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事実婚を証明する方法について

以前、友人の離婚の相談に乗ったことがあった。相談といっても愚痴をきいただけなのだが。夫婦のあいだに会話がない、食事も寝室も別、趣味も別々、相手が何を考えているのかわからない、お互いに収入がどれくらいあるのかすらわからない、これはもう結婚生活としては破綻しているのではないだろうか、といったような、そんな話だった。その話をききながら、私は「あちらのカップルは法律上は結婚しているけれども、結婚の実態がない。一方われわれは法律上は結婚していないけれども、結婚の実態はある。というより、われわれには結婚の『実態』しかないのだなあ」と思ったものである。

事実婚カップルは、夫婦であることをどうやって示すのか。事実婚カップルは婚姻届を出していないので、パートナーと既婚であることを示す証拠に乏しい。しかし、場面によってはそういう「証拠書類」が欲しいときもある。

この問題を解決するために、われわれは住民票に「未届」の夫婦であると記載してもらうことにした。私と夫は同一世帯(住居と生計をともにしている)であり、2人とも同じ住民票に記載される。このとき、続柄が「夫(未届)」あるいは「妻(未届)」であれば、事実婚夫婦であることが示せるという寸法である。

われわれの場合、同居を始めた当時に私が圧倒的に家計の大黒柱であったこともあり、世帯主が私、夫が「夫(未届)」として住民票の世帯合併を届けることにした。

なお、世帯の中の誰が「世帯主」になるべきかについて、法律上の定めはない。住民基本台帳法によれば「主として世帯の生計を維持する責任者」ということらしいが、実態としては収入にかかわらず誰がなってもよい(ちなみに世帯のなかに国民健康保険の加入者がいる場合には、世帯主には保険税の納税義務が生じる)。また、夫婦が必ず同一世帯でないといけないわけでもない。夫婦で世帯を分けて、それぞれ世帯主ということにしてもよい。最近では、特別定額給付金の振り込み先が「世帯主の銀行口座」であるということで物議を醸していたが、世帯主とは実際的には、役所相手の諸手続きを世帯を代表しておこなう立場だと理解しておくとよさそうに思う。ともあれ、われわれはこの「世帯」制度を、事実婚の証明に利用することにしたというわけである。

京都市の某区役所では、世帯員の続柄を「夫(未届)」として住民票の世帯合併を行いたい旨を申し出ると、世帯合併のための書式のほかに、夫婦であることを「未届」とする旨を確認して届け出る書式を出してくれた。聞くところによると、本人(たち)の同意なく勝手に「夫(未届)」「妻(未届)」として届け出られることを防ぐために、そのように一筆書く書式を準備しているということだった。一理ある。書類を2通出して、スムーズに手続きは終わった。

そのほかに、親族だけを招いておこなった結婚式での宣誓書(われわれだけでなく、互いの両父親のサインも入っている)や、記念の集合写真も「夫婦」であることの客観的証拠として効力を持つ場面があった。たとえば、職場の労働組合にコピーを出したら、結婚祝い金をもらうことができた。

夫とはそのほかの色々な決め事について、いずれ公正証書を作ろう、と当初相談していたのだが、何だかんだで今のところは先送りになっている。今後、家など大きな買い物をしたり、子どものことで決めごとが必要になったときには作ることになるのかもしれない。いずれにせよ、事実婚の夫婦であることの証明は、だいたいは住民票で事足りるようである。

#事実婚 #夫婦別姓 #住民票

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