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投石の瀧

【記録◆2023年4月28日】

 自作の支持具(材料費千円)で「COGY(足こぎ車いす)」を固定して、1日も欠かさず漕ぎ続けていたら、脚の筋肉が2倍(目視)になりました。

 身体障害認定を受けたとき、「絶対に転ばないよう気をつけてください」「ハイキングには行かないでくださいね」「進行性の障害なので、両脚とも手術が必要です」と言われたのに、16年後の現在、寿命が尽きているはずの両脚に上半身と命を載せて、COGYユーザーになるまでは行けなかった所へ歩み入っています。

「治らないと診断されたら余計な加療で身体を傷めたくないので、病院には11年前から行っていない」と書いていましたけれど、脚に関してだけなら、16年前から行っていません。

 命が転がり落ちないよう両脚には魂だけ載せて、上半身のおおかたは腕に載せています。日常生活の全てが筋トレより厳しいため(しかも生活なので怠ける余地がなく)、「移動には適さないとされている人間の腕」なのに、長い時間をかけて現状に適応してくれました。

 ヤングケアラーだった長い年月に、「痛い」「しんどい」といった言葉は一生分を聞いたので、自分の口から発しようとおもいません。辛さを周囲に伝えようとすると、自分の耳が最も近くで聞かなくてはならないから。

 
 ひとの居ない山道では、日常生活とは違って辛い動きをしなくていいのが楽で楽しいと感じます。また、足に触れるのが土だと身体は楽なのです。
 自分にできる動きしかしなくても、観察をされたり感想を伝えられたり、といった煩わしさとも無縁でいられます。

 帰宅して脚を温め、固定した「COGY(足こぎ車いす)」を漕いでいると「痛みの原因となる物質や疲労物質」が速やかに流れ去り、負い続けている荷が少し軽くなるのです。

 前回(千尋の瀧へ行った4月3日)は、「ひと足ごとに命を載せている」と意識しなくてはならないのが修行のようでしたから、今回は行きやすい瀧を選びました。
「山奥のハイウェイ(信号のない国道)」から林道を使わず行ける先です。

 しかし、県道に入った途端、ガードレールと対抗車線が消えました。
 山の斜面に直立する杉の根元は、間伐された樹で埋め尽くされています。

 木材に変えられた大量の樹が豪雨のとき突き通す勢いで流れてきたら、と考えずにはいられなかったけれど、どれもが美しい苔に覆われていたので、これまで動かなかったのだと判りました。

「市街地に近い瀧」の周りには人工物が多いため、行ってみたいとはあまり感じないのですが、瀧そのものは常に美しく、流れる水に添えられる物体は存在しません。

『投石の瀧』は人家のそばにあったから瀧だけを目指したのに、意外にも、「神気に満たされた人間の魂」が場を創っていると感じました。

 神域を清浄に保とうとする心は、身に神気を呼び入れるのではないか、とおもえたのです。
 ここは、ひとの手が入っているからこそ美しい場となっているのでした。

白馬寺の奥へ

 駐車した所からは、水分(みくまり)神社と白馬寺しか見えないので、
「どこへ進めばいいのか?」と少し考え、「建物の横の隙間か」と気づいて白馬寺の横に入ってみると、ずっと奥まで神域が広がっていました。

瀧まで参道が続く

 大きな滝壺から流れ出た水は、滝野川へ向かいます。

滝壺から渓流へ
鳥居の正面

 鳥居の中央は神さまの通り道だから、「撮らせていただきます」と伝えて膝をつき、「ありがとうございました」とお礼を伝えて立ち上がりました。

鳥居をくぐって

 天女が舞い降り、手に捧げ持ってきた玉石を滝壺に投げ入れ、五色の雲に乗って天へ上がっていったという伝説が、「投石の瀧」の名の由来です。

晩春の紅葉

 4月末なのにモミジが秋のような色なので、理由を調べてみました。
 春に出る新芽から秋に散るまで葉の色が赤い品種もあるそうです。

投石(なげし)の瀧(15メートル)
落ち口
中ほど
下のほう
滝壺

 瀧の左側には、『衣掛杉』という巨木があります。
 こちらは、空海が修行の際に衣を掛けた、という伝承が名の由来。

樹齢1000年の衣掛杉
衣掛杉の前から
水面の傍から

 大きな滝壺の右側には回れないため、水面(みなも)へ続く石段を下りて最下段から撮りました。
 手すりがなくて急なので、両側で杖が石段に着いていなかったら、足先を次の段に移すのは怖かったとおもいます。

上のほう
中ほど
下のほう
神域を囲む樹

 次の写真の下端中央が、水面へ向かって下りる所です。

帰りに振り返って


[小杉谷の瀧へ]

『投石の瀧』は東吉野村ですが、来た道を戻って国道に出ると、御杖村まで「山奥のハイウェイ(信号のない国道)」を走れるから、『小杉谷の瀧』へ行きました。小さな瀧なので、寄り道に加えなかったら行かないままになると考えたのです。

 御杖村の県道は畑や田んぼの間を通っていたため、山の端を走るときにも反対側は開けていて、遠くまで見渡せるのでした。

 それでも県道をタヌキが歩いていて驚きました。夜行性のタヌキを昼間にじっくりと見たのは初めてです。車が近づいても姿を隠そうとしないから、撮ろうとおもえば写真も撮れたでしょう。

 前日も晴天だったため瀧の水量は少なかったけれど、岩を下っていく細い流れが四つ。
 大雨の後だと川幅いっぱいに水が落ちるのでしょうか。

小杉谷の瀧(4メートル)

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