【毎週ショートショートnote】鋼こむらがえり

「いたたた…」
「少しは反省したか?」

相棒は、かなり怒っていた。
たかが、ティッシュやタオルを持って帰っただけなのに、なぜ、そんなに怒るのか俺には理解できない。
おかげで、相棒の蹴りを避けたときに、足をつってしまった。
痛くて痛くてしょうがない。

「あそこの公園まで歩けるか?」
「無理、痛い」
「ったく、しょうがねえな」

相棒は俺を背負って、公園のベンチまで運んでくれた。
こういう世話焼きをするので、俺も怒るに怒れない。

「足をのばせ、爪先をつかんで手前にひっぱれ」
「無理、できない」
「このやろう」
「痛い、痛いっ!」

相棒は俺のつった足の靴を脱がせると、ふくらはぎを揉みはじめた。
痛い。
すっごく痛い。

「痛い痛いって!」
「我慢しろ」

つったときに感じる、骨と肉がずれて削ぎ落されていくような感覚が、なかなか消えてくれない。

「ハンカチ、ティッシュでも、そこから俺たちにつながるかもしれねえんだぞ」

説教は、こむらがえりが、なおってからもつづいた。