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歩行とヴリクシャアーサナ(立ち木のポーズ)

日ごろから、よく歩く方だと思う。身体にさほど負担がなく、適度な速度で周囲の景色が楽しめる。暑い日、寒い日、雨の日も時間帯、経路、身につけるものを上手く選べば、それなりに快適だ。今の職場も自宅から徒歩で行ける範囲から選んだ。

10年ちょっと前にヨガを練習し始めてからは、歩くための技術が高くなったと思う。ヨガの立ちポーズを練習することで、床面と足裏と他の部分の力の連動についての理解が深くなり、歩行の際に、足裏の前後、そして左右が均等な力で地面に着き、地面から均等な反力をもらうことができるようになった。

ヨガに出会う前は、O脚のため靴底は外へりが摩耗しがちだったが、徐々に左右均等に足裏が使えるようになり、靴も長持ちするようになった。O脚も改善されて、地面、足裏、膝、股関節、そして体幹の力の連動も無駄が少なくなった。

さて、ヴリクシャアーサナは、両足立ちの直立姿勢から、片方の膝を外に開いて、その踵を立脚の内腿の上端につけ、もう一方で、両腕を天井方向に伸ばすものだ。初心者段階から練習し始める基本ポーズである。とはいえ、膝を外側に向けて折りたたむ脚、立脚、骨盤、背骨(そして両端についている頭部と仙骨・尾骨)、胴体(その背面と前面)、腕と手の各部で異なる仕事が発生するため、一定時間にわたってポーズを保持するのは簡単ではない。

ヴリクシャアーサナの練習が歩行の改善につながるのは、両者とも、基本的に、片足で地面とコンタクトするためである。接地する方の脚(または立脚)と骨盤は直角をなして接合し、また位置はずれるが、背骨と骨盤も直角をなす。その一方で骨盤の左右の高さを揃え、ポーズを保持するために複雑な仕事が骨盤周辺で行われる。これが、歩行の際に均質な足の運び、そして骨盤から上の胴体から頭部までの安定に大きく役立つ。

また、ヴリクシャアーサナでは、胴体の背面の筋肉は全体的に下方へ向かい、前面は鼠蹊部から上方に胸の中心部の方へ向かう。そして頭頂を高く保ち、尾骨は下方へ垂れるようにする。よく頭の中で思い描くのは、頭頂から糸で錘を吊るし、正中線をそれに沿わせるイメージだ。これは、歩行の場合でも同様である。ヨガの練習によって仙腸関節の可動域が広くなってきたら、歩行の際、脚の前後の動きの支点を鼠蹊部に置くのではなくて、おへそ、鳩尾、胸骨中心部裏側へと少しずつ高くしていくと、臀筋群も効果的に動員できて、歩行の質が格段に上がる。

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