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三元豚ロースカツサンドとレモンスカッシュ

午前中の事務処理と電話対応、お客様に商品PRをした。車の中で今日の昼は何にしようかと頭に浮かぶ。頭を使ったので腹は空いてるのだが、ラーメンを食べる気分にはならない。
・・・カツサンドだ。
私は喫茶店を探した。その場所に土地勘があった私は軽自動車でそこに赴く。

BGMにジャズが流れる。アメリカンな感じだが気品のある音楽性は日本の古典音楽と通じるものがある。

さて、私はメニュー表を開いたわけだが困った。パスタとカツサンドの絵が同時に飛び込んだ。腹に私の本音を考えさせる。

「どちらにしようかな」で決めよう。
バン、バン、バン!その指はカツサンドを指した。
 30代と思われる女性店員が「注文はお決まりですか?」と声をかけたが、ワタシは鳥のさえずりのように聞こえた。声に特徴のある私の低音ボイスにとってとても羨ましい響き声だった。
「カツサンドのサラダ付きを一つ。」
「セットになさいますか?」
「セット?」
失礼いたしますとメニュー表をペラベラと動かした。
「セットになさいますと、好きなジュースをお選びいただけます。」
頭がクタクタの私は糖分も欲していたのでジュースを選ぶ。悩ましいが果実ジュースが好きな私は
「レモンスカッシュで。」と聞こえるように言った。

店員さんが去って思う。女性として完全タイプだ。将来結婚するなら、あのような女性と一生を過ごしたいと煩悩がジャズ音楽と合間ってエロティックな感情がよぎったが、会社員として来ていることを自覚して目を醒ます。
「お待たせしました」というとカツサンドとレモンスカッシュが目の前にある。

海原の先にたどり着いた島で、秘宝を発見した気分だ。

レモンスカッシュをまず飲む。さっぱりしてレモン果実がピシャっと両頬に幸せをもたらす。炭酸がシュワシュワと弾けて初めて美味しさを自覚させる。

そしてカツサンド。自分の腹が求めていた料理だ。
美味しそう。焼き目が少しついた食パンに分厚いカツ、ソースがパンと野菜にからんで一つの料理となっている。
口にカツサンドを飛び込ませる。
んー!と体が反応した。
旨すぎる。パンのサクッと食感のあとに三元豚のジューシーな脂、野菜とソースが三元豚と混じって、ソースが甘辛くも優しい味で工夫を凝らした味が、香ばしさと美味しさと食感が混じり合った三重奏を奏でた。レモンスカッシュを飲む。三重奏が切り替わりバイオリンのような鮮やかで奥深い味がザビ調となり、私の体を盛り上げた。

食べ終わったあと、私は満足感に浸った。久しぶりだ、この感覚は。

ありがとう、元町喫茶店。君のおかげで会社員の自分ではなく、「綜」という自分のアイデンティティに還ることができた。
午後も頑張りたい。そんな気持ちにさせた料理だった。


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