【MTG レガシー】「アーボーグ型ドゥームズデイ」 対戦記その6/Tin Fins
1.今日は、2022 Asia Eternal Weekendに出場したレガシー友だちから「土産話+物理的お土産」を受けとるため、カードショップへ。それに合わせ、ワガママをお願いしました。
「Tin Fins」を持ってきてほしい、と頼んだのです。
コンボデッキの最古参、「リアニメイト」。なんらかの方法で墓地に落とした大型クリーチャーを《動く死体》などで釣り上げ、早期の決着を狙うデッキです。《暗黒の儀式》などの黒いマナ加速に支えられ、最古にして、レガシー環境でも最速クラス。
速度特化型の赤黒、《意志の力》を装備できる青黒、マナの安定性が魅力で他のコンボも内包できる黒単と「リアニメイト」にも様々な型があり、中でも「Tin Fins」は独特の構成で1ターンキルも狙えます。青黒+タッチ白が多く、《グリセルブランド》特化型、と呼ぶべきでしょうか。
このデッキで採用される“釣竿”に《浅すぎる墓穴》《御霊の復讐》があります。墓地から甦らせたクリーチャーに速効をつけ、即座に攻撃させられる代わりに、ターン終了時に追放しなければならないカードたち。
次のターン??? そんな遠い未来は来ません。《グリセルブランド》を釣り上げ、攻撃。絆魂で7点のライフを得て……スタート。いや、フィニッシュか。「Tin Fins」では《グリセルブランド》を、7点のライフを7枚の手札に変換する強力なドローエンジンとして運用します。
複数回の7枚ドローで爆発的にふくれあがった手札から、黒いピッチスペルの手札破壊《暴露》《悲嘆》を連発。対戦相手の手札をズタズタにしつつ、マナ加速も合わせてストームを稼ぎ、超威力の《苦悶の触手》を撃つか、《引き裂かれし永劫、エムラクール》を走らせ、トドメ。
「アーボーグ型ドゥームズデイ」にとっての「Tin Fins」は、経験と実験のために、ぜひ戦っておきたい相手でした。
生まれて間もない「アーボーグ型ドゥームズデイ」には初めてといえる、自分より明確に速度で勝るデッキ。しかも妨害は、苦手な手札破壊が中心。
……おあつらえ向きです。さぞ地獄を見せてくれることでしょう。
「Doomsday」にとっての強敵は、ライフを積極的に削ってくるURデルバーなどのデッキ。その上ですべてのコンボデッキに共通する天敵が「自分をさらに上回る速さのコンボデッキ」。
レガシー友だちが「Tin Fins」を持っているのを知っており、そういう理由で図々しい無茶を言った次第。
「自分もコンボ対策を研究するために組んだデッキで、練度はイマイチだけど」と言いつつ、快諾してもらい、感謝です。名古屋土産のお菓子までいただき、本当に申し訳なく、ありがたく……。
2.こちらのデッキは、こう。
再録禁止カード不使用の「アーボーグ型ドゥームズデイ」です。つい先日、長い全カード紹介をしたばかりなのに……細かい部分が違います。
まず、《定業》2枚の採用。
白状すると、前回のリストは紹介のためという理由もあり、やりたいことを詰めこんだタイプで、ちょっと初手依存度が高めです。体感であと2枚……せめて1枚、キャントリップがほしく、《考慮》を増やしてみたり、ドローソースをいじってみたり……結局、《定業》のためにスペースを空けました。代わりに《夜の囁き》はお留守番。
《夜の囁き》不採用の理由は他にもあり、前回の記事作成中、猛烈な勢いで流行し始めたデッキへの対策として妨害カードを入れ替えたからです。
《強迫》→《思考囲い》に。《狼狽の嵐》→《呪文貫き》に。
メインボードは、対ストンピィ仕様といった調整。《夜の囁き》は《思考囲い》4枚体制の割りも食った形です。2点ずつ痛いので……。サイドボードは、さらに問題です。後述します。
3.ともあれ今日の相手は、最速の「Tin Fins」。気を抜くことはできません。
初戦は先手。ところが、マリガンです。お相手もマリガン。改めて配られた7枚のカードを見て、しばし考え込むことに。
限りなく、ビミョー……《暗黒の儀式》こそありますが、《最後の審判》がなく、キャントリップも少なめ。その代わり、燦然と黒く輝いているのが2枚の《思考囲い》。
これが1回目に配られた初手なら、やりません。自分の勝ちが遠いです。しかし、すでに1マリガン後。さらにマリガンして、これ以上、悪くなったらゲームになりません。それに、こちらが速くなくても、相手を遅らせることができる初手だとはいえます。
こういうとき、よくないですね。お互いに相手のデッキがわかっているのは。知らない前提で戦おうとしても、どうしても頭をちらつきます。
迷って、キープ。まずこちらの《思考囲い》、次に相手の《暴露》が互いに突き刺さり、双方の手札が丸見えに。
限りなくビミョーな初手が、バレてしもうた。
こちらもビミョーですが、その点でお相手も負けていませんでした。1ランドキープ。虎の子の《思案》をまず落とし、そこから随時、邪魔をはさんでいけば、まともに動けなくなるのでは?
2ターン目にして、コンボデッキ対決特有の匂いがしてきました。華麗な初撃を封じ合ったあとの、泥仕合の匂いです。
全部を書き連ねるとひどい有り様になるので、割愛。なにしろ、道中でこれに殴られました。珍しい体験だと思います。
1戦目は先に《最後の審判》を引き、組んだパイルはこうだったと思います。
《予報》→《タッサの神託者》→《秋の際》→《発掘》→《否定の契約》
手札の《秋の際》を始動に使い、余ったマナでそのまま《予報》を撃てるリアニメイトルート。何事もなくパイル完走で、勝ち。
……こういうこともあります。速いコンボデッキの差し合いらしく、スペル戦で隙を突き合う、緊張に満ちた展開。そんな戦いを覚悟していたのに、いざ蓋を開けたら、この通りで。
スパーリングということで、メインボードのまま、2戦目に。
後手。デッキを知らない前提なら、キープ。《意志の力》こそありませんが、自分のターンが回ってくれば《呪文貫き》を構えられ、さらに次のターンには《最後の審判》を撃てそうです。
ところが……「Tin Fins」の初手が「《悲嘆》」。
生ける《暴露》! 前方確認をされた上、《呪文貫き》を失いました。そのターンは無事に帰ってきますが、ろくな応じ手がなし。しかたないので《渦まく知識》で《意志の力》を探しに……見えたのは、さらなる《渦まく知識》+《思案》2枚。……アカン。
「Tin Fins」2ターン目、《暗黒の儀式》+《納墓》から《グリセルブランド》をサーチし、墓地へ。そのまま《浅すぎる墓穴》での攻撃までつながります。
とりあえずで、14枚ドロー。マナが足りないらしく「うーん、このターンでは殺せない」と言われるも、もはやそういう問題ではありませんね!?
《暴露》+《悲嘆》の連打で、こちらの手札は《島》だけ。《グリセルブランド》こそ《浅すぎる墓穴》の効果で追放されますが、ターン終了時のディスカードを経て、なお7枚の手札に対抗できるはずがなく、投了。
変な話ですが、泥仕合のあとだったので、少し安心もしました。ようやく「挨拶」をしてもらえたという感覚で。「Tin Fins」の顔である彼に。
3戦目もメインボードのまま。お相手が土地を上手く並べられない間に、《最後の審判》を通して勝ち。パイルに干渉されないとわかっているので、普通のリアニメイトルートです。
《予報》→《タッサの神託者》→《秋の際》→《発掘》→《水蓮の花びら》
メインボードで10戦ほど繰り返し(お互いにすぐ終わるデッキなので、何度も戦える)、「Tin Fins」について対戦相手の視点でわかってきたことがあります。
・1ターン目、抵抗できない速さでの必殺撃は、意外なほど飛んではこない。前方確認なしの単発攻撃なら《意志の力》で防げるし、お相手もそんな拙攻をしてこない。
・その理由は、《暴露》《悲嘆》と関係があるのではないだろうか(ついでに《金属モックス》と)。両方の採用による手札消費の激しさから黒いカードが足りず、前方確認と攻撃のターンを分ける必要が生じていると予想。
・《納墓》への依存度は高い。これで《グリセルブランド》を墓地に落としたあとは、デッキ内のどこを引いてもやりたい放題。
・反面、手札に来た《グリセルブランド》を処理するのは得意ではない。手札破壊を自分に向けて撃つほど。現に「青黒リアニメイト」で採用される《入念な研究》などは1度も見かけなかった。今日対戦しているのは採用されていないタイプか、装備されていても枚数がごく少数。
・土地基盤は強くない。1枚きりの《Underground sea》から2枚目の土地を求めて《渦まく知識》《思案》という場面も多かった(しかも、なかなか引けないよう)。デッキ内の土地枚数が少ないのが原因か。
総じて「Tin Fins」は、事前に持っていたイメージより、はるかに繊細なデッキだと感じました。《納墓》+各種リアニメイト呪文という事実上の2枚コンボに加え、マナ基盤と妨害まで、全てのピントがきれいに合った手札が来る確率は高くないはず。
キャントリップを用いて最速で焦点を合わせるのか、どこかの点がブレたままでも無理やり攻撃に移るのか、使い手に独特の嗅覚が要求されそうです。
それならば、速さで劣る「ドゥームズデイ」側の狙い目は、けっして焦点が合わないよう、邪魔をすること。ごく最近、Doomsday.wikiで感銘を受けた言葉があります。
「Doomsdayは、青単色のコントロールデッキである」
キーカード《最後の審判》の黒3マナという色拘束に惑わされがちですが、本質的に「Doomsday」は青いカードで動くデッキ。
「基本土地の《島》を中心として運用し、黒マナが必要な瞬間にだけ《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》を使う」
そんな「アーボーグ型ドゥームズデイ」の設計方針は間違っていないと言われた気がして、勇気づけられました。いつもありがとう。Doomsday.wiki。
実はこのデッキ……《最後の審判》を通すための12枚の妨害カード群を駆使すれば、相当しぶとい防御力を発揮できます。
「Tin Fins」はヨーイドンでレースを挑むには不利な相手。それならば……正々堂々と、嫌がらせです! 青いコントロールデッキとして振る舞い、相手の足を引っ張りましょう。
お相手の妨害カードは手札2枚を失う《暴露》《悲嘆》が主力。速さを奪い、妨害の撃ち合いに持ちこめば、自動的に息切れをするはず。1戦目の泥仕合は、実のところ、理想の展開だったというわけです。
絶対的速度で敵わなくても、そうして相対的な速さが一瞬でも上回れば、我らが「ドゥームズデイ」の勝ちです。
相手のデッキを知らないふり、という白々しいキープ基準は、自分には高度過ぎました。本気で戦わないと、互いのデッキに失礼。いつもより妨害カードの点数を高く付け、自分の動きが多少もっさりとしていても、初撃を凌げる手札ならキープします。
それでも、負けるときは、負けるんですけどね。
《思考囲い》で手札を見たら、《納墓》2枚、《再活性》2枚、《浅すぎる墓穴》だったときは、いちばん荒れてた頃の《ピット・ファイター、カマール》くらいには眉をしかめました。
3ターン以内に速さで呑まれれば、負け。ただ目論みどおり、中~長期戦、それとも泥仕合になることは少なくなく、そうなってから不利を感じる場面は多くありませんでした。
相手は名高い「Tin Fins」。死ぬときは、死にます。しかし、事前にイメージしていた以上に善戦ができ、満足。
4.メイン戦では経験を得ました。ここからは、実験の時間です。サイド戦に移ります。
ただ、その前に、プレインズウォーカーとしてあるまじき失態を告白しなければなりません……前回の記事でも賑々しく紹介した《シェオル》さま。《黙示録、シェオルドレッド》。彼女がなぜか、サイドボードにいないと、読者のみなさんはお気づきでしょうか……。
この日の「Tin Fins」戦は、たまたまお互いの予定が合い、前日に急遽、対戦が決定したものです。それまでの僕は、余裕ぶって、こう考えていたのです。
「ファファファ……《シェオル》さまはウワサ以上に良好な使い心地である。しかし、じりじりと値下がりが続いているんだよな……。もっとお買い得な掘り出し物が現れるまで、買うのを待つか……どうせ、年末は紙で遊ぶ機会がないだろうし。年明けくらいに入手すればエエやろ。ファファファ……」
プレインズウォーカー、罪を告白します。一人回しアプリでの検証は進めてきましたが、さらに値段が下がらないかと、ぎりっぎりまで様子を見ていたせいで、《黙示録、シェオルドレッド》の実物をまだ買えていません。
うわぁああ!? 明日、対戦!? カードの入手が間に合わない! 持っていないカードを紹介してしまった。ごめんなさい、ごめんなさい、こっちの《シェオル》さまを今すぐデッキに入れるから、許して!?
こっちから対戦をふっかけておいて、この有り様。ちなみに《黙示録、シェオルドレッド》自体は、対《グリセルブランド》◎。
起動型能力で7点のライフを失ったところに、カードを引くためにライフ14点もの追徴課税を要求できるので、即殺。ただの7/7飛行絆魂という、多元宇宙でもっとも優しいデーモンになります。速攻をつけて殴られたら1回だけ能力を起動されるかもしれませんが、その代償にプレイヤーが瀕死に。大幅に動きを制限できます。
つらい。……しかし、もう一種のクリーチャー・カードは、なんとか購入が間に合いました。
《敵対工作員》。役割はサーチ妨害です。メイン戦で確認した「Tin Fins」は《納墓》に大きく依存するデッキ。そのうえ、土地基盤が不安定。このクリーチャーが定着すれば、《納墓》どころか「フェッチランド」を切ることもできず、かなり困るのでは?
他の妨害カードたちが1手ずつ「Tin Fins」を遅らせるとすれば、《敵対工作員》は1枚で2手以上を楽々と稼げるカードです。2枚を投入。
《否定の力》もサイドイン。2枚。
《否定の力》も4枚に増やしたくなったと偉そうにほざきつつ、通販サイトを見比べながら「ファファファ……」などとアホ顔で余裕をぶっこいて、いまだ買い控えていたカード……!
自分より速いデッキに対抗するにはうってつけのカードなのに、過去にプレインズウォークして《もう一人の自分》で自分自身をぶん殴ってやりたい。
そうはいっても、今、無いものは仕方がなく。
その代わりに、デッキの速度差を埋めるカードが、別にあります。
……お相手のデッキが「Tin Fins」だと前日から知っている以上、外すほうがフェアなのかも、と自問したのですが……そんな手の抜き方をするのも失礼だと思い直し、サイドボードに入れてあります。それにこの対戦は、ある考えを試すための実験でもあります。そのカードの採用枚数は、2枚。
この6枚のサイドインで行きます。《強迫》は少し遅いかと思い、今回は留守番。後手番には《目くらまし》と入れ替えてみました。
コンボデッキのサイドボーディングの難しいところは、何を入れたいかではなく、代わりに何を抜けばいいか、という点だと強く感じています。メインボードがコンボのために最適化されている以上は、何を外してもバランスに影響が出てきそうで。
今回の場合、まず2枚を抜くのは簡単です。《否定の契約》《魂の洞窟》。
打ち消し呪文が無い、もしくは少ない相手には不要。もともと自分の動きに影響が出にくいカードたちです。
次が……《水蓮の花びら》2枚。
「Tin Fins」に速さで勝負を挑まない、と決めたので、枚数損をしやすい《花びら》を抜きます。これが多く必要なパイルもあるのが泣きどころですが……おそらく、中、長期戦はサイド後もこちらが有利なまま。そのときはマナが潤沢で、ほかのパイルが組めるようになっていると思います。ただし全抜きすると、使えるパイルが一気に減るので、2枚は残し。
あとは《通りの悪霊》《秋の際》、「サイクリング」カードを1枚ずつ。
これらも組めるパイルの種類に関わり、特に《最後の審判》後の即死攻撃が狙いにくくなります。しかし、こちらがその狭い隙間をくぐらされる勝負にはならないと思います。
このあたりが妨害カードをできるだけ残した上で、本来の動きを損なわない限界でしょうか。
サイドボーディングは本当に難しい。自分だけでは正解が見えません。実戦で、正誤の証明をしていくしかなさそうです。
5.サイドボーディング後、こちらは後手。お相手は……1ターン、2ターンと土地を置くだけで動きがありません。溜めを作っている様子。
なるほど。「Tin Fins」も相応の枚数のカードをサイドインしているはず。まだ内容は読みきれないが、入れ替えたあとでなお、メインボード並みの速さを保つことは困難なのだな、と感じました。長い勝負になるかも、と。
ところが決着は、次のターンでした。「Tin Fins」3枚目の土地が「フェッチランド」。即座に起動。そのときこちらは……サイドインしたばかりのカードを持っていました。対応して、《暗黒の儀式》。
その時点でお相手は察したようです。瞬速をもつ《敵対工作員》が戦場に。
数少ない「フェッチランド」を奪われ、お相手はそのまま、投了。
これがまず、実験してみたかったこと。いつもは使われる側の対策カード……特にヘイトクリーチャーを使う側に回ったら、自分よりも優速なデッキはどのような反応を示すのか?
想像していた以上にきれいな形で、深々と突き刺さってくれました。使ったこちらが戸惑うほどに。
2戦目はゲーム開始前に、ミスをしました。お相手は1マリガン。こちらは7枚キープで、自分の手札を見ながら、つぶやいてしまったのです。
「ねえ、“ゲーム開始時に場に出す”ってマリガン後でいいんですよね?」
「いま、それ言われたら、こっちのキープ基準に影響しちゃうよー」
「ギャギャ!?」
初心者さぁ……。カジュアルな練習試合で本っ当に良かった。デジタル媒体でしか使ったことがないカードだったのですよね。
その上で大変に心苦しいのですが、開幕に登場です。
《虚空の力線》。
「Doomsday」というデッキにとって自分より速い環境デッキは、数えられます。たとえば「The Spy」。「ストーム」系。そして「リアニメイト」系。その多くが共通点を持ちます。墓地を使うという点です。
「Doomsday」が用いる墓地対策カードには、特に《虚空の力線》が多いです。初手に持っていれば、戦場に出た状態でゲームを開始できる、究極の墓地対策カード。
より小回りがきく《外科的摘出》ではなく、《虚空の力線》採用の理由は、キープ基準を拡大できるから、という点ではないかと考えています。《虚空の力線》が初手に来れば、もちろん大きく有利。そして……来なくても別にいいのです。その代わりが、相手を即死させられる初手だったなら、別にどちらでも。
それゆえに、4枚ではなく、2枚採用。出さないと負けるという受け身のカードではなく、勝ちを狙える枠の拡大という攻撃的な意味合いが強いのかな、と勝手に解釈しています。
実際のところ、「Tin Fins」には著しい効き目です。2戦目はそのまま封殺で何もさせず勝ち。《虚空の力線》があるという前提で、「Tin Fins」側はサイドプランを変更。《虚空の力線》を砕けるカードを投入、もしくは墓地を使わないプランも選べるようにしてきます。
もちろん、何度も負けました。《実物提示教育》から《引き裂かれし永劫、エムラクール》も出されました。
捨て身のマナ加速から《墓所のタイタン》も出されかけ、あわてました。
しかし……サイド後はやはり、「ドゥームズデイ」側が有利だったと思います。サイドインしたカードたちの、本質への突き刺さり方が違いました。そのことをレガシー友だちさんもわかっていたはずなのに、くりかえしテストプレイに付き合っていただき、本当に感謝。
象徴的だったのは、このカード。
初手《虚空の力線》を置いた戦いで、「Tin Fins」はこのカードを繰り出してきました。《静寂》。使用者の次のアップキープにすべてのアーティファクトとエンチャントを破壊するカード。
前のターンの手札破壊で、こちらの手札に《意志の力》があることを「Tin Fins」は知っていました。それだからこのカードを通したとき、お相手は少し、驚いたようです。あと1ターンで《虚空の力線》は砕け散ります。
あちらの視点では《虚空の力線》は命を守るための防壁《Moat》に見えていたのかもしれません。
しかし、こちらにとって《虚空の力線》はもう役目を終えていました。同じ「レジェンド」に属する、まるで別のカードと見なしていたからです。
《Nether Void》です。
全ての呪文は、追加で3マナを支払わなければ、打ち消される。
いったんこれを張れば、お互いに自由な行動がほとんど不可能になる、エンチャント・ワールド。
《虚空の力線》は相手にだけ機能する《Nether Void》として、大きく時間を稼いでくれました。「Tin Fins」の速さを「ドゥームズデイ」が易々と上回り、全ての準備を終えるほどに。
《虚空の力線》が砕けた次のターン、《最後の審判》を撃ち、リアニメイトルートでそのままパイル完走。勝利です。
6.レガシー友だちにお付き合いさせて申し訳ないなと思いつつ、どうしても実験しておきたかったことが、これでした。
相手にとって絶対に無視できないヘイトパーマネントを、こちらが場に出したあとの展開。守り方。そして、捨て所を学ぶこと。デッキに入れているときのキープ基準の変え方も。
対処する側の立場では、だいぶ慣れてきたつもりなんですが、使うほうだと不得手なままで。
なぜ、いま、急にそんな実験を?
もしも、明日「アーボーグ型ドゥームズデイ」を握りしめて大会に出ろ、と言われたなら、特定の相手にだけ効く《Nether Void》として、このカードをサイドボードに積もうと考えたからです。
「イニシアチブ・ストンピィ」。この記事の作成時、爆発的な流行を見せているデッキタイプです。
白単、白赤、白黒など、現在進行形でさまざまなタイプが試されており、2マナランドや《金属モックス》から高速でイニシアチブクリーチャーを叩きつけてきます。
当然の権利のように《虚空の杯》も標準装備。
初めからフェアな戦いを挑まないコンボデッキ……「アーボーグ型ドゥームズデイ」にとって特に脅威なのは、《魂の洞窟》を通して現れる「打ち消せない」ヘイトクリーチャーたちです。
たとえば、この三銃士な。
……失礼。あまりの偉容に、気絶していました。
曲がりなりにもアンフェア側に立つ「アーボーグ型ドゥームズデイ」の対策は……対策なんてしないこと。
受け身になって応じようなどと考えたら、死ぬ、ということです。
速度で殺す。
ただし、毎度、理想的な初手でキープできるなら苦労はないわけで……その代わり、1枚で即死に近い状況を狙えるカードを探し、キープ基準のほうを増やそうと考えました。ちょうど「Tin Fins」に対する、2枚の《虚空の力線》のように。
「イニシアチブ」で本当に恐いのは白いクリーチャー。ヘイトアーティファクトのほうは打ち消せます。白の呪文を初めから唱えさせなければ、大きな有利を見込めるはず。3マナの《憂鬱》は《暗黒の儀式》から1ターン目に唱えられる《Nether Void》(白限定)。
《憂鬱》+《暗黒の儀式》もキープ基準に加えれば、よちよち歩きの「アーボーグ型」でも戦えるだろうか、とレガシー初心者なりに考えたのです。一般の「Doomsday」ではこの枠に《Dystopia》が採用され始めていますね。
今回の「Tin Fins」戦は、まったくデッキタイプが違うので奇妙ですが、自分の考えが合っているかを確かめる模擬戦でもありました。
……僕には、メタゲームの行く末を占うことはできません。「イニシアチブ・ストンピィ」の流行が一過性のものではなく、現実の世界で専用サイドボードの枠を取らなければならない勢力に育つのかも不明です。なかなかプレイ機会を作れず、1度もぶつかることがないまま、さらなる脅威が現れるかもしれないし。
ただ自分の作ったデッキが、流行のデッキに手も足も出せない、というのは可哀想だなと思っただけなのです。勝ちたい、というのが、全てのデッキに宿った本能でしょうから。
7.「Tin Fins」と戦っている途中、レガシー友だちさんが面白い話をしてくれました。
強いコンボデッキ使いの条件は、“センス”だと。
練習量や経験を越え、それらとは別の世界を見透す感覚器官。勝ちへの嗅覚。言葉で捉えきれないインスピレーション。……なるほど。
この世のどこかに、そういう使い手は確かにいる。いつかテーブルをはさんで会ってみたいですねー、という話をしたように思います。このニッチすぎる記事がその人たちにも届くかはわかりませんが……そのときはお手柔らかに。
こちらのワガママで実現した急なコンボ対決でしたが、レガシー友だちさんは帰り際に言っていました。「Tin Fins」で来週の大会に出てみようかな、と。おや?
それは良い考えだと思います。完璧に回った「Tin Fins」に斬れないデッキなどありません。その日がレガシー友だちさんの日であることを祈ります。たとえば……彼女に??? いや、それは彼の機嫌を損ねるかな。
コンボデッキには、独特の美があります。紙一重の間合いを見極める緊張感。一瞬で切って落とす速さ。そして、勝ちと敗けの儚さ。
初心者と復帰勢向けと銘打って「アーボーグ型ドゥームズデイ」を紹介しているのは、まだ名前を知らない誰かにも、ぜひその美に手を触れてほしいと願っているからでもあります。
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