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ゴミ漁りバトルしようぜ

僕の心のように凍てつく星を訪れ、初めに手をつけたのはゴミ箱。
当然、このように拾えそうなものはすべて調べるのがRPGの鉄則であることは、犬と猿と雉がかの有名な桃太郎の家来であるのと同じ類の定石である。
桃太郎の家来は犬、猿、雉。それ以上でもそれ以下でも成立しない。
不足していれば桃太郎はわずかなモヤモヤを感じることになるし、多すぎると騒がしくてやってられないと言うだろう。

ここにゴミクイーンが誕生するわけだが、
自分のことをゴミクイーンと呼ぶ心の準備はない。部屋のスミで命乞いをする準備もない。備えあれば憂いなし。備えなければ……?それはそのとき考えることにしよう。
全国のRPG経験者は必ずゴミ箱を漁る。この世界にもRPG経験者がいたのだ。現実でゴミ漁りするのは奇人だという風潮があるが、これでゴミ漁りは奇怪な趣味などではないと証明されたも同然だ。
旅の仲間からの評判は悪い。慣れれば皆ゴミの虜なのだ。それに条件を満たせば限定アイコンも獲得できる。
悪いことはない。世はこともなし。
快感。
この執着が、願わくば実を結ばんことを。
たぶんあの車掌も同じような触り心地のよさを誇るのではないか。
抱き締めた心の小宇宙がゴミ箱だったら?
誰もが考える最悪の状況?

濃厚なゴミ箱漁り体験を40分ほど。もしもRPGでゴミ箱漁りに手を出さなかった品行方正な退屈冒険者がいるなら、この楽しさを理解できず首を傾げる彼らにひとにぎりの幸福を分け与え、僕の善行コレクションに追加したい。

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