とても痛かった話

バチンッーー。

ふいに右手の薬指に強い衝撃を受けた。
やがて衝撃は痛みに変わる。その"震源地"に目をやると、2つの穴が並んで空いていた。

「ヘビか」。そう理解するのに時間はかからなかった。

似たような痛みを味わったことがある。数年前、仕事で北関東の某山林の、道なき道を歩いていたときのことだった。突然、右手の親指を銃で撃たれた。

いや、実際に撃たれたわけではない。だが何かに指を吹き飛ばされたような強い衝撃が、私の指に走ったのだった。眼の前を大きなハチが飛んでいった。恐らくスズメバチだった。

刺された指は次第に腫れていき、腫れはそのうち右手全体を覆うようになった。手は震え、ものも掴めないほど握力も落ちていった。

驚いた私は急いで下山し、車で病院に向かった。握力のない手でどうやってハンドルを握ったのかは覚えていない。とにかく必死だった。

命からがら到着した病院での診察は、1分で終わった。「ハチですね。塗り薬を出しておきましょう」。大げさな私は、これで診察が終わりかと露骨に肩を落とした。

ハチに刺された箇所はその後、耐え難い痒みに襲われた。だが薬を塗っても痒みはまったく引かなかった。ヤブ医者めと医師を逆恨みした。

それ以来、私は病院に行かなくなった。そして今、私の薬指は、あの時と同じような猛烈な痒みに襲われている。あの効かなかった薬を貰いに、病院へ行こうか。


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