見出し画像

【MTG レガシー】 「プレインズウォーカー、父になる」その3/緑単ストンピィ 【初心者、復帰勢、自分と同じ親に向けて】

1.子どもがいると、できること。児童館に入り、積み木やパズル、知育玩具でいっしょに遊ぶこと。公園に行き、ブランコや滑り台を使うこと。ちなみに大人の体重だと、加速がつきすぎて、めっっっっちゃ怖いですが。

もちろん子どもといっしょでなくても、ルールで禁止されていない限りは自由……そのはずです。しかし、現実には遠慮や気後れがあるもので。
子どもたちの隣にいる、という事実のおかげで、世界は遥かに広がります。
そのうえであざやかに気づかされるのは、体こそ大きくなり、立場や年齢の仮面を身につけたとしても、自分たちも心の深いところは“子ども”のままだということ。
オモチャ屋に行けば、やっぱりワクワクするし、海と空のベンチに腰かけ、木のスプーンで舐めるアイスクリームは美味しいのです。

この記事は、初心者や復帰勢の方のために、それから親であるプレインズウォーカーのために、安価で組みやすいデッキを紹介するために書かれています。将来、学校で「……勝負です。フォーマットは……レガシー」と、吐息と共に囁きかけられたときのために。

「マジック・ザ・ギャザリング」もまた、“遊び”です。もちろん「レガシー」も。
高い競技性もあいまって、勝ちを目指し、真剣にのめり込むほど忘れがちになりますが……これは「“カード”という形の呪文を集め、“デッキ”という自分だけの魔法書を編み上げ、“プレインズウォーカー”という次元を越えた魔法使いになる」という遊び。本来、“責務”とは無縁です。

子どもたちにデッキを託すとしたら、あなたは何を選びますか? あなた自身が、始めに手に取ったのは、どんなデッキ? 高度な構築理論や数多のセオリー、駆け引きも楽しいけれど、それだけで隙なく埋め尽くされると息がつまるし……遊びのはずなのに、疲れます。
たまには難しいことを忘れて、童心のデッキをその手に。今日のデッキは、こう!

2.「緑単ストンピィ」。レガシーで「ストンピィ」と言えば、《裏切り者の都》や《古えの墳墓》の2マナ無色ランドをマナ加速に用い、1ターン目~2ターン目に《虚空の杯》や《三なる宝球》で相手を拘束し、その隙に高マナ域のクリーチャーを叩きつけるデッキの総称。

鬼札
1マナ呪文を完封されて
1対20交換になることも

しかし、このデッキにおいて「ストンピィ」の名はより古く、直訳に近い意味を持ちます。緑の巨大クリーチャーたちを用いて、対戦相手を真正面から「踏み潰す」ためのデッキ。こういうカードが使われていたデッキの、直系の子孫です。

このデッキの先鋒を務めるクリーチャーが、彼です。3マナにして、5/4。他の色ではあり得ない暴力的なスペックを誇る「緑」の象徴、《鉄葉のチャンピオン》。

実は「エルフ」というのもポイント

このカードが「緑単ストンピィ」の……“通常攻撃”です。《ラノワールのエルフ》+《エルフの神秘家》。8枚装備された1マナ・マナエルフに、他のフォーマットでは軒並み禁止された0マナカード《むかしむかし》を組み合わせれば、2ターン目、恐ろしい再現率でこの強打を、小手調べの「ジャブ」代わりに撃つことができます。

「見たら、焼け!」で有名
初動で除去を強制させるのが仕事とも
スタンダード、パイオニア、モダン禁止で
三冠
0マナ呪文は危険だってあれほど言ったでしょ!

ごく短い序盤、対戦相手が《鉄葉のチャンピオン》の対応にもたつけば、そのまま「踏み潰し」。その間にマナを集めて、繰り出される次撃も強烈無比です。《殺戮の暴君》。

「打ち消されず」、「呪禁」。この「緑単ストンピィ」から見ればレガシー環境のデッキたちの大半は、細いです。レガシーはこんな怪物と戦うことを想定されていません。
もちろん、6マナという相応の重さは足枷になってきます……他のデッキならば。
前述の1マナエルフたちに加え、2マナ域を埋める《ラノワールの使者、ロフェロス》《ティタニアの僧侶》の助けを借りれば(=どれかが生き残れば)、6マナ到達はあっという間の出来事。

2ターン目に戦場へ→3ターン目に《森》追加
これにて、単騎で6マナ達成
再録禁止カードですが
今シリーズでは安価なものは使わせてもらいます
レベッカ・ゲイの名作
ふつくしい……

もっとも、獣性に身を任せて突っ走るだけで海千山千のレガシー環境を渡っていくのは、至難。そこでアドバンテージ獲得手段に《アンダーマウンテンの冒険者》を採用。悪名高いメカニズム「イニシアチブ」を積極的に使っていきます。

パワークリーチャー+マナ加速。ここまでがデッキの骨子といえるでしょうか。あとの部分は……呆れるほど、自由です。
メインボードで最大の高額カード、「緑」の切り札《自然の秩序》を活かせば、「どんなクリーチャーでも即時、戦場に出現させられる」=「マジックの歴史上、全ての緑クリーチャーが採用圏内」という特権が得られます。

じりじり値上がり中で
いま、二千五百円くらい
早めに抑えてくれればと

たとえば、「世界棘のワーム」は???  11マナ、15/15、トランプル。死亡したときに、5/5のワーム・トークン、3つをばらまきます。

伝説じゃないので
原産地「ラヴニカ」には複数いるはず
ここを攻めるのは、無理では?  ボーラス卿?
あの人(龍)、話をきかないからなぁ

純粋なパワーでは《引き裂かれし永劫、エムラクール》と互角。とはいえ、追放除去や搦め手に弱そうですね。ふむ……。戦場に現れた瞬間に仕事をするカードなら、こんなものもありますよ???

置物は一撃壊滅
これぞ、「緑」
対空用
カメレオンでハイドラというブッ飛んだ発想
好き

あまりに豪快すぎる“虐殺型”能力。どちらも6マナと“軽く”、素出し圏内なのも良し。たとえば「デルバー」が突如《舌長ハイドラ》に襲われて、無事でいられるはずがありません。
他にも、工夫と発想次第で、何でもあり。上に示したのは一例に過ぎません。お気に入りのフィニッシャーを3ターン目に叩きつけてください。

今日が「7月6日」なら
この御方をデッキに入れたのに
《氷河期の災厄》
一説には「マリット・レイジ」と
互角に争ったとも、同一視されたとも……!

ただ、このデッキ……第1回でご紹介した「エメリアコントロール」以上に、対コンボ戦が鬼門になります。あとは、重コントロール戦。サイドボードに、どうにかならないかと、四苦八苦した痕跡がありますね……。
今回の「緑単ストンピィ」1番の高額カードは切り札《自然の秩序》……ではなく、サイドボードに搭載した《三なる宝球》。三千円近い逸品ですが、マナエルフから2ターン目にこいつを繰り出し、無理やり動きを封じるくらいしか、打つ手を思いつかなかったのです。

スペルコンボ強制停止装置
(5/8追記。あっ、1枚挿しの
《グレートヘンジ》のほうが
少し高い!?  勘違い、お許しを!)

しかし、「スニーク・ショー」などの「ショー・アンド・テル」系には効きにくいからなぁ……環境によっては、古式に則り、《冬の宝珠》のほうが?  この辺りの選択は専門家のご意見をうかがいたいところです。

先祖の「セニョール・ストンピィ」では
定番のサイドカードでした

ともあれ、今日の記事に限っては、難しいことは言いっこなし。有利?  不利?  そんなん、お祭りです、お祭り。
たまには、手札に来たカッコいい怪物たちを片っ端から叩きつけ、小学生の喜びに立ち帰るようなゲームをしたい。そう願って組んだデッキが「緑単ストンピィ」なのですから。

同じ「緑」の環境デッキには、「エルフ」があります。「緑」の代表部族、エルフたちを連鎖的に呼び出すビートコンボ。

何というか……スゲェカードを刷ったな(語彙消失)

しかし、今回はあえてシンプルに、超パワーの大型クリーチャーたちを次々と戦場に投入するタイプのデッキにしてみました。お試しで組んでもらうには、「エルフ」はちょっと高価すぎるデッキですし……。

およそ、十万円
「ウルザズ・サーガ」時代に遊んでいて
押し入れに眠っている人は、軍資金にしよう
もしくは自分で使って
「エルフ」でレガシー参入、しよう!

3.この一連の記事も「緑」で3色目。そろそろ白状しますが……これまでの記事は子どもたちに渡す「護身用のデッキ」を作るため、という以上に、別の願いのためにも書かれています。

もちろん
学校で戦いになったときのためでもある
「アカデミーは時の研究をした
時を使い果たすまで」
ウルザが創建した学校を選ぶのは、恐ぇえ

僕自身が、遊びたいからですね。いずれ、子どもたちといっしょに。

「お父さんといっしょ」
みんな~  →《変 身》!

そのために、安価でもしっかり戦える、5色それぞれのレガシーデッキを組んで、家に置いておこうかな、と考えたワケです。

……もちろん、親の趣味に無理やり付き合わせたいなどとは思いません。それだから、これはまぁ、ただの願望。フリプ会などで初心者の方に貸し出すこともできればと思って。

子どもができて、思うこと。……時は短い。《トレイリアのアカデミー》の話ではありませんが、使い果たすのは、あっという間です。
親といっしょに遊ぼう、などと言ってくれる月日がどれほどあることか。
いずれ、すぐに彼女たちは巣立つ。友だちや自分の新しい家族と、より長い時を過ごすようになる。それで良い。それがいちばんの《願い》です。

ただ、その日までの、ごく短い、つかの間の時を共に過ごすツールの1つに、“父が愛するゲームを挟みこむ”くらいは許されるのでは、と思っています。

「マジック」は様々なことを教えてくれます。対戦相手とそのデッキへの「敬意」と、それを示す「礼節」。ゲーム中にわずかな兆しを読む「洞察力」。自分で情報を集め、愛機を環境に応じて練り上げる「考察力」。勝ちと負けの双方を共に受け止める「度量」……「フェア」であり続けることの「気高さ」と「難しさ」……。

「平等!!!」
「白」はこれだからなぁ……。

いやいや。学習教材じゃないんだから、ゲームから何かを得よう、などという思想自体が貧しい考えかもしれません。ただ、「あー、楽しかった」と胸を張って言える「思い出」が1つでも残れば。

そのために、「緑単ストンピィ」は必須。このデッキにはレガシー環境の何者も敵わない、最大の特性があります。
「安定性」。「扱いやすさ」です。
デッキにとって、もっとも強い動きを常に高い確率で再現でき、仮に初心者でも、たとえ子どもでも、最低限のルールさえ知っていれば、即座に楽しめるし、戦える。完璧に使いこなすには、時間と理解が必要でも。

最初の1歩は、いつでも彼

“子ども”のために「緑単ストンピィ」を組むのは……実は初めてではありません。今よりずっと、弱いデッキでしたけどね。

前の「ドミナリア」発売直後。当時は姪と遊ぶ機会が多く、小学生の彼女のために組んだ“初心者”用のカジュアルデッキが「緑単ストンピィ」だったのです。
8枚の1マナエルフ+最新カードだった《鉄葉のチャンピオン》という基本構造は今と同じ。《むかしむかし》などというトンデモカードはまだ刷られていなかったので、再現性を確保するために《皮背のベイロス》まで採用していましたね……。

1点のパワーの違いが大きく
強くはなかったです。プレッシャー不足という印象

しかし、時は移りました。
互いに環境が変わって、姪と遊ぶ機会はめっきり少なくなり、“主がいなくなった《ラノワールのエルフ》や《鉄葉のチャンピオン》たちの再活用をしたかった”というのも「緑単ストンピィ」を選んだ理由。
初心者向けでもあり……他のデッキを持っている方のサブウェポンにもどうでしょうか?
安価で、良い意味でレガシーらしくない大味さがあり、いっそ新鮮な手触りのデッキです。

コンボ戦への備えは、どこまで行っても課題になりますが……。
あくまで強さを突きつめるなら、古語ではなく、レガシーの一般語としての「ストンピィ」化……2マナランドや《エルフの指導霊》を積んで、《虚空の杯》+《アンダーマウンテンの冒険者》を即座に叩き込む「イニシアチブ・ストンピィ」型に派生する展開もありかと。
その場合、必要な予算が10倍では届かない規模に跳ね上がるので、よくよくご熟考を。

2マナランドも高価だし
4枚積みたい、このカードの値上がりがツライ
鬼札め……(私怨)

「緑単」を愛した姪が、この記事を目にする機会は無いはずです。

それはまだ、この世がシンプルで、純朴だったころ。神話の時代のように、あめつちは清浄で、驚きに満ちていたころ。
僕たちは「緑」が誇る原始の大怪獣たちを叩きつけ合って、「喰らいなさい!  《ギガントサウルス》+《狩猟の神、ナイレア》」「ぐぁあ、負けた!」などと叫んでいました。
いま思えば、なんて短い一時。でも……楽しかったですね。

あのころにまで時を巻き戻す魔法は、残念ながら、この次元にはありません。銀の時間逆行実験を繰り返した《トレイリアのアカデミー》は、この世のどこにも。
しかしゲームの中でなら、時を越え、何度だって同じ興奮と喜びを再現できるはず。

実を言うと今日の記事は、もう1人の子ども……のような娘への、届くあてのない私信でもあります。
あのころの「緑単ストンピィ」は、最新型にチューンしておくから……つらいときは、またいつでも遊びにきなよ。それでは、また。

はじめて見たときは、心の中の小学生が震えましたよね
これが、「緑」だ
そして、「緑」の神の加護が
貴方や、自分自身より大切なものたちにあらんことを

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?