【毎週ショートショートnote】 優先席の微世界先生

私は優先席です。
私は、生まれてこのかた、ずっと電車の席をしておるので、ほかの席から先生と呼ばれております。
というのも、席は、よく転生をするのです。
私のほかにも、コンサート会場だった席や、勉強机だった席がおります。
彼らが幸せの絶頂のときに、他の席に転生するようです。
ささやかな、この世界の電車の席に、新人が来ました。

「お嬢に座られてねえええええ!」
「落ち着いてください!」
「やだよおおお」

どうやら、訳アリのようですね。

席は動きません。きっと、いきなり自分の世界が変わったことが、受け入れられないのでしょう。

おっと、電車が止まりましたね。

「林檎さん。明日は犬先輩とデートですか?」
「うん。そうだよ。楽しみだなあ」

おや、二人組の高校生カップルの女性の方が、異世界転生してきたばかりの席に座りましたね。

「…もしかしてさあ、いろいろな女の子が俺に座ってくれるの。パラダイスじゃん…!」

どうやら、電車の席の幸せを見つけたようですね。