読書記録①「豆の上で眠る」

   港かなえさんの作品は常にペースが物語に吸い込まれてしまうくらいどんどん続きが気になってしまいあっという間に読み終わってしまう。今回もそうだった。

主人公結衣子が幼い時に経験した実の姉の誘拐事件をきっかけに物語が動いていく。万佑子は病弱でありだからこそ親も結衣子よりも大切に丁寧に扱っていた。それが買ってもらう服のテイストだったり、音楽とスポーツといったわかりやすい対比で表現されているのも印象的だった。また、母が万佑子ちゃん探しのために実の娘を使って探す行為が幼い結衣子にとっては反抗することもできず、それに対して疑問を持たないのがまだまだ何も知らない小さな女の子をいいように使っているなと感じた。もし結衣子が誘拐されたらそれを万佑子ちゃんにはさせないだろうというのも悪く言えば差別的なものを感じた。母もわが娘がいなくなって気が気じゃないのはわかるがその点に対して不信感を抱いた。

最後の展開には頭がこんがらがった。
まとめると遥は誘拐した犯人の姉の義理の子供であり、誘拐した犯人はその姉の妹で、万佑子は本当はその姉の実の子で、結衣子とは血が繋がっていなかったということでいいのか。
経済的な理由で病弱だった万佑子を金持ちの家と入れ替えたのはよくないことだが、苦渋の決断だったと思う。しかも、その誘拐した理由をまだ幼い実の子と産んだ子に全てを打ち明けるのも残酷であるように感じた。でもそれを隠さずに人間の本能的なものを描いているのも港かなえさんらしいと思った。

二つの姉妹関係をいろんな形で描いていたり、最後の「本ものって、なんですか?」に関しては結衣子が本物の万佑子が万佑子ではなく、血も繋がっていないことに関しての呆れ?悲しみ?絶望?裏切られた感?みたいなものだと感じた。そしてその言葉を読者に語っていることから本当に何が何なのか意味が分からなくてそれを誰かに教えてもらいたい。教えてほしい。そんな感じがした。読者に考えさせるように最後をこの言葉で締めるのがすごいと思った。どんどん色んな想像が膨らみそう、、、。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?