トイレの花子さん 3

「おはよう」
教室に元気な声が集まってくる。
登校した子供達は、周りの友人達とお喋りをしたり、授業前の準備をしながら先生が来るまでの時間を普段通りに過ごしていた。

「ねえねえ」と、話しかけてきたのは、昨日の好奇心旺盛な子供だった。
ショートヘアが良く似合い、スラッと伸びた手足が性格を表しているように、元気な子供だった。
名前は、春美。負けん気の強い子供だ。

春美に話しかけられた子供の名前は優花と言う。
 色白で物静かだが、周りの様子をよく見ており、穏やかな話し方をするので誰からも慕われていた。

優花が振り返る。
春美は、ニヤけながら教室の外を指差して昨日の続きを示唆したようだ。
優花は、少し困ったが小さく頷き、はぁ。。とため息を着きながら席に着いた。
昨日泣きべそをかいていた子供は、名前を実千花と言った。
春美や優花よりも背が低く、顔つきも幼い感じだった。家庭の中でも上にお兄ちゃんが2人居て、可愛がられている。
甘えん坊な可愛いらしい女の子だった。

実千花は、まだ来ていない。
優花は心配になっていた。
が、少し遅い登校ではあったが、いつも通りの笑顔で「おはよう」と言ってくれたのでほっとしていた。

元気な男子児童が走り回ったり、ゲームの話しをしていたり、授業前の教室は子供らしく賑やかさと元気の良さでいっぱいだった。

「はーい、席に着いてー。ホームルームするぞー」
と、担任の先生が教室に入ってきた。

子供達は各々の席に着き、先生の話しを聞いていた。

先生が今日の注意事項を言った。
「今日は、この階のトイレが使えないので、3階と1階のトイレを使うようにな〜。」
「何かあったんですか?」
と1人の生徒が言った。
「うん、この階のトイレだけ水の様子がおかしいんだ。午前中のうちに見てもらうから、修理が終わるまでは、3階と1階のトイレを使ってください。じゃあホームルーム終わります。1時間目の用意してください。あ、言い忘れた。トイレの移動に時間がかかるから、早めにトイレに行くんだぞ〜。間違っても我慢はするなよー。返事はー?」「はぁい」子供達の気の抜けた様な声が教室に響いた。

1時間目の授業が終わると、春美がバタバタとやってきた。
「3階のトイレに行けるじゃん!ねぇ、今行かない?」
実千花は、「えぇ。今トイレしたくないからいい。。」
「今は大丈夫だけど、中休みの時に行く。みんなで行けば大丈夫だって。」と優花が言った。
春美は、用を足したいと言うよりも、とにかく3階のトイレに行ってみたいらしく、他の女子生徒と一緒に3階のトイレに行った。

2時間目の授業がそろそろ始まる。
実千花はなんとなくハラハラしていた。
先生が2時間目の授業を始める為に入ってきた。

春美と数人の女子生徒がまだ教室に戻って来ていない。
「あれ?どした?春美達が居ないな」と先生が言った。

バタバタと廊下を走る音がして、教室に春美達が戻ってきた。
「すみません、3階のトイレに行ってました。」と1人が言い、5人の女子生徒がドタバタと席に着いた。
「そっかー。3階のトイレはちょっと奥だしなぁ。今日は大目に見るけど、気をつけろよ。それと、廊下は走るな」
先生は全員揃った事を確認して授業を始めた。
2時間目の授業が終わる頃には
「よし、チャイムはまだなって無いがここまでにしよう。トイレに行きたい奴はすぐ行きなさい。そうじゃない人は、チャイムが鳴るまでは静かにな」
何人かの子供達がパタパタと教室を出ていった。

「実千花、トイレ大丈夫?」優花は実千花に聞いてみた。
「やぁだぁ。お母さんみたい。大丈夫だってばぁ」「あはは、そっか。あたしも行ってくるからさ」
「え、じゃあやっぱり行く。」
「うん、じゃあ1階の方にしよう」と優花は小声で言った。

結局何事も無く午前中の授業は終わり、昼休みになった。


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