【CLE】ネイラー3兄弟とMLB兄弟史
読者の皆様、毎日お疲れ様です。わるものです。
今回はネイラー3兄弟(主に三男のマイルズ)とMLBの兄弟プレイヤーの歴史を紹介していこうと思います。
① 長男・ジョシュ
長男ジョシュはかなり有名なので、細かい説明は不要でしょう。2015年にドラフト1巡目(全体12位)指名でマーリンズに球団。2度のトレードを経てガーディアンズに移籍し、MLB4年目となった昨季はレギュラー野手として本格開花。20HR&OPS.771の好成績を残し、チームの地区優勝に大きく貢献しました。
ジョシュを語る上で欠かせない出来事の1つは、やはり21年6月に負った怪我の話でしょう。ライトを守っていたジョシュは、前方のフライを追いかける際に二塁手のエルニー・クレメントと衝突し、右足首の靱帯を断裂。残りのシーズンの全休は当然のことながら、選手生命まで危ぶまれる大怪我でした。
怪我の後しばらくは病院で落ち込む日々を過ごしたジョシュですが、両親や弟の支えもあって気持ちを立て直し、無事復活を果たします。入院中に自分の人生や生き方について深く考えたと本人は語っていましたが、その影響か、復帰後は精神的な未熟さを感じさせるプレー(ストライク判定に逐一不快感を示す、バレバレの釣り球に簡単に手を出す、間に合いそうにないバックホームを試みて大暴投するなど)がすっかり鳴りを潜めました。
今年はリハビリとは無縁の良いオフシーズンを過ごせたようですし、オールスターに選出されるような活躍を期待したいですね。
② 次男・ボー
次男のボーは2000年2月21日生まれの22歳で、兄のジョシュとは3歳差があります。本名はノア・ネイラーであり、ボーはニックネームなのですが、登録名の後者で統一します。
幼い頃から兄と共に野球に打ち込んでいましたが、ちょうど3学年離れているので、2人が同じチームでプレーすることは殆どありませんでした。兄ジョシュが15歳の時、ボーイズのチームが試合をする上で選手がどうしても1人足りない事態が発生。そのチームのコーチを務めていた父のクリスは、弟ボーを助っ人として打席に立たせ、ボーは見事にヒットを放ちました。この試合がアマ時代の2人が同時にプレーした唯一の試合であり、ボーは今でも「3歳年上のリーグで打率10割(※1打数1安打)だったぜ」と家族の間で自慢しているそうです。
その後、ボーは2018年にドラフト1巡目(全体29位)指名を受けてガーディアンズに入団。2020年にジョシュがガーディアンズに移籍してチームメイトになると、2人で同じアパートに住んでいたそうです。パンデミック期間中にはスペイン語のオンライン講座を受講し、中南米系のチームメイトと日常会話をこなせるようになるなど、熱血漢の兄とは対照的にクールな性格であることが窺えます。
ジョシュが大怪我を負った2021年は、ボーも2Aで打率2割を切る大不振に苦しんでおり、ネイラー一家にとって厳しく辛い1年になりました。しかし翌22年にボーは見事復調し、2A/3AでOPS.890を記録する大活躍を披露。10月1日に待望のMLBデビューを果たします。
翌日にはフランコナ監督のはからいで、4番ジョシュ、5番ボーというスタメンが組まれました。スタンドで両親や一族がカメラを構えて見守る中、試合前のスタメン発表では2人の名前のアナウンスが連続。アマチュア時代ですら叶わなかった兄弟2人の共演に、両親は満面の笑みを浮かべて喜んでいたそうです。
結局MLBでは5試合の出場で8打数無安打、MLB初ヒットはお預けとなりました。今季はおそらく、ベテラン捕手のマイク・ズニーノ&若手捕手ボーの2枚体制でシーズンが進んでいくので、MLBでの出場機会が大いに与えられることになるでしょう。新人王を狙えるような大活躍を期待したいです。
③ 三男・マイルズ
三男のマイルズは2005年4月15日生まれの17歳。三兄弟の地元であるオンタリオ州ミシサガには、オンタリオ・ブルージェイズというカナダ最強の高校生クラブチーム(1996年設立、過去にジョーダン・ロマノ等10名のメジャーリーガーを輩出している)が存在し、2人の兄と同様、マイルズもこのチームに所属しています。
マイルズも例外なく野球の才能に大いに恵まれており、今年7月のMLBドラフトで指名を受けることが確実視(契約金等の条件で折り合いが付かなかった場合はテキサス工科大学への進学が内定済)されています。MLB公式のドラフト候補ランキングでは63位にランクインしており、仮にドラフト1位指名を受けた場合、J.D.ドリュー、ティム・ドリュー、スティーブン・ドリュー以来史上2組目の、3人揃ってドラフト1位指名を受けた3兄弟が誕生することになります。
現在チームではショートを守っていますが、公式のスカウンティング・レポートでは、スピード不足&強肩のためプロ入り後はサードに転向すると予想されています。打撃はジョシュ同様のパワーを備えるが、2人の兄ほど洗練されておらず、変化球に脆いとの評価。理想の完成形はオースティン・ライリー(ATL)のような選手でしょうか。
コーチ曰く、マイルズはよく喋るが自分のことをひけらかすことはしない性格で、兄2人が揃ってメジャーリーガーというプレッシャーをものともしていないそうです。本人もインタビューで、「3人共全く異なる野球選手であり、各々が自分の道を進むだけ」と前置きしつつも、「自分には2人の兄の経験を色々教えてもらえるアドバンテージがあり、3人の中で最も凄い野球選手になる素質がある」と自信をのぞかせています。
U18のカナダ代表にも当然選出されており、昨年開催されたW杯では、アメリカ戦で1打数1安打3四球、キューバ戦でHRを放つなど大活躍を披露しました。
④ ドラフト指名の可能性
ここからはマイルズの去就について考察していきます。
まず、マイルズがドラフト1位指名される可能性についてです。上述した通り、マイルズの現時点での完成度は兄達より低く、1位指名の望みは薄いというのが妥当な予想でしょう。ただ、マイルズが今春のリーグ戦等で活躍して評価を伸ばす可能性もありますし、毎年ドラフトでは予期せぬ指名をする球団が現れるので、可能性はゼロではないといったところです。
次に、順位は問わず、ガーディアンズがマイルズを指名する可能性についてです。ここ数年のガーディアンズの上位指名を振り返ると、完成度の高い大卒投手、俊足&中距離砲のショート、選球眼の良い外野手を指名する傾向にあります。要するに、ガーディアンズが育成を得意とするタイプの選手を集めているわけですが、残念ながらマイルズはいずれにも該当せず、指名の可能性は低いでしょう。
しかし、同じタイプの選手を指名し続けた結果、右の長距離砲プロスペクトが傘下にジョンケンジー・ノエルしかいない事態になっているのも事実です。マイルズを指名し、このタイプの選手を増やしておく戦略が採られてもおかしくありません。可能性は低いですが、期待しておきましょう。
⑤ 兄弟にまつわるMLB史
指名順位がどうであれマイルズのプロ入りはほぼ確実なわけですが、仮にマイルズがMLBに到達して3兄弟全員がメジャーリーガーになった場合、これはどれほど珍しい出来事なのでしょうか。
2022年シーズン終了時点で、兄弟揃ってメジャーリーガーになった事例は437件存在します。その内訳は、2人兄弟が417組、3人兄弟が18組、4人兄弟が1組、5人兄弟が1組です。流石歴史の長いMLBと言うべきか、3人兄弟以上が過去に20件も存在するんですね。
4人兄弟の1組はジャック、マイク、スティーブ、ジムのオニール4兄弟。彼らの両親は1874年にアメリカへ移住したアイルランド人であり、子供は男女合わせて12人いたそうです。ジャックとマイクはMLB史上初の兄弟バッテリーであり、ゲール語(アイルランドで使用される言語)でやり取りすることで相手チームを混乱させていたというエピソードが残っています。スティーブは1920年にインディアンスの正捕手として、1945年にタイガースの監督としてワールドシリーズを制覇した有名な人物です。
MLB史上最多となる5人兄弟は、エド、トム、ジョー、ジム、フランクのデラハンティ5人兄弟。ウィルという6人目の兄弟もプロ入りしましたが、残念ながらMLBには到達できませんでした。5人の中で圧倒的に有名なのが長男のエドで、主にフィリーズで外野手として活躍し、通算2596安打(打率4割超え3回)でMLB殿堂入りを果たしています。35歳で迎えた1903年のシーズン中、泥酔状態でナイアガラ川に転落して急死を遂げたそうです。
18組いる3人兄弟の中で最も有名なのは、やはり、ビンス、ジョー、ドムのディマジオ3兄弟でしょう。56試合連続安打という不滅の記録を持つレジェンド、ジョーだけでなく、弟ドムも7度オールスターに出場した名選手であり、3人で通算4853安打を記録しています。ディマジオ3兄弟はポジションが3人共センターだったこともあり、チームメイトになったことは1度もありませんでした。
⑥ 3兄弟揃ってチームメイトの事例
3兄弟が揃ってチームメイトとなった事例はMLB史上3件しか存在しません。ライト3兄弟(1876年、ボストン・レッドキャップス、現ブレーブス)、アルー3兄弟(1963年、ジャイアンツ)、クルーズ3兄弟(1973年、カーディナルス)です。
フェリペ、マティ、ヘススのアルー3兄弟は、1963年9月15日の試合で、3兄弟で外野3ポジションを同時に守るというMLB史上初にして唯一の記録を打ち立てました。末弟ヘススがMLBデビューを果たした同月10日の試合では、監督のはからいで3兄弟が連続して打席に立ったそうです。
長男フェリペは最多安打を2度獲得した名選手で、引退後はジャイアンツ等で2000試合以上監督を務めました。マティも最多安打と首位打者を1度ずつ獲得した大スターであり、キャリア末期の1974-76年は来日して太平洋クラブライオンズ(現西武ライオンズ)でプレー。ヘススもレギュラー級の選手として活躍し、3兄弟での通算5094安打はディマジオ兄弟を上回っています。
なお、フェリペの息子、モイゼスもMLB通算2134安打の強打者であり、同じく息子のルイス(モイゼスとは異母兄弟)はMLB未経験ながら2020、21年シーズンにメッツで監督を担当。甥のメル・ロハスはMLB通算525登板のリリーフ投手、そしてその息子は昨年まで阪神タイガースに在籍したメル・ロハスjrと、アルーの血は野球に特化しているようです。
ホセ、トミー、ヘクターのクルーズ3兄弟は、1973年3月23日のオープン戦で、3人が外野3ポジションでフル出場し、かつ打順で1-3番を打つ(1番RFトミー、2番LFヘクター、3番CFホセ)という珍記録を達成しました。ただ、アルー兄弟とは異なり、公式戦で3人が揃うことは無かったようです。
長男のホセは主にアストロズで通算2251安打と活躍し、球団の永久欠番入りしています。トミーはMLBでは振いませんでしたが、1980年に来日して日本ハムに入団。ベストナインやオールスターに選出されるなど、NPB通算打率.310/863安打と大活躍しました。ヘクターはMLB各球団を渡り歩いた後、1983年に読売ジャイアンツで1年だけプレーしています。
⑦ まとめ
話が長くなってしまいました。以上を総括すると、マイルズがドラ1指名を受けた場合は、史上2組目の3人揃ってドラ1指名を受けた3兄弟。ドラフトやトレード移籍によってガーディアンズに3兄弟が揃い、試合で共演した場合、史上4組目の3兄弟チームメイトということになります。
ちなみに、ネイラー兄弟の母・ジェニスさんはジャマイカ人であり、ネイラー兄弟は皆黒人の血を引いています(チームメイトのトリストン・マッケンジーも親がジャマイカ人であり、ジャマイカ系の選手が2人揃うのは珍しい)。ライト兄弟はアメリカ、アルー兄弟はドミニカ、クルーズ兄弟はプエルトリコの出身なので、実現すれば、ネイラー3兄弟が史上初の黒人3兄弟チームメイトということになります。
いずれにせよ、歴史的な出来事であることに間違いは無いので実現に期待したいですね。
今回の記事も最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。
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