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丹生都比売神社

【記録◆2024年1月17日】

 大和盆地から奈良県最南端までは車で何時間かかるか分からないけれど、「和歌山県の最北端は、大和盆地から車で数分なのでは」と気づきました。

 若草山や高円山や龍王山や天香久山で「国見」をするとき、南西のほうで「たたなづく青垣」となっているのは、たぶん和歌山県の山々。

 16日に読んだ本で、『丹生都比売(にうつひめ)』という「国難を退ける女神」の名を知り、御祭神となっている神社を調べたら、和歌山県に多いと判りました。『丹生都比売神社』は紀伊国一之宮です。

 場所が『高野山』の中腹で、道路が凍結することもあると知り、「いまの季節は辿り着けないかもしれない」と考えたけれど、その日は午後が晴れで翌日の予報も晴れだったから、行ける所まで行こうとおもったのでした。

『紀の川』に沿って走り、左折して南の山へ入って行くと、平野がどんどん遠くなっていきます。道幅が狭く、ハンドルから手を離せず、ところどころガードレールが無い、という点は、「瀧へ続く道」のよう。

 でも、まったく違うのです。「怖さ」を感じません。
「ここまで進んできたことを後悔しそうになる怖さ」を。

『丹生都比売神社』は世界遺産だからか、林道のような部分も路面が美しく整備されていたのでした。

 ずいぶんと高い所まで来た、とおもった瞬間、平野が現れて驚きました。
「下ったわけでもないのに、なぜ麓に出たのか」と混乱するほど、そこは、山中に見えなかったのです。広がっている田んぼが棚田ではなかったので。

 帰宅後に地図を見ると、そこだけが小さな盆地になっていました。
 標高は450mあたり。古くは、「天野原」とも呼ばれたそうです。

 大きな川は遠いから、山の豊かな湧き水が稲を育むのでしょう。
 神社の手水舎にも、「この水は湧き水」と知らせる張り紙がありました。

ここから神域

「外鳥居」の下に立っています。

輪橋から中鳥居

『御祭神のお渡りになる神橋ですが、当社では御祭神のおかげを頂くために参拝者も渡ることができます』とのこと。でも、『凍結による転倒防止の為 3月12日まで冬期間閉鎖中』となっていました。

輪橋が架かる鏡池

 きょうは陽が差しているけれど、池の水面は凍っていて、橋の横の土には霜柱が立っています。そっと足先を伸ばして、霜柱の頭を触ってみました。

輪橋の先の中鳥居
禊橋

「中鳥居」の手前を流れる「禊川」には、「禊橋」が架かっています。橋の擬宝珠に納められた「辰砂」の力が、渡る者の心身を祓い清めるそうです。
[辰砂(しんしゃ)は水銀の原料。古代日本では丹(に)と呼ばれた。]

振り返って

 春になれば橋を渡って、こちら側に来られるのでしょう。

中鳥居から楼門
丹塗りの楼門

 参拝は楼門前から、となります。本殿までは入れないので、
「かみさま、横から撮らせていただきます」と、お願いしました。

本殿

 四殿が並んでいます。
 第一殿 丹生都比売大神(にうつひめのおおかみ)
 第二殿 高野御子大神(たかのみこのおおかみ)
 第三殿 大食都比売大神(おおげつひめのおおかみ)
 第四殿 市杵島比売大神(いちきしまひめのおおかみ)

佐波神社

 「楼門」の左へ進むと、上天野地区の諸社を合祀した『佐波神社』。

両部鳥居という様式

 こういう様式の鳥居は、神仏習合の神社に多いそうです。

楼門
光明真言曼荼羅碑

「光明真言曼荼羅碑」には、梵字が刻まれています。
 傍の「脇ノ宿石厨子」は修験道の開祖・役行者を祀る祠(両開きの扉まで石だったから、開けてみたい気持ちを抑えなくてはなりませんでした)。

『丹生都比売神社』は、神道・仏教・修験道の霊地なのです。この地では、違いを対立の理由にしない「大和民族の在り方」が形を成しています。

境内の樹々

 日溜まりは暖かいけれど、陽が差さない小道では手が凍りそう。

境内から

 春まで渡れない「輪橋」の向こう側の道を通って帰ります。

「輪橋」の中央あたり

 実の色も「丹」のよう。

振り返って

 橋の向こう側の光が、こちら側まで溢れてくるようです。

 何をするにも工夫が要る身であるけれど、二本の杖で想いを運ぶときには両側に運んでいて、ひとよりも自由な身であるとおもえてきます。

 来たときは紀の川の南側を走ったのですが、帰りは北側の高速道路へ。
 奈良の山中をどれだけ走っても高速料金は要らなくて(駐車料金も)、「きょうこそ支払いが発生」と考えたのに、通った所が無料区間でした。

 そこでは、おもいがけず「南側のたたなづく青垣」を眺められたのです。
 冬にも行ける展望所を探し出せずにいたのに、高い所を通る高速道路から遠い山々が見えたのでした。

 いちばん遠くの稜線が雪で真っ白になっているのを初めて見ました。

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