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パパと娘のお風呂ブギウギ

「いやーん!のばしょを、あわわでかくすー」

娘6歳は、自分のプライベートパーツが気になるらしい。僕が口を大きく口を開けてあくびなんかすると、「パパ、おくちの中もプライベートパーツだから、ひとにみせないでくれる?」と注意してくる。

プライベートパーツとは、おくち、むね、おまた、おしりといった場所。「自分のいのちにかかわる大事な場所」とか、
「自分だけの場所だから水着でちゃんと隠れるようになっている」とか、
絵本では、そんな風に説明されている。ウチの嫁さんの熱心な教育のおかげもあり、娘6歳は、ずいぶんと前からこのプライベートパーツへの意識が高い。

「いやーん、パパ、見ないで、へんたい!」とか言いながら、「ほんとうは、プライベートパーツは、かぞくであっても見せてはいけないんだよー!」とかいって笑いながら、クレヨンしんちゃんばりに、裸でウロついたり、お尻をふりふりして歩く娘。

娘なりに、このプライベートパーツという存在をこうやって消化しているんだろうなと僕は思う。なんだかわからんが、大人は胸や尻やおまたを一生懸命隠しているし、きっとそこは大事な場所なんだという事は理解しているし、そんな場所が自分にあることが受け入れられないというか、持て余している感じがする。

「いやーん」とか言いながら、身体をくねくねさせるようになったのは、最近のことだ。どこで覚えたんだよーと僕は突っ込みつつ、こうやって少しずつ、自意識のようなものを習得していくのかなーなんて思ったりする。

今はまだ、パパ、いっしょにお風呂に入ろう!と言ってくれるし、湯船で遊んだり、髪を洗ったり、身体も洗ってあげたりする。そうやって僕とお風呂に入る事をよろこび、泡で自分のプライベートパーツを隠したりして、はしゃいでいる娘。

パパの身体に赤いポツポツがある、白髪がある、ほくろがある、傷がある、と身体中を観察して突っ込んでくれる。親以外で、ここまで自分の身体に興味をもたれたことはない。こんなかわいい女の子のまっすぐな目が自分に向いているなんて、なんて有難い事なんだろう。

お風呂から出たら、タオルで身体を拭き、髪にタオルを巻き付け、身体中に保湿剤をぬってあげる。最初はこれがめんどくさいというか、とにかくもう焦る焦る。コロナやインフルエンザの恐怖があるから、湯冷めさせないように手早くやらなきゃいけない切迫感がすごい。にも拘わらず、娘はふざけてしゃがんだり、飛び上がったり、リビングにテレビを見に行ったり、水飲みたいと泣き出したり、、。まあ、時には怒鳴り散らしたり、力づくで押さえつけて身体を拭くようなことだってある。

そうなると、一緒に入っていても結局落ち着かないし、お風呂出た後も、自分のことはさっさとやって子供に備えなきゃいけないから、お風呂がリラックスタイムだった日々は、とうの昔に消え去ったといってよい。ああ、早く大きくなってくれて、自分の時間が来ないかなーと何度思ったか分からない。

「いやーん!のばしょは、プライベートパーツだから、パパぜったいに見ないでよー」と、今日もまた娘は身体をくねらせる。もう!動かないで!と叫びながら、ふと僕は、もうカウントダウンは始まっているのかもしれないと気付く。この自意識が固まってしまったら、パパは異物になってしまうかもしれない。異物が、自分の体に触れることを、この子は拒否するだろう。

今はおしゃべりな娘だが、「は?」、「うざ。」、「きも。」の3語しか言わなくなるのか。それさえいい方で、もう無言になったり、挙句の果てには、ドアから出てこない日もあるのだろうか。プライベートパーツを守るのは大事だが、その防衛意識がやがて敵意に変わらないことを祈るパパなのでした。

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