【毎週ショートショートnote】 呪いの臭み
俺の鼻は利く方だが、においには鈍感だ。
臭くても、たいして気にならない。ゲリラ戦で、何十日も同じ服で、はいずりまわっていれば、そうなった。
俺は臭いには鈍感だ。
「そのTシャツ、臭いか?」
「大丈夫だよ。ちゃんと臭いとれてる」
「そうか。ならいい」
九死に一生を得た相方は、ずいぶんと元気になった。
食事が喉をとおるようになるまで、時間がかかったが、これで一安心だ。
「そろそろ風呂にも入れそうだな」
「え…? 俺、風呂に入ってないの…?」
「身体は、ふいてやったぞ」
相方は、こわごわとした手つきで、自らの頭をさわり、手の臭いをかいだ。
「くっさ! うわ、ダメだこれ。これ、臭いよー」
相方が手を差し出してくる。
俺は相方の手をかいだ。
たしかに、臭い。だか。
「騒ぐほどか?」
「お前、鼻、どうなってんだよ! 臭いよ、これ! あーもー、臭いとれなかったら、どうしよー」
相方は足をばたばたさせる。
あれから、相棒の髪の臭いを忘れられない。
呪いみたいだな。