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ジェットコースターという奇妙なオブジェ



ジェットコースター


第1章(ジェットコースターという奇妙なオブジェ)

ジェットコースターほど奇妙な建築物はない。
どの段階でカーブをするか。
どれくらいの加速をすればよいか。
それらは高度に難しい物理計算を経て作られる。

けだし、出来上がったものは、まったくもってチンプンカンプンなものだ。
移動手段としての役割など皆無。
(だって、出発して5分後にはまたおなじところに戻ってくるのだから。
さらに加速の無駄な激しさったらありゃしない。
運転はきっとものすごく下手だろう。罰金どころの話じゃないw)
全くもってチンプンカンプン。
そんなに速いものが好きなのならばランニングでもすればよいのに。

なんだってこんなものを作れるんだろう。
でもそこが非常に興味を引き付ける。

「ジェットコースターをつくりたい!俺は空を飛びたいんだ!
楽しいキャラクターと一緒にわちゃわちゃしたいんじゃ!」

このアイデアはなんと奔放なのだろう。
(そこに現実的視野は入り込まない。)
まったくもってチャランポランそのもの。

しかしそれを実現するための手順は論理そのもの。
微分方程式を解き、それの初速度と最終速度を与え、
フーリエ変換をし、(使う?のか!)
まあ、とりあえずむずかしいことをたくさんしている。

多くの人はこの表面
ジェットコースターというアトラクションについては理解できるであろう。
それは子供から大人まで皆がもっともよく知っている形で。
けだし、その背後にある論理的構造について
本当に理解している人はおそらく数えるほどしかいないだろう。



波打ち際

第2章(波打ち際のヤドカリと沖のほうに住む巨大なチョウチンアンコウ)

浅瀬で子供(ゆうこちゃん)がヤドカリさんとあそんでいる。
沖のほうには、チョウチンアンコウがいる。

「ほら、ゆうこちゃん、チョウチンアンコウだよ」

僕は沖のほうを指さして、ゆうこちゃんに教える。

でも裕子ちゃんは、チョウチンアンコウを見ようとはしない。
ヤドカリさんとだけ遊んでいる。

浅瀬の生き物のほうが好きなんだろう。
チョウチンアンコウは寂しそうにこちらを見ている。
でも、誰を責めることもできない。
好き好みはわるいことじゃないもの。




類似の性質(アナロジー)

第3章(第1と第2のアナロジー)

((第1章)↔(第2章)という書き方をしています。)

チャランポラン(ジェットコースター)↔浅瀬(ヤドカリ)
むずかしい物理公式(フーリエ変換)↔沖(チョウチンアンコウ)

という風に相互に翻訳可能である。

チャランポランなアイデアの背後は難しい物理公式に支えられている。

浅瀬のかわいらしいヤドカリの奥には、巨大なチョウチンアンコウが、
沖の薄明りの中、電灯を垂らしている。

第一、第2の物語の語ることは、
いつも、自分の見ている事柄(とても簡単で明瞭なもの)の背後には、
全く未解決でよくわからない物事が広がっているということだ。
(それに対しての好き嫌いについては、まあ、おいておくことにして。)

「いいね。
もし、路頭に迷ってしまったときには、ここんところをよく
思い出んだよ。」

そういって、おじいさんは僕の首に子供財布をかけてくれた。

うすあかりの中、ゆっくりと歩くこと


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