【毎週ショートショートnote】 チョロいの、くさび

「あ、いいよ。いいよ。まだ、調子悪いでしょ? 休んどきな」

組織に相棒と二人で顔を出したら、軽くいなされた。

あんなにも追い回され、殺されかけたのにである。

こんなにも対応が変わったのに、思いあたる節があった。

「また、ボス代わりました?」
「うん。お前らが、ひっかき回してくれたおかげで、うまく殺せたってさ。今ボスには気に入られてるよ。安心しろ」

安心は、できない。

「これから、俺たち、どうなりますか?」
「どうもならんよ。上からの指示で、二人での仕事だ。これからも仲よくやりな」

指示された仕事は、旅行で外泊している家に行き、不法侵入し宿泊するものだった。

俺は相棒といられるなら、どんな仕事でもよかった。







「お前の仕事は、あの男を手なづけることだ。できるな?」

「お前が組織を裏切っても、あの男は、お前を選ぶだろう」

「お前は、そのためのくさびだよ。だから、チョロい仕事をくれてやる」

「あの世紀の詐欺師の信頼を得ろ。いいな」



「わかったよ」