【CLE】アメッド・ロサリオ放出の意義
読者の皆様、毎日お疲れ様です。わるものです。ご無沙汰しております😇
投手陣の離脱が相次ぎ、チームの状態も中々上がらない中、突然の朗報が舞い込んできました。
チームの正遊撃手、アメッド・ロサリオがドジャースに放出されたのです。結論から言うと、ロサリオの放出自体がチームにとって大きなプラスであり、トレードは大成功だと思っています。どうしてこのような結論に至るのか、背景がややこしいので、順を追って説明しようと思います。
① アメッド・ロサリオとは
ロサリオはドミニカ出身の遊撃手で、キャリアはメッツでスタートしました。プロスペクト時代は走攻守全て揃ったスーパースター候補として評価が高く、2017年にはベースボールアメリカのプロスペクトランキングで4位、MLB公式ランキングで2位に君臨。同年21歳の若さでMLBデビューを果たしました。
しかし、前評判通りだったのは卓越したスピードだけで、デビュー後は、ゴロ偏重で長打に乏しい打撃スタイルと、重度の守備難が露呈してしまいます。メッツでは数年に渡ってレギュラー起用されましたが、大きな改善は見られず、20年オフにフランシスコ・リンドーアの対価としてガーディアンズに放出されました。
ガーディアンズでは、チームが目指すスピード&コンタクト重視野球の象徴として期待され、2番打者で起用され続けることになります。しかし、セイバーメトリクス全盛のご時世に、OPS7割程度の打者を2番に置く采配は適切と言い難く、ファンや記者からは常に疑問を呈される存在でした。
昨シーズンは突如守備が改善され、fWAR2.5/rWAR4.2の立派な成績でチームの地区優勝に大きく貢献。調停では年俸780万ドルを勝ち取り、満を持してFA前最終年の今シーズンに挑みました。しかし、今季は開幕から打てず守れずのサッパリで見事に不良債権化。wRC+86と物足りない打棒に加え、守備ではDRS-15/OAA-16と壊滅的な数字を記録しており、放出したいが引き取り手が見つかりそうにないというレベル(fWAR-0.1/bWAR-0.3)でした。
② チャンスを窺うプロスペクト達
フランシスコ・リンドーアの幻影を追い続けるガーディアンズは、傘下に大量のSSプロスペクトを抱え込んでいます。その中で、既にMLBに到達しているのが、タイラー・フリーマン、ガブリエル・アリアス、ブライアン・ルキオの3名です。
3名共にMLB公式のTop100プロスペクトランキングに名を連ねる超有望株で、フリーマンはヒットツール、アリアスはパワー、ルキオはコンタクト&スピードが高く評価されています。詳しくは過去の投稿をご覧下さい。
ロサリオのSS固定は、有望な彼らが出場機会を殆ど得られないことを意味します。フリーマンは3割近い打率にも関わらず週1度しか出場できず、アリアスは慣れない外野守備への適応に苦しみ、ルキオは3Aで塩漬けにされていました。
また、現在2Bのレギュラーであるアンドレス・ヒメネスも本職はSSであり、WBCベネズエラ代表やウィンターリーグではSSを務めています。SS時代の守備指標も圧倒的にロサリオより良好でしたが、長幼の序なのか、ヒメネスの方が2Bに転向を強いられていました。
ロサリオの存在が4人の有望な若手の成長をブロックしていた、ということが理解頂けたかと思います。
③ 苦し過ぎる先発事情
昨年、シェーン・ビーバー、トリストン・マッケンジー、カル・クオントリルが、3人だけで577.2イニングを消化し、強力な先発3本柱として地区優勝への大きな原動力となりました。
しかし、今季は3人共怪我に悩まされ、7月末の時点で僅か194イニングしか消化できていません。ビーバー/マッケンジーは60日IL入りしており、ほぼ今季絶望状態。クオントリルは10日ILですが、今季は炎上する登板が連続しており、復帰後の好投は望み薄でしょう。
先発ローテに生じた大きな穴を何とか埋めているのが、ローガン・アレン、タナー・バイビー、ギャビン・ウィリアムズのスーパールーキー達です。昨季2Aで無双していた彼らはMLBでも実力を遺憾無く発揮しており、特にバイビーは89.2回/防御率3.11/91奪三振と新人王争いに参戦し得る成績を残しています。
しかし、この3人だけでは穴は埋まらず、5日おきにザビオン・カリーが先発してブルペンデーを行っている非常に苦しい状況です。更に、3人のルーキーはいずれも昨季はマイナーで110-130イニング程度しか投げておらず、おそらく9月上旬頃にはイニング制限でシーズンを終えることになるでしょう。そうなると、もう投げれる先発投手がいません。3Aの先発陣は連日炎上しており、誰も頼れません。
誰でも良いからとにかくイニングを消化できる投手が欲しいというチーム状況であったと言えます。
④ トレードの詳細
ロサリオの対価は、ノア・シンダーガードです。シンダーガードとロサリオの今季残り年俸(468万ドル/281万ドル)の差額187万ドルはドジャースが負担するので、実質1対1の等価交換になります。
シンダーガードがメッツのエース格として100マイルを連発し、Thorの愛称で親しまれた時代も今は昔。2020年に受けたトミー・ジョン手術の後は球速低下が止まらず、今季の速球の平均球速は92マイル、防御率7.16と見る影も無い状態に陥っています。絶賛売り出し中のエリー・デラクルーズにMLB初HRを打たれたのもシンダーガードです。
ロサリオ同様、引き取り手を見つけるのが非常に難しい状況であったと言えるでしょう。
⑤ トレードの評価
トレード以来、様々な記事に目を通してきましたが、上記事のようにガーディアンズの動きを疑問視するものが大半でした。”今季FAのロサリオ放出は理解できるが、対価が防御率7点台のシンダーガードなのはあまりに酷い“というのが低評価の主な理由です。今回のトレードを第3者目線で見るならば、僕も同じ意見を持ったと思います。
しかし、CLE番記者のザック・メイセル氏を筆頭に、現地ファンも含めて、普段からガーディアンズの試合を見ている人々は大半がウェルカムな姿勢を示しています。
その理由はやはり、“平凡な打撃成績&酷い守備成績のロサリオを、無条件に、プロスペクト達をロクに試すこともせず、2番SSで2年間に渡って固定していたことへの閉塞感”がとてつもなく大きかったからだと言えるでしょう。上に掲載したメイセル氏の記事に印象的な一節があったので、引用しておきます。
ロサリオが去った今、フリーマン、アリアス、ルキオの3名にはチャンスが均等に与えられ、熾烈なレギュラー争いが始まることになるでしょう。誰がこの競争を勝ち抜くのか予測するのは困難ですが、少なくとも、3人全員がロサリオのパフォーマンスを下回るということはあり得ません(そもそもフリーマンはfWAR0.5/rWAR0.4なので、現時点で既にロサリオを凌駕している)。
要するに、ロサリオの放出そのものが、ファンが長らく待ち望んでいた育成とコンテンドの両立の幕開けであり、対価が誰であろうが放出を達成した時点でこのトレードは成功だということです。これが僕の意見、今回の投稿の主張になります。
ちなみに今年のシンダーガードですが、滅多打ちにされているものの、四球は殆ど出していません(四球率3.7%はMLB上位2%の値)。曲がりなりにも昨年は134.2回/防御率3.94を記録していますし、微修正を経てイニングイーターとしての姿を取り戻す可能性は十分に存在するでしょう。
複雑で長くなってしまいましたが、いかがだったでしょうか。まずは何より、新しい時代の到来に乾杯🥂ですね。
今回の記事も最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました‼️
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