【毎週ショートショートnote】だんだん高くなるドライブ

憧れの高嶺さんとお出かけの前日、彼女は「ドライブで遊びに行きませんこと?」と、おしとやかに私を誘ってくれた。

ああ、嬉しい。
彼女が車を運転できるなんて思いもよらなかったが、そういったギャップすらも、愛おしく思えてくる。

そして、わたしの家にやって来た高嶺さんのマイカーはタクシーだった。

「高嶺さん。わたしの目がおかしいのかな。どう見てもタクシーなのだけど」
「その通りですわよ。どうかしまして?」
「お金、かかるよね」
「ノープロブレムですわ。わたくし、お金がありますもの」

身もふたもない言い方である。
いや、知っていたけど。高嶺さんがお金持ちなのは知ってたけど!
「大丈夫ですわ。いつもお世話になっているタクシーの会社ですからメーターを超えてもいいですのよ」
「わたしはどこまで連れていかれるんですか」

ダメだ。ここでタクシーに乗ったらいけない。
でも、高嶺さんがタクシーに乗って優雅に手招きしている。

わたしは、タクシーに乗ってしまった。