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#6 アンドラ(コマ・ペドローサ山)

「アンドラ公国」。今まで全く意識したことがなかった国だったが、友人との会話の中で名前が出てきたので春期休暇を利用して行ってきた。目的はただ単に国へ行ってみるというよりも、コマ・ペドローサというスペイン、フランス、アンドラの3国の山々を望むことのできるアンドラ最高峰(2,944 m)の登山も兼ねてである。

朝9時ころバルセロナ空港に到着。空港の券売機にてアンドラ行きのバスのチケットを買おうと何度も試みるが、なぜか市内発のものしか出てこず結局空港発のものは買えなかったので、オンラインにて購入(往復60€)。無事に10時45分発のバスに乗り込み出発。

このバスはバルセロナ市の郊外で一か所停まったあと、アンドラに向けて直行。よくわからないがグーグルマップで見ると、なぜか遠回りしているようなルートを通りながら、3時間ほどでスペインとアンドラの国境に到着。少しだけ停まったが、5分もしないうちに出発。その後10分ちょいでアンドラの市内(Andorra La Vella)中心部に到着。

アンドラとスペインの国境(アンドラ側から)

アンドラについて簡単に調べてみたが、人口は8万人、面積は金沢市と同程度だそうだ。公用語はカタルーニャ語だが、みな普通にスペイン語も話していた(言語の観点からもカタルーニャの一部のような感覚)。政治体制は興味深く、共同元首はフランスの大統領及びスウルヘル司教であり、フランス・スペイン両国との均衡関係の維持の保障により成り立っているようだ。

市内の端から端まで1時間もかからないで歩けるような規模感だったので移動で疲れてはいたものの、とりあえず歩き回ってみた。天気はよく、2月にもかかわらず全然寒くはなかった。川沿いの梅の木が咲き始めていて、河津桜を思い出しながら散策していた。街の見た目はスイスっぽいようないかにも山間にある街って感じであった。

市内中心部を流れるLa Varila
少し登った丘の上から見るアンドラ市内(南西向き)

宿についてチェックインを済ませ、徒歩2分のところに観光案内所があると聞いたので行って情報を得ることにした。観光案内所の人にコマ・ペドローサに登れるか尋ねたところ、「この時期は雪が多いから、登るのは辞めたほうがいい」とのアドバイスをもらったが、宿の主人からは「しっかりした登山靴を履いていれば、問題なく登れる」と言われていたので、遠くの山を見ても雪は少なそうだったので、とりあえず行けるところまで行ってみることにした。

翌朝5時半に起きて、朝食を食べるために共同スペースへ向かったところ、同じ宿に泊まっているアルゼンチン人が何か飲んでいた。どうやら出稼ぎに来ているらしい。どうもみな夜遅くまで話していて騒がしいなと感じていたところ、宿泊者の大半は南米からの出稼ぎの人らしい。彼は朝食を作るシェフをしているそうだが、「毎日同じルーティンにうんざりしている」とげんなりした様子で話してくれた。

しばらく話をして彼が仕事へ出かけたので、私も荷物を整え、チェックアウトして、登山口のあるArinsalへの始発のバスに乗るべくCaldeaという温泉施設のある前のバス停に向かった。観光案内所の人が言っていた通り、6時50分くらいに始発のバスが来たので乗り込んだ(片道1.9€)。どんどん山道を登っていきながら、途中にある街で人をいくらか拾ったりおろしたりしながら20分ちょいでArinsalに到着。

カタルーニャ語はスペイン語と異なるし、スペイン語もよくわかるわけではないので、とりあえずカタコトのスペイン語で近くにいた人に道を尋ねながら、登山口に到着。山頂まで4時間程度との表記を発見。
早速靴ひもを結びなおして、登山を開始した。アンドラ市内18時発のバルセロナ行きバスに乗るべく遅くとも17時には下山したかったため、足早に登り始めた。登山開始時は暗かったものの、登り始めて30分くらいで周りが明るみ始めて、周りの様子がだんだんとわかってきた。よくわかっていなかったが、しっかり山の中で登山しているんだなということを認識した。

朝日が昇る直前の道中からの景色

登り始めて1時間もしないうちに、雪(正確には雪と雪が解けて凍った氷)が出てきたので、正直引き返すかどうか迷った。しかしながらこれまでの経験を踏まえて、雪や氷があっても斜面上でなければ問題はないとの判断をし登山を再開。加えて、直近で登ったと思われるトレースがしっかりついていたので、目印自体は雪で隠れていたとしても、登れるとの保証もあったので、とりあえずトレースがある限りは登り続けることにした。

コマ・ペドローサ国立公園のマップ

前日の夜冷え込んでいたのか、それとも標高がそれなりに高いからかわからないが、登山靴で雪を蹴ってもなかなか刺さらない箇所が多かったので、慎重に歩いて進んだ(アイゼンやピッケルを機内持ち込みできなかったのが痛かったなーと思いながら)。それでもComapedrosaの避難小屋の当たりに10時ころ到着。登山開始から約2時間半、悪いペースではない。

その後、本格的な登りが始まり岩斜面や雪道を登りながら歩いて進んでいくと、湖があるはずのところが凍ってしまっていて、いまいちどこからが湖なのかわからない(割れることはないと思うが、割れたら凍死だなーと思いながら、できるだけ端を歩いた)。

湖が本来あるところ(奥左側)

そんなこんなで歩き進めて、コマ・ペドローサ山頂手前の分岐に11時半ころ到着。雪はそんなになかったが、がれ場がそれなりに急だったので、分岐にバックパックを置いて登山を再開。20分ほどで山頂に到着。

コマ・ペドローサ山頂からの景色(南側)

山頂付近も雪はそれほどなかったものの、ところどころアイスがありアイゼンも履いてなかったので、慎重に山頂付近を散策。360度山に囲まれており、フランス、スペイン、アンドラの山々を四方見渡せるのはまさに絶景(おそらく西側の山はピレネー山脈かと)。この時期だからこその雪をかぶった山々の景色をいくらか楽しんだ後、下山を開始。
山頂から分岐までの下山が距離はないものの本来の登山道が雪(氷)に覆われていて使い物にならないので、周りのがれ場をゆっくりゆっくりとくだった(登りもそうであったが、登りは適当に登っても全く気にならないことが多いので)。氷や雪がところどころついており、傾斜もあったため肝が冷えたが、何とか分岐まで戻り、昼食代のスナックとバナナ、アクエリアスのオレンジ味を飲んでエネルギーを補給。

エネルギーを補給後、友人に勧められていたその分岐から5分ほどのところにあるスペインとアンドラの国境を探して散歩。雪がなかったためしっかりマークを確認でき、グーグルマップでも自分が国境に立っていることを確認したので、記念に1枚。もともとフランスとの国境も交えた3国の国境の交差点について勧められていたものの、結構距離がありそこまでの積雪の度合いも深刻そうであったため、ここにて今回はここで終了。

アンドラとスペインの国境(右側:アンドラ、左側:スペイン)

12時半くらいに下山を開始し、その後来た道を戻り歩き始めたが、行きとは異なり雪道が解け始めていたので、足場も安定していてかなり歩きやすくスタスタと歩けた。道中、日本語を勉強していたというアンドラ人が親切にもちょっとしたショートカットを教えてくれた甲斐もあり、14時20分にはバス停に到着し、14時35分発のバスに乗って市内へ戻った。
15時過ぎにバスターミナルに到着したが、特にアンドラ市内に未練もなく、バルセロナへの到着の時間が夜遅くなるのが嫌だったので、バス会社に頼んで1本早い16時発のバスに変更してバルセロナへ発った。

今まで名前しか聞いたことのなかった国、「アンドラ公国」。26時間ほどの滞在ではあったが、知識、経験ともに0か1の違いという意味では大きな意味を持つ訪問だったかなと。

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