【毎週ショートショートnote】 秋の空時計

「幸次さんに会いたいなあ」
「会えばいいじゃないの」
「最近、すっごく忙しいらしいの。この前も急な仕事で、デートおじゃんになっちゃった」
「浮気調査しましょうか?」
「ひどい! いくらボディビルでも、言っていいことと、悪いことがあるでしょ!」
「そういうフリかと思ったのよ」
「漫才じゃないんだから」

バディからの冷静なツッコミ。相当キてるわね、この子。

「日が暮れるのも早くなったなあ」
「あんた夏が好きだものね」
「うわ! ボディビル。見てよー。この時間なのに、もう、そとが真っ暗だよ!」

バディは、つけていた腕時計を指さした。はじめて見る時計で、文字盤の背景は、青空に白い雲の写真がプリントされている。

「あら、いい時計ね」
「いいでしょ~。幸次さんから、もらったの。この雲、うろこ雲っていうんだって」
「洒落てるわね」
「乙女心と秋の空にかけてるんだって」
「女心と秋の空ね」

プレゼントにしては、意味深な気がするけど、深い意味はないでしょうね。