トイレの花子さん 1

|ω・)و゙ ㌧㌧  
『はーなこさん、あーそぼ!』

学校の3階のトイレ、奥から3番目の個室に、そうやって声を掛けるとお化けの花子さんが出てくると言われている。

 出てきた花子さんに無惨にも殺されてしまうとか、連れていかれて行方不明になってしまうとか、
運良くなのか、運悪くなのか、念願叶って花子さんと出会った子供達は、正気を失いこれから訪れるはずの未来が完全に閉ざされてしまうとか。

とにかく、良くない事しか起きない。
トイレの花子さんは、とても忌まわしいお化けなのだ。
だが、無邪気な子供達の好奇心は、「やってはいけない」と禁止されるとウズウズムズムズと蠢き始めるものだ。

退屈な授業や学校生活に飽きてきた誰かが、「ねぇねぇ、この学校の3階のトイレにお化けが出るって知ってる?」などとこっそり言おうものなら、
「きゃー!止めてよ!そんな怖い話し!」と嫌がりながらも、心は不気味な出来事に捕らわれてしまうものだ。 
そのうち、「なになに?何の話し?」と、1人、また1人と忌まわしい物語へと引き込まれていく。

既に花子さんの呪縛は、起動し始めている。
誰も、そうだとは思わない内に、至って普通にすんなりと、呪いの儀式の準備は淡々と粛々と進められていく。

「花子さんって、昔トイレで閉じ込められて死んじゃった女の子なんでしょ?」「なんか、不審者に連れ去られて行方不明だった女の子が殺されて学校のトイレに放置されてたって聞いたよ」
「え?戦争の時に学校で爆撃にあった女の子じゃない?」

花子さんの正体は、誰も知らないのだ。
 

授業が終わり、誰も居なくなった教室で、数人の女の子が「トイレの花子さん」の話しをコソコソしている。

「花子さんに会うと、殺されるんでしょ?」
「花子さんに連れていかれるって言ってた。お母さんが子供の頃トイレの花子さんに会いに行った女の子が行方不明になったって言ってた。」「え!あんたのお母さん、花子さんにあった事あんの?」「違うよ、お母さんは会いに行かなかったけど知り合いが儀式をやったって言ってたよ」
「儀式があるの?」「よくわかんないけど。。。でも、なんか会う方法があるみたいだよ」
「えー!どんなどんな?どうやったら花子さんに会えるの?」
「お母さんは、教えてくれなかったからわかんないよ。」
「えー、なんだぁ。つまんないなぁ」
すると、もう1人の女の子が声を上げた。
「あたし、聞いた事がある。」
「え!うそ!どうやるの?」
「放課後、誰も居ないトイレに言って、花子さんに声を掛けるんだって。」
「なんて声を掛けるの?」
「花子さん、遊ぼうって言うんだって。」
「それだけ?」
「あ、ちゃんと場所も決まってるらしいよ。3階のトイレの奥から3番目。ノックは2回して、それから言う。」
「ノックを2回して、花子さん、遊ぼうって言うだけ?」
「うん、そうだって。」
「簡単じゃん!ねぇねぇ、やってみない?面白そうじゃん!」
「や、やだよ〜、お母さんの知ってる子は行方不明になったんだよ。嫌だよォ」
「え〜、アンタはどう?花子さんの事詳しいみたいだし。やってみない?」
「ん〜。。。」
「何よぉ」
「あたしが聞いたのは、花子さんに会うと殺されるって話しだった。血塗れでトイレに倒れて居る女の子が、花子さんにやられたんだって話しだった。」
「え。。。花子さんに血塗れで殺されるの。うわ。。。で、でも、それってホントなの?」
「え〜、お母さんが言ってたし。花子さんは居るんだよ!怖いお化けなんだよ。」
「でもさぁ、ここの学校じゃないかもしれないし。お母さんは花子さんを見てないんでしょ?」
「うーーーーん。見てないかもしれない、でもぉ。。。」
「それに、この学校のトイレにお化けが出るって噂はあるけど、花子さんじゃないかもしれないし。花子さんじゃ無かったら、行方不明も血塗れで殺されるも無いんじゃない?」と、1番最初にお化けの話しをした生徒は、子供らしい無邪気さでイヒヒと笑った。
「行ってみようよ!3階のトイレ!」
「えぇっ!嫌だよ〜、怖いよぉ」
「アンタは?花子さんかどうか確かめてみたくない?」と、呪文を教えてくれた生徒に向かって聞く。
「う、うん。花子さんだったら怖いけど。。。でも、花子さんじゃないかもしれないンだよね。」
「そうだよ!花子さんなのか、ただのお化けなのか検証してみようよ!」
「う、うん。呪文どうりやってみて何もなければ、花子さんじゃないもんね。怖い。。けど、確かめてみたいかも。。」
「でしょ〜?行ってみよう!」
「え、2人とも行くの!やめなよ、怖いってば!花子さんだったらどうすんの?やめなよ〜」
と、半ベソをかきながら、2人を引き止める生徒が、もう既に花子さんに捕らわれ始めていた。



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