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会社を辞める理由はあの人にしかわからなかったから

今の仕事を辞めようと決意する直前に先に上司に辞められてしまった。
電話でそれを聞いた。気のきいた事も何も言えず、仕事を引き継いだ。
私も辞めようと思っててとは言えなくて。
外で受けた電話だったので、暑苦しい夏をまた恨んでしまう。
熱くなった顔と身体と、鳴きすぎるくらいのセミに挟まれていつものように電話を切った。
「お疲れさまでした」
「まだいるんだよ!」
すみません。へなへな笑ってしまった。

家族に、Xのスペースでnoter 二人が話してるよ!と聞いたので慌てて開いてみた。
私の尊敬する二人が本の話をしていた。リスナーのところに私のマークが表れて気恥ずかしくなって(誰も見ていないのに)数分しか聴けなかった。
本の話をしていて、買っても読まないのに買ってしまうと言うことを話していた。
絶版になっちゃうから、買っておかないと。
思ったより明るい声だった。話し方だった。
お互いを不快にさせないような配慮がそこにはあった。(考えすぎかな)
二人でラジオをやるなら、絶対に聴く。
そんな事しそうもない。しらないけど、多分しない。

どこで知り合ったのかわからないけれど(note ?)
敬意を払う関係なのか、年齢も近いようでどのくらい近くて離れているのかよくわからない。
でも、数分だけ聴いて同士のような関係なのかもしれないなと思った。
そこから私は二人の記事に飛んだ。
私はその人の書く文章からその人を想像を越えて空想する。
そして、こんな人だったらいいな。
どうやって笑ったりするんだろう。
と、勝手に憶測したりして
弱い部分をさらけ出しながら堅固が浮き出てくるとき、安心をする。
弱い人でも良いけれど、強情な部分があるからこそ書けるんだなと、妙に納得して読み進めていき、だから好きなんだよねとなる。
弱くていいし、だってnote って本当の事も嘘を書いたっていい。

note は湖。海でもない、川でもない。
湖。
空をうつした湖面は一瞬たりとも同じ顔を見せない。
その日その日によって波打つ数も違うし、色も。美しく見える日もなんだか濁ったように見える日もある。
私はそこに絶望もまいたし、希望もまいた。
希望の時は願いも込めて。
湖のほとりにはたくさんの人が集まるけれど、誰も同じものを持たない。
それをやさしく見せあう。平和に。平和に。
写真をとる人も、絵を描く人もいて、私は文章だけど、どこまででもいっていいよ?と言われている気がする。


昔、勤めていた頃それなりにムードーメーカーだった社員さんが突然退職することになった。明るかった彼はすごく疲れはてて、地元に帰りますと言っていた。
退職時に配られたお菓子を摘まみながら、彼の話題になったけれど、誰も非難することもなくあっけなく時間は流れた。
一年経ったくらいの頃に、彼とはプライベートでも遊んでいたというA さんが、連絡をとったらしい。
ブロックされていた!と憤慨していた。
それは怒りから薄情ものという感情に変わっていった。
「仲良かったんだけどな。なんなんだよ」
ああそうですねとか言ってれば良かったのに、まるで彼の代弁者のような感じで、出ていってしまった。強気な、たまに出てくる強気な私。
「すごく良い思い出だったことが、一瞬にして嫌な思い出になったことがあります」

「は?」という顔をされた。
しどろもどろに、しかし、エイヤ!って気持ちで自分の意見を言ってしまった。
なんで、あの人が辛くなって会社を辞めて地元に帰ったのか、誰も知らなかった。

私もうわべの会話と仕事の話しかしたことない。
「嫌いだからブロックするって人もいますけど、嫌いでもなんでもないのにブロックする人もいますよ。
すごく疲れはてて、地元に戻って本当の自分に戻って、昔関わったものとか全部を切ってしまいたいって思う人もいるんじゃないのかなあ。」
「…」
「昔の自分を知ってる人にもう会いたくないとか。一からこっちでやり直したいとか。わからないですけど。」
「へぇ。そうかもしれないね」

何も知らないのにわかったようなことを言ってしまった。

人の気持ちのわかるような人になりたい。
なんと、傲慢な。
人の気持ちなんてわかるわけがない。
その人にしかわからない。
だからつべこべ言うべきじゃなかったのに。
あの人はいま何をしているか知らない。
それを望んでいるのかもしれないなら、忘れてしまうのもいい。

結局誰の気持ちもその人のものでしかないから。

それでは



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