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GIGAスクール構想で何をしたいのか

    検証の対象にすべきは、都教育委員会だけではありません。今年4月に始まった「GIGAスクール構想」も同じです。「考える先生」を目指して毎週、公立中学校に通っている学生が先日、現場の状況を報告してくれました。
 学生が目にしたのは、各人に1台ずつ貸与された端末が「教材としてではなく遊具としても活用されている」現状です。授業中に先生の目を盗んで、タブレットでゲームをしたり、YouTubeを見ていたり。こっそりとワイアレスのイヤホンをして音楽を聴いている生徒がいれば、音量を消し忘れ、大音声で動画を再生した生徒もいたとか。これに対して、先生は「さらっと流していた」だけに、学生は驚きを禁じ得なかったようです。

 こうした話は、他の小中学校でも聞いていました。予想した通りです。そもそも児童生徒はもちろん、先生ですらGIGAスクール構想の意義を理解できていたとは思えなかったからです。
 理解されていないであろうことは、デジタル庁などの関係省庁が今年7月に実施し、9月に発表したアンケート(回答数21.7万件)の自由記述からも読み取ることができます。

「紙ではなく、わざわざタブレットにしなければならないことについて、納得できる理由を広めること(が重要だ)」
「なんでタブレットを使う必要があるのか、理由がわからない」
 
 わからないのだから、生徒はタブレットで遊びます。とりあえず触っていれば「ITスキルが向上する」と見ることもできるから、先生も注意に困るでしょう。両者とも、タブレットで何をしなければいけないのか、目標すら共有できていないのですから。

 もともと、2019年12月19日に萩生田文部科学大臣が出したメッセージが難解でした。
 「Society5.0時代に生きる子供たちにとって、PC端末は鉛筆やノートと並ぶマストアイテムです。(略)子供たちが変化を前向きに受け止め、豊かな創造性を備え、持続可能な社会の創り手として、予測不可能な未来社会を自立的に生き、社会の形成に参画するための資質・能力を一層確実に育成していくことが必要です。その際、子供たちがICTを適切・安全に使いこなすことができるようネットリテラシーなどの情報活用能力を育成していくことも重要です」

 難解、というより、このメッセージは空っぽ、何も言っていません。でも、多額の税金を投入して、取り組みを始めました。児童生徒のどんな力を伸ばすために、学校の高速大容量インターネット環境整備、児童生徒1人1台の学習端末導入を実現したのでしょう。文科省は一刻も早く、目的と目標を示してください。(マツミナ)

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