現実逃避
祖父母の家に来ている。
小学生の頃は夏休みに1ヶ月ほど1人で泊まったりしてたんだっけ。
この家の事はなんでも知っている。
トイレットペーパーの在庫の場所もおじいちゃんの目薬をさす時間も。
ここにいるのは本当に心地がいい。
わたしは昔からこの家が大好きだった。実家とは暮らしぶりも違って、わがままが許される場所で、わたしの好きなものは常にストックされていた。
近頃、生活に息苦しさを感じる為この場所に避難しに来た。
「来ていい?とか聞かなくていいから、いつでもどれだけでも泊まりに来なさい。」
と言ってくれる人が暮らしている場所。
ここでの生活も3日が経った。
この街は程よい田舎で時間がゆっくり流れている。マンションは10階だけど全く高級な感じがしない。ベランダから外を見ても平日の昼時というのに歩いている人がほぼいない。
持ってきた数冊の本を読んだり、編み物で肩掛けバックの続きをつくったり、料理をしたり、時にはパソコンで調べ物や少しだけ勉強をしたりした。
朝は何時に起きてもいい、夜も何時に寝てもいい。
ご飯は好きなものをつくればいいし、お菓子だって好きな時に好きなだけたべていい。
無駄に色々詮索してきたりしないし、程よい距離感を保ってくれる。でも愛情はたっぷりで。
幸せだなあと寝る前に思う。
今日もいい日だったなと。
実家での暮らしは、せわしなくて、充実しているけど疲れてしまう。
1日を振り返る暇もなく眠りについてしまうような毎日だった。
いまは、毎日心に余裕があって、寝る前にゆっくり本を読むことが出来る。
一区切り読み終わって、目を瞑って今日を思い返す。
おばあちゃんと一緒に見たあの映画のことや、みんなで食べた夕食のこと、スマホの使い方もそろそろ覚えてくれただろうか。
明日はなにしよう。
時間があったらしたい、と思っていたことをひとつずつ消化していく度に心が満たされる気がする。
気が済むまでここにいようと思う。
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