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水煙~火炎のごとく~

【記録◆2023年11月13日】②

 羽衣のように広がる分岐瀑が好きです。
 昇龍のようにみえる直瀑も好きです(かならず「龍の眼」が在ります)。

『岩戸の瀧』からの帰り、
「御船の瀧まで行けなかったから、少しも歩いていない」と気づき、
『あきつの小野公園』に寄って、固まった脚を動かそうと決めました。

「先月には、うねる樹根に阻まれた遊歩道の先へ、反対側から行けないか」と考えたのです。これまでの2回の訪瀑時には行けなかった観瀑台がそこにあって、『蜻蛉の瀧』を左側から見られるので。

 とはいえ、見える部分は限られているらしいから、行けなくても心残りはありませんでした。今回も、公園入口の地図と実際の道を何回か見比べて、「ほぼ腕の力で坂を上るのなら、全容が見られるほうを」と、いつもの道を選んだのです。
 右側から見る『蜻蛉の瀧』は、優美な白龍のようだから。

 そう。先月に行ったばかりで、今回は3回目になるから、坂を上った先で「瀧の神さま、こんにちは」と挨拶をしたら、すぐ引き返すつもりでした。

 ところが、瀧が龍だというなら、きょうの昇龍は何柱なのか……。
 数の多さに圧倒されて、そこから動けなくなりました。

 数えやすいよう、まず、最下段の観瀑台から撮った写真を載せます。

蜻蛉の瀧(雨後)

 最初に見たのは、次の写真の姿でした。

見たことのない水量

 落ち口あたりを見て「双龍」と呟いたけれど、そんな数ではありません。

火口のよう

 のぞき込むと、いったん岩肌にまで広がった水も集めて、中ほどの滝壺は上方へ垂直に噴き上げようと力を溜めているかのよう。
 水しぶきで真っ白なのに、火口のようで怖い、と感じました。

 とうてい引き返せず、龍神の祠まで上がりました。

龍神の祠から(落ち口)
龍神の祠から(すぐ横)
龍神の祠から(見下ろして)

 落ちていく先で水煙がたなびいています。

 そこからも引き返せず、上の滝壺まで上がりました。
 昨年に「一筋」、先月に「二筋」だった流れが数えられなくなっていて、水が溢れそう。落ち口にではなく、こちらの岸に。

「最下段の観瀑台からは、どんなふうにみえるだろう」と想像するだけでは足りなくて、細い筒のような螺旋階段も下りました。

 前回は杖をついて一段ずつ下りるのに時間と脚力が要ったけれど、今回は「舞うように下りること」を択びました。身体の使い方を変えたのです。
 二本の杖をまとめて左手に握り込み、右手は階段の手すりに触れながら、透明な管の内部を旋回しつつ流れ落ちる水のように。

 舞うときには体重を足にかけません。次に向かう先へ送り出します。
 以下の写真だと、すでに右方向へ移っています。

61歳のとき

 螺旋を下りるときも、体重は重力に呼応して下方へ向かったのでした。

 真横から撮っていますが、滝壺は消えてしまったかのよう。
 水が留まってこそ滝壺があると分かるのです。

 黒い岩肌に沿って水煙が広がっていきます。
 水が火を噴いているかのよう。

落ち口を見上げて
中ほどを見上げて
中ほどの滝壺へ落ちていく
滝壺(写真だと位置が判る)
右から撮った滝壺
いちばん下の滝壺へ

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