエイドを出るとすぐに東吾野駅の脇にある踏切を渡って少しロードを進み、ロードに傾斜がついてきたあたりでトレイルに入っていく。
 いよいよ天覚山の登りが始まるというところで、TYさんが後ろからきて合流。当初はこのまますぐに抜かれて離されるだろうと思っていたが、ここからほぼ1周分のランデブーが始まる。
 一緒に天覚山を登りながら、いろいろな世間話をさせてもらった。TYさんが現在お住まいの街には若い頃に自分も住んでいたことがあり、またそれがかなり近いところだとわかって話題になる。
 その後にはもう一人SHさんという関西の方が合流。彼もトップ選手で、TYさんと並んで昨年の信越五岳では入賞されているとのこと。今回はかなり早いペースでkinocaまできたが、体調が悪くなりエイドで休んでいたそうだ。
 そんな強力なお二人についていくのも余力の点で不安はあったものの、ペース的には非常によく、またライトなどの点でも3人パックでの安心感があった。先を行くお二人の会話を聞いているだけでも辛さが紛れる。

 天覚山には登らず、分岐を右折して巻道を進む。次の急登は大高山だったと思うが、似たようなピークをいくつも越えていくので、今どこあたりにいるのか、手元の時計の距離表示だけで当てをつけていく。
 kinocaエイドを出発して1時間ほど経ったあたりで、コーヒー味のカフェイン入りのジェルを投入。South1ではもう1回、同じジェルを投入する予定で、深夜になる前に体にカフェインを入れておく。エイドにコーラはあるが、今回はSouth2の最後まで摂らないつもり(そもそもコーラを飲みたいという欲求がなかった)。
 途中、長めに下るロードに出て、権五郎神社の先からトレイルに入り直すと、この区間の最後の急登が始まる。ここも3人パックのため、キツいなあと話しつつ、昨年の100kmで走った時に比べるとそれほど時間は長く感じなかった。

 舗装路からお寺に入るとライトが照らされた竹寺エイドに到着。

A8:竹寺エイド(83.0km地点、標高492m)

 エイド手前には、小江戸大江戸200kの手島エイドにいた「ブラボー!」おじさんがいてエイドに誘導してくれる。夜なので「ブラボー!」は少し控えめ。
 エイド到着後すぐにトイレへ。用を足して手を洗うついでに顔も洗う。
 SHさんの体調が完全には戻っておらず、少し長めの休憩をとる。エイドの方から、「現在13位くらいだよ」と教えてもらい、TYさんと一緒にびっくり。お互い30位くらい(良くても20位台)だろうと思っていたので、他の速かった選手がかなりDNFしたんだろうと推測。

 次の区間もアップダウンがあり、時間もかかりそうなので、水分を補給。少しチャレンジャーが余っていたので、同じグレープフルーツ味のアミノバイタルをボトルに足し、水のボトルもほぼ満タンにする。
 竹寺エイドには稲荷寿司と豚汁が出るので、梅干しなども合わせて夕飯感覚でいただく。ここでも豆乳とカルピスソーダをもらう。カルピスソーダはおかわりもしたが、自分の体に問いかけながら体調を整える。
 少し時間もあったので、今回のために購入していたマグネシウムスプレーを試してみる。本当はSouthに入る前のサンピアで使う予定だったが忘れていた。使ってみるとプラシーボ効果かもしれないけど、脚が少しだけ軽くなった気がした。こういう大会ではポジティブな思い込みも必要ということ。

A8〜A9高山不動:10.5km(843mD+)

 この区間は大きく3つのパートに分かれていると思っていて、1つ目は子の権現(茶屋)まで登り基調のパート、2つ目はそこから西吾野駅までの下り基調のパート、3つ目は高山不動までの急登パート。
 昨年の100kmの時は疲れていたのか、子の権現の記憶があまりない。お寺の裏道を進むことくらいしか思い出さなかったが、今回は初めて風神雷神像を認識できたのと、茶屋にも立ち寄ることができた。
 一緒のお二人がトイレに行っているついでに、茶屋のお母さん(おばあさん)からジャスミンティをいただく。熱すぎず口の中がさっぱりして、とても美味しい。本当は何か購入したかったけど、竹寺エイドでかなり補給して(食べて)きたのと、お金がザックの奥に入っていたので、お茶をいただいただけで失礼した。2周目も来るつもりだったので、そこで甘酒をいただこうかなとか思いながら後にする。

 西吾野駅までは下り基調だが、若干足場の悪いところもある。他のお二人は苦もなく降っていくが、自分は慎重に降りる。こういうところを速く降りられるようになるにはどうすればいいんだろう?

 西吾野駅の脇にある通称「魔界への入り口」を抜けてトレイルの急登が始まる。ここまでにかなりの登り下りをしているせいで脚は重い。それでも2周目も見据えながら脚の負担を可能な限り少なくしつつ、他のお二人に置いていかれないようについていく。これまで脚が攣るような予兆はなかったが、マグネシウム入りのジェルを投入。
 正直、先ほどの竹寺エイドで聞いた「現在13位くらい」という情報から、このまま無理をせず、DNFしないように慎重にいけば、相当良い順位でゴールできるんじゃないかと邪念があり、一緒のお二人にも「あまり無理せず着実に行きましょう」などと声をかけてしまって、失礼なことをしたなと反省。ただし、2周目もこの急登は確実に登るので、これをクリアできるだけの脚は絶対に必要。

 このパートの後は、高山不動エイド直後の関八州見晴台まで登るものの、South1の大きな登り・急登は終わる。早くもう一度この急登に取り掛かって苦行を終えたい。

A9:高山不動エイド(93.5km地点、標高650m)

 高山不動エイドは坂の上にあるので、到着したときは本当に良かった〜と思う。このエイド以降はサンピアまで大きな登りはないし、距離的にもサンピアまで14kmに満たない。ボトルの補給もあまり気を使わず、パラチノースだけを投入(かなり薄味になった)。

 このエイドではうどんをいただく。うどんもさることながら、スープがすごく美味しく感じて、スープだけをおかわりした。牛肉の風味としょっぱい味付け。甘いものばかり摂っているので、味変は本当に助かる。あとヤクルト?があって、「いくらでも飲んでいいよ」と言ってくれたので、2〜3本はいただいたと思う。胃腸を整えるのは大事。

A9〜A10桂木観音下:8.6km(371mD+)

 エイドから関八州見晴台までは登るが、これも距離は600〜700mくらい、標高も+120mアップくらいなので、それほど時間はかからない。
 そこからは4kmくらい下り基調になるので、夜間で注意しながら下りの脚を残せるように進む。一緒のお二人は下りがとても速くてついていけないところもあったが、無理して怪我をしたら元も子もないので、そこは比較的得意なパート(なだらかで足元がフラットなところ)で追いついて帳尻を合わせる。

 今回、速いお二人とパックで進んで良かったのは、このレースということだけでなく、木の根が張った下りのトレイルでの脚の置き方やルートの取り方が非常に勉強になったこと。下りで少しテクニカルだったりすると、なぜか自分が難しいルートを選んでいたことに気付かされる。
 視野の広さといった部分もあると思うが、自分でもこれからのレースでも使えるなと思っている。普段、速い人はあっという間に視界からいなくなってしまうので、今回のようにじっくりと観察できたのは本当に勉強になった。

 ある程度下り終えてロードに出ると、そこから桂木観音まで小さなアップダウンを繰り返しながら登っていく。走りやすいなだらかな下りや平坦なトレイルが続き、高山不動エイドまでに感じていた脚の重さも少しは和らいだ気がしつつ、少しの登りでも歩いてしまう。やっぱり脚は重くなっている。

A10:桂木観音下エイド(102.1km地点、標高265m)

 今回2回目の訪問。スタッフの方も気持ちよく迎えてくれる。
 Southの行きと同じようにフルーツポンチと豆乳スープをいただく。残り5kmくらい、時間にして1時間程度なのでボトルへの補給は最小限。携帯コップでカルピスソーダをいただく。
 「あと2回は来ます。サンピアに戻ったらすぐに来ますね」と言って出発。

A10〜サンピア②:5.1km(141mD+)

 他の二人より少し早めにエイドを出て、エイドの上(桂木観音の真下)にあるトイレへ。用を済ませると急いで二人を追う。

 大高取山への登りはそれなりにあって、TYさんと「いよいよ脚の熟成が進んできましたね」などと話しながらサンピアを目指す。
 大高取山からは下り基調となって、最後は2kmくらいのロード。

 ロードに出ると越生の街は静まりかえっていて、普通の人たちは眠りについていることを察する。
 ヘッドライトを消して腰ライトだけにして、あまり声を出さないように進むものの、街中の方がコースを見落としやすいので、要所要所で「こっちですかね?」と聞いたりする。
 一緒のお二人は「ロードは苦手」と言いながら、かなりペースは速い。正直「もう歩きましょう」と言いかけたけど、それではお二人に迷惑だし、South2もある程度まではご一緒したいので、最後までしっかりとついていく。

 サンピアの入り口から体育館の登りを歩くと明かりが出迎えてくれる。深夜なのに、「100マイル来た!」とか「もう1周頑張れ!」と声援をくれる。本当にありがたい。

 South1は10:45で終了(スタートから19:10、5/19 2:10で到着)。
 30時間以内は難しくなってきていて、竹寺以降はとにかく完走できればという気持ちに切り替え。(kinocaまで30時間のタイムテーブルどおりだったのは振り返ってみて初めて認識)

South1のタイムテーブルと実績(サンピア2周目スタートからの時間)

つづく(次はサンピア滞在②と今回の装備)

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