【インスタントフィクション】 待ってるよ
風呂が好きだというと、たいがいあいつに笑われた。
渋い趣味だって。
だったら、なんでサウナで時間をかけるのかね。
あそこは乾燥しすぎて、たまらない。
あの水風呂がいいって言われても。
わかんねえな。
そう思ってたら、ミストサウナっていうのがあってさ。
これなら、いっしょに入れるなーって思ってたんだけど。
さそったら、断られたわ。
なんでだろうなあ。
ああ、でも。こことは離れた位置にあるし、少し料金も高かったから、気にしちゃったんだろうな。
悪いことをしたよ。
ああ、でも。
こういうのって、体質とかあるからな。
俺は風呂が大好きでも、あいつはサウナが好きっていうだけのはなし。
なら、しょうがないよなあ。
折衷案が受け入れられない人間もいるしな。
うん、しょうがない。
そういえば、最近あいつを見ない気がするわ。お前、あいつがどこ行ったか知らねえ?
そっか、知らないか。まあいいや。
次に会ったら、熱すぎる風呂にでもつきあってもらうさ。