押されて乗り込む満員電車 扉の窓にへばりつく 震えるスマホ取り出せば 父さん母さん…
【プロローグ】 JR新宿駅のガード下から歩いて20分ほどのあたり、北新宿と呼ばれる一角に細…
月曜日の昼時のカフェは満席に近かった。それでも、運のいいことに、窓際のテーブルから客が…
Part 1 仮面のロマンス 夕暮れ時の海岸沿いに緩いカーブを描いて伸びる国道に、車は少なか…
第1章 アンコールは『スプリングソナタ』の終楽章だった。日曜日のマチネーだから、終演は…
第一部 ある男の交響曲 第1楽章 高校1年生の少年は、色白の頬を少し赤らめていた。授…
砂井田杏奈は、客席で公演の開始を待っていた。 ここは、オーケストラ用の大ホールではな…
第一景 兄は詩集を読みながら、口ずさんでいた。隣でスマホを弄っていた妹が訊いた。 「…
【前奏曲】 土曜日の夜の新宿二丁目で、吉川祥治は浜名紘一と出会った。 元号が昭和から平…
みなさん、こんにちは。吉川祥治です。昭和の半ばに生まれ、3年ほど前に現役を退いて、隠居…