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「GNU宣言」の思想

はじめに

リチャード・ストールマンの「GNU宣言」日本語訳 を読んだ。
GNU宣言 - GNUプロジェクト - フリーソフトウェアファウンデーション

恥ずかしながら知らなかったのだが、リチャード・ストールマンとは、エンジニアとしてEmacsやBash, gzipの生みの親であるとともに、フリーソフトウェア活動家と呼ばれる人のひとりらしい。
他にも、有名なソフトウェアの数多くを手掛けている。

※厳密には開発したグループ:GNU の代表というのが正しいのだろうか
本当に本人が開発したのかまでは調べられていないが、少なくとも、いずれかはそうである。

また、Linuxについて、GNU/Linuxと呼ぶべきだという活動を展開していることでも知られる。
当初、そのことへの理解が及ばなかったのだが、つまりは、カーネルはLinuxであっても、上に載っているソフトウェアのほとんどはGNU製なのだからGNU/Linuxと呼ぶべきだという主張だと理解できた。

個人的なエピソードについても、Macはクソと言ったり、Ubuntuはフリーではないといってみたり、有料のオンラインゲームを友達とやるやつはバカだという面白い言説には事欠かない。

情報を調べるときも、監視社会への対策として、自分の端末からではなく踏み台を経由してwgetで行うらしい。

最後に関しては真偽のほどはわからないが、面白いことに加えて一理あるというのが私の感想だ。

その思想について

前置きはここまでにして、GNU宣言を読むと非常に興味深い。
GNU宣言とは、その名の通りGNUという開発者グループのマニフェストであるが、彼は天才的なエンジニアであると同時に思想家でもあるらしい。

特に興味深いのは、以下の一文である。
「創造性への報酬を得たいという欲望は、その創造性の全体あるいは一部を世間一般から奪うことを正当化しません。」

彼は、より良いソフトウェアを開発するため、ソースの独占を批判する。
また、個人が所有するサーバ等のリソースについても、社会のために提供することの重要性を説く。
形になったアイデアについても、個人の財産ではなく社会の財産として提供しろと言う。

キーワードだけ抜き出してみれば、あたかも共産主義者のようである。
私有財産を否定し、生産を根底とした社会における寡占企業が作る階級社会を批判する。

ひとたび彼の名前をMarxist(マルキスト)と絡めてみれば、赤いコラ画像まで出てくる次第だ。

本当に共産主義者なのか

しかし、私は、彼の主張に、マルクスの批判対象であったフランス社会主義、こと空想的社会主義者サン・シモンとの共通性を感じる。

サン・シモンとは、17,18世紀フランスの思想家である。

サン・シモンの思想を非常にざっくりとまとめると、「人間の知識と労働力の配置の最適化により、産業にもっとも好都合な秩序を生み出すこと。」 である。

また、その秩序は科学者、エンジニアによって構築されることが望ましいと考え、人民の精神は隣人愛のみを教義とする新キリスト教に支えられると主張した。

ストールマンについてはどうだろうか。
彼は、公共の資産としてのソフトウェアがネットワークを通じて発展し、人々が国や宗教ではなく、プログラミングという新しい道徳によって連帯される社会を望む。

そのソフトウェアの管理は、GNUという科学者集団によって、公共のために運用されると主張している。

これはいわば、古い貴族に変わる、エンジニアという特権階級によって、道徳に支えられた生産秩序の構築を目指すということではないだろうか。

これを踏まえると、彼はマルクス主義者だという批判は果たして本当に的を射ているのかということに疑問が残る。

所感

と、ここまで書いてみたものの、これはストールマンの思想を解き明かせるものではない。

彼は共産主義者ではないと主張しているらしいし、特定の誰かの思想をまねたり、影響を受けているという前提に立つのもおかしな話である。

あくまでも、「いや、マルクスよりはもっと漠然とした、空想的社会主義者じゃん。」と思っただけの話だ。↓

「各個人の持っている権利より、ソフトウェアのソースを公開させることの有益性が上回り、そのような社会ではみんな今よりもむしろ自由だ。」
(これは私の解釈である。)

ある意味、ビジネスマンとしては二流なのかもしれない。
しかし、bashという使わない日はない言語の開発者に尊敬の念を抱くとともに、かすみを食って生きるエンジニア兼思想家について学べてよかったというのがとりまとめての感想だ。

最後に

ストールマンの思想は、GNU宣言を読み、適当な記事を漁ったぐらいでしかわかっていない。
もっと興味がわいたら本でも買って読んでみようと思う。

…ここまで駄文を書き散らしたが、彼曰く、ソースコードを秘匿することでお金をもらっているだらしないエンジニアは、あきらめて本でも書いて稼ぐか、向いている仕事を探すのが良いらしいので、noteに起こしておくこととする。





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