車いすラグビー世界選手権③(デンマーク・ヴァイレ)

今日は、車いすラグビーの現場について書きたい。
デンマークの地方都市ヴァイレの駅から歩いて15分くらいのところにあるDGI HUSETというスポーツアリーナの中にある2つのコートで試合が行われている。
試合については、もちろん世界選手権ということもあるだろうが、実況アナウンサー、音響の方々による観客のテンションの上げ方がうまい。
私が印象に残るのは、アナウンサーよりも音響さんの音や曲の使い方だ。
日本国内の車いすラグビーの試合だと、選手入場、選手紹介、試合中の演出、試合後のセレモニーが地味な印象を受ける。
だが、こちらでは、選手入場の時は火を使ったり、試合中でも点が入った時、いいプレーがあった時、選手交代で少し間空いた時には効果音を入れ、また、往年の名曲(例えば、アース・ウインド&ファイアのセプテンバー、マドンナのライクアヴァージン)のサビを短く入れたりして、観客もスタッフもみんなが楽しめるような空間作りを大切にしている。
このあたりを日本も取り入れてほしい。
もちろん、これって意味ある?という音もあるが(笑)。
あと、各試合後に必ずプレーヤーオブザマッチを決めて、地元の女の子などがプレゼンターとなりその選手に盾を渡している。
これも素敵だなぁと思う。

観客についても地元の子どもたちが見学に来たり、大人でもブラっと遊びに来ている。
この「ブラっと」が大事で、日本だと現段階では「今日さ、車いすラグビーを見ながらビールでも飲みに行かない?」とはなっていない。
でも、こちらではそれができるし、売店でもビールを販売している。
車いすユーザーを普通に街で見かけるし、会場内でも大勢いる。
障害のある子の家族も一緒になって会場を訪れている。
観客も選手や相手のプレーについてヤジったり、みんな自由。
この自由さを知り、英語が喋れるのであれば、こちらで暮らしてみたい。

一方、日本では、東京パラリンピックが終わって引き続きコロナ禍だったため、その後、国内での大会を観客を入れて実施できなかった競技団体も中にはあり(ゴールボール、パラバドミントンなど)、東京大会でその競技に興味を持った方々に試合、競技、選手の魅力を伝えきれなかったという点が非常に悔やまれる。
そのマイナス点を埋めていくのは並大抵のことではない。

こちらに来て感じているのは、みんながスポーツを楽しんでいること、スポーツが日常に溶け込んでいること、スポーツの楽しみ方を知っていること。
パラだろうが、健常だろうが、スポーツはスポーツだ。
車いすラグビーでも、ブラインドサッカーでも、パラ陸上でも何でもいい。
1日でも早く、日本でも普通に「明日、あの会場でパラスポーツ、見に行かない?」という会話が交わせる世の中になってほしい。
そして、例えば「池崎!気を抜いてパスミスすんな!」とか、障害のある選手であろうとその選手に対してヤジが出てこそ、インクルーシブな世の中の光景の1つといえるのではないか。
そこへ少しずつ近づいていってほしい。
日々盛り上がる車いすラグビーの世界選手権の会場にいながら、そういうことを考えた。

以下、昨日(12日)の日本勢の試合結果
日本52-47カナダ
日本58-37ブラジル

その他の取材試合
フランス49ー48アメリカ
イギリス55-50ニュージーランド

その後、今朝ユーチューブで確認したら、昨晩、フランスがイギリスを55-54で破る大殊勲!
昨日フランスはアメリカを撃破しており、イギリスまでも・・・
2年後のパリ大会に向けて急速に力をつけている。
世界の勢力図がまた変わろうとしている。


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