経済安保新法は民間を巻き込み「戦争する国づくり」が狙い

 今国会で成立した「重要経済安保情報保護法」は特定秘密保護法の経済版だ。
 その肝は「セキュリティ・クリアランス(SC)」と名付けた適性評価制度で、政府が指定した秘密情報を取り扱う人にその適性があるかどうか評価する仕組み。実は秘密保護法ですでにこの適性評価が導入されており、その対象は防衛省、自衛隊など公務員が9割超を占めていた。しかし経済安保新法では経済分野ゆえに多くの民間人が身辺調査されて評価を受ける。秘密保護法と一体運用で監視社会が強化される。
 身辺調査は内閣府に置かれた部署が担当する。内閣情報調査室や公安調査庁、公安警察などが調査に当たると見られている。5月11日付新婦人しんぶんに寄稿した東北大名誉教授の井原聡氏は「調査の基準が明らかになっていない」と前置きしたうえでこう指摘する。

10年監視対象
 本人に関しては犯罪及び懲罰の経歴、薬物の濫用及び影響、精神疾患、飲酒の節度、借金など経済状況など詳しい報告が求められる。犯罪歴は法務省から、薬物や精神疾患は病院などのカルテ収集、金融業者から信用状態を調査される。嘘がないか、変更がないかなどSCの有効期間10年にわたり監視の対象になる。
 さらに「政府を批判する運動や団体に加わっていないか、組合活動などでの言動も調査の対象になるでしょう」「承諾なしに家族(配偶者、事実上の婚姻関係と同様の事情にある者)父母、子及び兄弟姉妹、それ以外の配偶者の父母及び子、同居人の氏名、生年月日、国籍、住所を報告せよというのです」

目的外の使用も
 思想・信条・内心の自由の侵害に関わる徹底した個人情報が内閣府に収集管理される。個人情報保護法ではこうした調査内容は「要配慮個人情報」にあたり、その取扱いは特に配慮を要するとされている。しかし、目的外使用を監視する機関はない。
 米国には大統領インテリジェンス問題諮問委員会、連邦プライバシー・市民自由監視委員会、首席監察官、国家情報長官室自由保護管、全米アカデミーなど監視システムがある。経済安保新法にはこうしたシステムは欠落している。これでは労働者の権益は守られないというのだ。
 米国の強い要請で取り入れられたSC制度は「企業も関わる兵器の国際共同開発・製造・整備・売買、米軍と自衛隊の一体的な運用など軍事情報が洩れないため」という。そして「戦争をする国づくりための新法」と結論を述べている。
 経済安保新法の裏面にはこうした政府の最終目的があることを知っておくべきだ。

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