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新年の初夢

夢の中の私は「面倒だなぁ」と言っていた。
夢の中だから新年を迎えたかどうか分からなかったし、漠然と終わりを迎えたがっていた。
これまで見てきた夢は私が「何かに成る」ものが多かったから、きっと今回もそう成ると思ったのだろう。
目の前には大きな水が湛えられている。池ではなく、海といいたくなるほどの大きさだ。
奥は深い。この深い流れに落ちていけば、きっと私は私でなくなる。
当然のように、私は水に倒れ込んだ。
落ちていく
深くまで
意識がなくなるまで

今まで通りなら、私は藻屑になるはずだ。
今まで通りなら、私は人でなくなるはずだ。
それでいい。それでいい。

沈む私の腕を、ギュッと握る音がした。
それから「くっ」と音か声。
止まった体をつなぎ止める何かが、遠いはずの水面から腕が伸びて、私を捕まえているのが見える。
誰だろうと思えば、ぼんやりした意識が『アイツ』だと言ってくる。
「何、ふざけてんの」
音が頭を揺さぶる。
彼は私の作った『探索者』では?
TRPG趣味で作った登場人物…現実的に考えると私が描いて、私がちょっと声色を頑張った、男で。
とある物語の中で死んでから夢に出てくるようになった男。

初夢で見るのが悪夢の男か。
聞いててゾッとする言葉をかけ続けてきた声にまた会うとは。
「ふざけんな」
それは魔法の呪文だったようだ。
眠りは浅くなった。

結局、私は正月によくある二度寝をしてしまうのだけど、次に見た夢は無難な夢だった。
四角いマルゲリータを三角に切って、他愛ないイケオジが表紙の雑誌を買って、「腹が空かない」と言うだけ。

今年もよろしくお願いします。

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