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CASE 11 ボブ・マーリー 悪性黒色腫(メラノーマ) ホクロは時として人生を豊かにし、時として邪魔になり、時として命を奪う

(この記事は3分で読めます)


(注意:途中「日本皮膚科学会ガイドライン」に一般公開されている画像を載せています。けっこうグロいので苦手な人は閲覧注意です)

はじめに

皆さんは体のどこかにホクロをお持ちでしょうか?場所、大小かかわらず、どこかしらにホクロがある人はたくさんいらっしゃると思います。

顔のホクロがチャーミングな芸能人もたくさんいらっしゃいますね!

一方でホクロをコンプレックスに考えている人もたくさんいますし、美容外科、皮膚科などで除去する人もいます。

そして今回取り上げるボブ・マーリーの持っていたホクロは、無惨にも彼の命を奪ってしまいました。


”ほくろがチャームポイントの人は人生が豊かになり、気にしている人はほくろが邪魔な存在となり、そして悪性のほくろは人の命を奪います。”

ローラさん


ではケースカンファレンススタートです!


CASE 11 ボブ・マーリー 悪性黒色腫(メラノーマ)


【症例】36歳 男性(1945-1981)

【主訴】右足の親指の痛み、爪の下の黒色変化

【現病歴】
<背景>
ジャマイカのシンガーソングライター・ミュージシャン。レゲエの神様である。「One Love」などの名曲を残す。

<発症エピソード>
若い時サッカーの最中に右足の親指の足を痛めた。その後古傷となり経過したが、ツアー中にも右足のを痛めた。傷(爪の下の黒色)が悪化するため病院を受診した。

【診断】
#悪性黒色腫 (メラノーマ)

【経過】
各種検査の結果、悪性黒色腫(メラノーマ)と診断された。

足の親指切除を勧められたものの宗教的な理由で切除を拒否した。その後皮膚移植を行った。

しかし1980年(35歳の時)にはすでに肺転移、脳転移、胃転移をともなっていた。

放射線治療も行われたが翌年に永眠(36歳没)。


参考 Wikipedia ボブ・マーリー

考察

<悪性黒色腫(メラノーマ)の一般的事項>

・メラニンを作る細胞(メラノサイト)が癌化
・日本では10万人に1人と少なめ。(白人は10万人に25人)
・皮膚だけでなく、目や口の粘膜、会陰部の粘膜にできることもある(下に画像あり 閲覧注意)
・日本人は足にできることが多い
・放っておくと脳、肺、肝臓、消化器、骨に転移する
・遠隔転移した時のそれぞれの生存期間中央値と5年生存率 2)
皮膚・リンパ節・消化管:12.5ヶ月 14%
   肺:8.3ヶ月 4%
肝臓・脳・骨:4.4ヶ月 3%
 →つまり、遠隔転移したら余命めっちゃ短い

・リスクは、白人・紫外線外傷・免疫抑制状態(臓器移植後やHIV患者)など
・診断は「見た目」と「ダーモスコピー(皮膚の拡大鏡)」「組織を取ってきて顕微鏡で観察」

日本皮膚科学会ガイドライン 皮膚悪性腫瘍ガイドライン第3版 メラノーマ診療ガイドライン2019


<ボブ・マーリーの場合>

ボブ・マーリーは足にできた悪性黒色腫ですが、彼は罹患率の高い人種、つまり白人ではありません。
おそらく昔の外傷が大きなリスク因子となったと考えられます。
ちなみにリスク因子の一つとして紫外線も考えられますが、ボブは普段裸足で日光に足を晒して過ごすことが多かったかどうかは不明です。

ボブの主治医は悪性黒色腫の診断後に指の切除を提案しています。しかしボブはそれを拒否しています。
切除の対象になるのは原発巣に留まっている場合、つまり遠隔転移がない場合のみです。
医師が切除を提案したということは、その時点では遠隔転移はなかったと考えられますね。
指を切り落とさずに中途半端に腫瘍を取り皮膚移植をしたとのことでしたが、やはり取りきれていなかったということでしょう。
それがやがて全身に転移し彼を死に至らしめたと推察されます。

宗教上の理由であれば止むを得ないと思いますが、彼が指の切除を行い根治していたらどうでしょうか?

彼が現在生きていたら78歳です!Haruくんと同年代で亡くなってしまうなんで悲しすぎる( ;  ; )

もし生きていたらその後も多くの名曲を残し、生の歌声でさらに多くの人たちを感動させてたことでしょう!


良性のホクロと悪性黒色腫(メラノーマ)を見分ける方法はあるのか?

おそらくこれが皆さんの関心ごとではないでしょうか?

悪性黒色腫の頻度は日本人はそんなに多くないのですが、こういう話をするとどうしても「自分のホクロは大丈夫なんか??」と気になってしまいます。
一応見た目であたりをつけることができます。以下ABCDEに当てはまりそうなら皮膚科に相談しましょう。

「あたらしい皮膚科学 第2版」清水 宏 先生著 P458より

「いびつな形」「境界が不明瞭」「濃淡がある」「拡大傾向で直径6mm以上(ガイドラインでは6>mmと記載)」「表面が隆起」

ボブと私からのメッセージ

・今や常識ですが、可能な限り紫外線を避けましょう

・一度自分のホクロをチェックしてみましょう


参考文献
1)日本皮膚科学会ガイドライン 皮膚悪性腫瘍ガイドライン第3版
2)J Am Coll Surg, 1995; 181: 193-201.
3)あたらしい皮膚科学 第2版 清水 宏 先生著



次回予告

次回は発明家エジソン糖尿病です。「糖尿病の合併症」を中心にしたお話です。

お楽しみに!


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