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日本の社会保障制度とこれからの歯科医師の稼ぎ方

まずは現状の社会保障制度(公的医療保険制度)

国民全員が公的な医療保険制度に加入することが義務付けられています。

日本の公的医療保険制度は、医療費の一部を国や自治体、保険者が補助し、残りの部分を利用者が負担する仕組みになっています。それぞれの負担率は年齢や収入に応じて決定されていて、おおまかな負担割合は以下の通りです。

一般的な成人(満20歳以上 - 69歳以下)  負担割合: 30%
小児(満15歳以下)         負担割合: 20%
高齢者(満70歳以上 - 74歳以下)  負担割合: 10%〜30%(所得に応じて変動)
特定高齢者(満75歳以上)     負担割合: 10%

これに加えて障害者や特定難病など色々な制度があります。また生活保護を受けている方は負担なしなどもあります。また、自治体独自にサポートする市町村もあります。

高額療養費制度

さらに病気やけがの程度に応じて減免制度や上限制度があり、高額な医療費がかかった場合の自己負担額を抑えることができる「高額療養費制度」も存在する。この制度は、月あたりの自己負担額が一定の額を超えた場合、その超えた部分の医療費が補助される仕組みになっている。

厚生労働省HPより

高齢者、特に75歳以上の「特定高齢者」の世代は、慢性的な疾患の治療や入院が増加するため、医療費が増加する傾向にあります。日本の医療費の増加は、高齢化だけでなく、医療技術の進化や薬価の高騰なども影響しています。

厚生労働省HPより抜粋

これにより年間医療費は上昇してきている。
2019年度で医療費は45兆円となっている。

一般会計での社会保障関係費も36兆円を計上されている。

昨今話題の国民負担率が50%に迫っており、世論の反発も大きくなっている。そのほとんどが社会保障にあてられているため、今後社会保障費が上がっていくことは考えにくい。
それにより毎年行われる診療報酬改定でもマイナス査定が続いている。

歯科医療費の構成割合も下がってきている。

各国の歯科医師の平均年収
参考までに、各国の歯科医師の平均年収を紹介します。
日本: 811万円
アメリカ: 3000万円
韓国: 1100万円
中国: 823万円
ドイツ: 950万円
イギリス: 1025万円
オーストラリア: 1500万円
ASEAN(タイ・シンガポール): 1030万円

政治家もこの問題に取り組もうとしているが、基本的には社会保障費を下げる方向です。


国民民主党 玉木代表(2023年当時のツイート)

財務省も診療報酬の引き下げを検討しているが、医師会と主張は対立しています。

歯科医師が稼いでいくには自費を推進するのみ

自費診療の重要性

現代の歯科医療において、自費診療の重要性はますます高まっています。保険診療のみで医院を運営する場合、ジリ貧状態に陥る可能性が非常に高いです。保険診療では、治療費が固定されており、収益が限られてしまうため、医院の経営が困難になることが多々あります。そのため、歯科矯正やインプラントなどの自由診療を取り入れることが必要不可欠です。もちろん自由診療でエンドやペリオをやっても問題ありませんが、日本の患者教育が追いついていないため、大都市でしか採算がとれない現状があります。
自由診療を導入することで、医院の収益を大幅に向上させることができます。
また、自由診療を提供することで、患者に対して幅広い治療選択肢を提供でき、患者満足度の向上にもつながります。自費診療を成功させるためには、若いうちから努力して認定医や専門医の資格を取得することが非常に重要だと考えています。
専門的な知識と技術を身につけることで、他の医院との差別化を図ることができ、患者からの信頼を得ることができます。認定医や専門医の資格は、医院のブランド価値を高め、患者からの紹介や口コミによる集客効果も期待できます。
さらに、自費診療を取り入れるためには、常に最新の医療技術やトレンドを学び続ける姿勢が求められます。セミナーや学会への参加、専門書や論文の読解などを通じて、最新の知識を習得し、実践に活かすことが重要です。

コミュニケーション能力

歯科医療は、単独で提供できるものではありません。歯科医師が患者に最適な治療を提供するためには、歯科衛生士や他のスタッフとの協力が不可欠です。しかし、近年、歯科衛生士の募集が非常に難しくなってきています。これは、少子高齢化による労働力人口の減少や、他業種との競争が激化していることなどが原因です。その結果、優秀な歯科衛生士を確保するためには、人材紹介会社を利用したり、求人広告を出すために多額の費用がかかるようになっています。
このような状況下で、医院が持続的に発展するためには、コミュニケーション能力が極めて重要な役割を果たします。まず、歯科医師自身が高いコミュニケーション能力を持つことが必要です。これは、患者との対話を円滑にし、信頼関係を築くためだけでなく、スタッフとの協力体制を強化するためにも不可欠です。スタッフ一人ひとりの意見や提案を尊重し、円滑なコミュニケーションを図ることで、チーム全体の士気が高まり、効率的な診療が可能になります。
また、コミュニケーション能力の高さは、長期間にわたりスタッフが働き続けたいと思える環境を作り出すためにも重要です。スタッフが安心して働ける職場環境を整えることで、離職率を低下させることができます。具体的には、定期的な面談やフィードバックの実施、スタッフ間の情報共有を促進するためのミーティングの開催などが効果的です。これにより、スタッフ一人ひとりが自分の役割や貢献を実感できるようになります。
さらに、歯科医院の運営においては、患者との信頼関係の構築が欠かせません。患者が安心して治療を受けられるよう、歯科医師やスタッフが親身になって対応することが求められます。患者の不安や疑問に丁寧に答え、治療内容や進行状況を適切に説明することで、患者の信頼を得ることができます。これにより、患者のリピート率が向上し、医院の評判も高まります。
最後に、コミュニケーション能力は、医院全体の成長にも直結します。スタッフが互いに協力し合い、情報や知識を共有することで、診療の質が向上し、効率的な運営が可能となります。例えば、新しい治療法や技術の導入時には、全スタッフがそのメリットや手順を理解し、一体となって取り組むことが求められます。このような協力体制が整うことで、医院は常に最新の医療を提供し続けることができ、患者に対するサービスの向上にもつながります。

学ぶ心と発信力

現代の歯科医師にとって、学ぶ心と発信力は極めて重要な要素です。医療技術や知識は日々進化しており、最新の情報を常に取り入れることが不可欠です。私が常日頃から意識していることですが、「自分にとって本当にコワイ奴は下から来るんだ」です。常に知識をアップデートしないと、優秀な若手に一瞬で置いていかれます。

ヒカルの碁(倉田7段)

このためには、定期的な研修やセミナーへの参加、専門書や学術論文の読解などを通じて、自己研鑽(勉強)を続けることが求められます。技術の向上は、患者に対して高品質な治療を提供するための基本です。
しかし、技術だけではなく、コミュニケーション能力の向上も同様に重要です。患者との対話を通じて、彼らのニーズや不安を理解し、適切な説明や安心感を提供することが求められます。これにより、患者の信頼を得ることができ、長期的な関係を築くことが可能になります。さらに、スタッフとの円滑なコミュニケーションも医院の運営において欠かせない要素です。チームワークを強化し、職場環境を良好に保つことで、医院全体のパフォーマンスが向上します。
集客力の向上も、現代の歯科医師にとって重要なスキルです。競争が激化する中で、新しい患者を獲得し続けるためには、マーケティングやプロモーションの知識が必要です。例えば、SNSやブログを活用した情報発信は、医院の認知度を高めるための効果的な手段です。定期的に役立つ情報や治療の事例を発信することで、潜在的な患者との接点を増やし、集客につなげることができます。
さらに、歯科医療以外の知識も非常に役立ちます。例えば、マネーリテラシーは、医院の経営や個人の資産管理において重要な役割を果たします。適切な投資や資金運用の知識を持つことで、経済的な安定を確保できます。経営学や組織マネジメント学も、医院を効率的に運営するために欠かせない知識です。これらの知識を活用することで、組織の強化やスタッフのモチベーション向上、患者満足度の向上など、多方面にわたる改善が期待できます。
また、歯科医療以外の分野でのインプットも必要です。例えば、健康関連のトレンドや新しい治療法についての知識、さらには異業種での成功事例やビジネスモデルなど、幅広い情報を取り入れることで、新しい視点やアイデアを得ることができます。これにより、従来の枠にとらわれない発想やアプローチが可能となり、医院の成長に寄与します。
総じて、学ぶ心と発信力は、現代の歯科医師が成功するために不可欠な要素です。技術の向上とともに、コミュニケーション能力、集客力、そして広範な知識の習得を通じて、患者に対して高品質な医療サービスを提供し続けることが必要です。

安全かつ丁寧な医療の提供
薄利多売のモデルでは、利益を上げるために大量の患者を迅速に処理する必要があります。
そもそも医療行為自体が精密さと注意を要するものであり、時間と労力をかける必要があります。時間に追われて多くの患者を処理しなければならない状況では、一つ一つの治療に十分な時間を割くことが難しくなり、安全かつ丁寧な医療を提供することが困難になります。
具体的には、診断や治療計画の立案、実施、アフターケアに至るまでの全てのプロセスにおいて、医師やスタッフが焦りやプレッシャーを感じることになります。これにより、ミスや見落としが発生するリスクが高まります。特に歯科医療では、細かな手技や患者ごとの個別対応が求められるため、急いで処置を行うことは非常に危険です。
さらに、薄利多売のモデルでは、コスト削減の圧力も強くなります。これは、使用する材料や設備の品質、スタッフの教育訓練、さらには診療環境の整備にまで影響を及ぼすことがあります。質の低い材料や未熟なスタッフを使うことで、本当に患者にとって安全かつ必要な治療ができなくなります。
終わらない根管治療や2次カリエスに絶対なるだろうというCR充填など、この記事を読んでいる方は見たことがあると思います。合わないデンチャー、無理に保存してあるC4や大きなPerなど多数存在しています。

また、大きな事故や医療過誤が発生すると、その影響は甚大です。患者の健康や生命に直接的な危険を及ぼすだけでなく、医院の信用も失墜し、法的な責任を問われることになります。また、医療過誤に対する訴訟や賠償問題も発生し、経済的な損失も大きくなります。これにより、医院の経営が破綻するリスクが高まります。
これを防ぐためには、緊急時の対応能力を高めることが不可欠です。具体的には、医師やスタッフが緊急事態に迅速かつ適切に対応できるよう、定期的な訓練やシミュレーションを行うことが重要です。また、医療機器や設備のメンテナンスを徹底し、常に万全の状態を保つことも必要です。これにより、突発的なトラブルや事故のリスクを最小限に抑えることができます。
医療の本質は、患者に対して安全で質の高いケアを提供することです。利益を追求するあまり、安全性を犠牲にすることは、本末転倒です。長期的な視点で考えると、質の高い医療を提供することで患者の信頼を得ることができ、結果として安定した経営が可能となります。

歯科医師免許持ったら安泰という時代の終わり

まさしくタイトル通りです。
今後は医療職の給料が(相対的に)上がらない時代がやってきます。
ただ、歯科医師が不要になることはまずありません。
その際に自身も患者さんも幸せになるには自費診療を推進していくしかありません。
幸いなことに混合診療が歯科では認められています。
自費を取りやすい診療科なのです。
圧倒的な知識と技術を常に更新し続け、ストレスのない歯科医師人生を歩めることを祈っています。



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