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ニンジャスレイヤーTRPGソロリプレイ【ディア・プロフェッサー・アイム・ニンジャ】



はじめに

この記事は、ニンジャスレイヤーTRPGの自作プラグイン、「ティターン・ニンジャクラン」のテストプレイを目的としたキャラメイクとソロシナリオのリプレイです。

ソロシナリオは、こちらのゴルダ=アルカトラスさん制作の【マフィアを成敗せよ】を一部展開等を変えて使用させていただきました。チャイニーズマフィアアトモスフィア重点で、最後にはサプライズもあるとても楽しいシナリオです。

前回のビルド例記事でリプレイを上げると書いてから6日が経ってやっとアップロードできました。6日というと休まなければ天地を丸ごと創造できる日数です。神ならぬ身が創造できたのはニンジャスレイヤーTRPGの1バースだったわけですが、考えようによってはこれも天地創造みたいなもんなので、私はこれを見てよしとし、明日は寝て過ごそうと思います。それでは、ご笑読ください。

1

重金属酸性雨降りしきるネオサイタマの深夜、とあるカネモチ・ディストリクトの単身者アパートメントでは、奥ゆかしい漆塗りUNIXに向かい、名門ネオサイタマ華族大学で古典文学と文献学を教えるシーチ・シャオタ先生が論文をタイプしていた。

すっかり白くなった髪は年輪めいた学識の蓄積を表し、そして同時に溢れるような若々しい活力が失われて久しいことの証でもあった。現にシーチ先生は今、しばしタイプの手を止めて、うつらうつらと眠りの世界に足を踏み入れつつあったのだ。

……気づけば峻険な岩山の上、シーチ先生は巨大なヤリを持った巨神めいた存在と対峙していた。巨神は青銅色に輝く肌を持ち、黒いフード付きマントを纏っていた。「ドーモ、シーチ・シャオタ=サン……」巨神は先生にアイサツしようとする。

しかし、アイサツのさなか、シーチ先生は気づいてしまった。目の前の巨神の纏うものは実際フード付きマントニンジャ装束であり、輝く肉体と見えたのは青銅のニンジャ甲冑だったのだ!「アイエーエエエエ!!ニンジャ!ニンジャナンデ!?」

シーチ先生は逃げ出していた。頭上には輝く黄金立方体。いくら走っても背後に感じる、あの黒フード付きニンジャ装束の巨神の存在……。「アイエーエエエエ!アイエーエエエエ!」彼は走り続けた。道の終わりは見えそうになかった。

次の瞬間!超自然存在の俯瞰視点めいてシーチ先生は太古の戦場を見ていた。一方には輝くヨロイに身を固め、あるいは多腕隻眼の異形を示す巨神たち、ティターン・ニンジャクラン。もう一方はオリュンポス山に陣取るオリュンポス十二忍とその軍勢。

シーチ先生のニューロンに、見たことも聞いたこともない奇怪な知識が注ぎ込まれていた。(オリュンポスの神々とティーターンのイクサならば、ギリシャ神話に名高いティターノマキアーの筈。しかしニンジャナンデ……)呆然とする先生をよそに、戦場が動く。

Zooooom!!ZZooooom!!ティターン達が動けば大地が揺らぎ、オリュンポスのゲニン達が逃げ惑う。(一見奇異でも、ティターンが大地を揺るがすのはギリシャ神話的にあり得る範囲だ。私は実際単に変な夢を見ているのだな)

必死に納得しようとするシーチ先生は、しかしティターン勢の姿勢を見て絶望した。ティターン勢は単に大地を踏みしめているのではない。シコを踏んでいるのだ!(シコ!?ギリシャでシコナンデ……。否、あれこそはティターン・ニンジャクランのエノシガイオス・シコ!)汗が額に滲んだ。私は今何を考えた?

ティターン達は次いで巨岩をスリケンめいて投擲する。「「「イヤーッ!」」」オリュンポス勢に着弾!「「「アバーッ!」」」」シコで隊列を乱したゲニン多数巨岩下敷き殺!(ティーターン達はオトリュス山より巨岩を投げて戦った。ウム。神話記述重点な。そう、巨岩をスリケンのごとく投げるティターンの秘技が……)先生の安堵は一瞬だった。

(スリケンめいて?なぜ古代ギリシャにスリケンがあると私は考えた?)これが長い研究生活で鍛え上げられたシーチ先生のニューロンでなければ、とうにニンジャ真実に発狂していたことだろう。しかし、強靭なニューロンが幸いし……あるいは災いし、シーチ先生はこの狂気じみた太古の戦場を正視し続けることとなったのだ!

「「「イヤーッ!!!」」」ティターンニンジャ勢は巨岩第二波投擲!しかし!KABOOOOM!!巨岩第二波ことごとく中空粉砕!オリュンポス勢に着弾せず!オリュンポス勢の前に突如聳え立った赤熱青銅巨人が腕の一振りで巨岩をすべて粉砕したのだ!そして巨人の肩にはニンジャ!「ドーモ、オリュンポス十二忍の極めて優秀な工匠、ヴァルカン・ニンジャです」

シーチ先生は困惑した。(ヴァルカン!?ヴァルカン・ニンジャナンデ!?ここがギリシャならへーファイストスの筈。そしてへーファイストスは実際ティターノマキアーに参加していない筈。ヴァルカンはそれ自身クレタ、あるいはオセチアの……否、そもそもニンジャナンデ……)「イヤーッ!」戦場では赤熱青銅巨人が水面蹴り!「「「グワーッ!!」」」巨大なティターンニンジャ達がより巨大な赤熱青銅巨人にボウリングのピンめいて蹴散らされる!

「弱敵なり生肉!」ヴァルカン・ニンジャが勝ち誇った次の瞬間!「イヤーッ!」CRAAAAAASH!!「上から」振り下ろされた巨大ウォーハンマーの一撃が、赤熱青銅巨人をトーフめいて破壊した。高位ニンジャのカラテが込められたゴーレムを一撃破壊!何たるカラテか!

「グワーッ!」ヴァルカンは地面に叩きつけられ辛うじてウケミし、そしてウォーハンマーの主を見上げ、畏れた。『ドーモ、矮小なるオリュンポスの寄り合い所帯ども。アトラス・ニンジャです』80フィートに巨大化したカイジュウじみたニンジャが、超自然の声色でアイサツしていた。

『ならば次は山頂に踏ん反り返るオヌシらの頭目にアイサツせん。イヤーッ!!』アトラス・ニンジャはウォーハンマーを使い、ゴルフじみて赤熱青銅巨人残骸をオリュンポス山頂めがけ撃ち出した。「「「アバーッ!!!サヨナラ!!!」」」オリュンポス側のゲニン達が多数巻き込まれ爆発四散!

CRAAAAASH!!!赤熱青銅巨人残骸はオリュンポス山頂白亜エンタシス様式ドージョーをホールインワン直撃!破壊!オリュンポス山頂白亜エンタシス様式ドージョー無残!しかし見よ!巨大なニンジャ存在感が白亜ドージョー残骸の上に電磁浮遊!多くのニンジャにインストラクションを授けた己のドージョーを破壊された怒りが、大気を電熱で溶かさんばかりにその者の周囲に渦巻いていた。

次の瞬間!それは雷と化してアトラス・ニンジャの前に降り立った。その装束は穢れなき大理石の白で、表面には絶えず稲妻めいたパルスが走る。かんばせは天上の光を放つごとく、瞳には宇宙を溶かしつくさんばかりの熱と輝きを湛えている。溢れる威厳を帯びたその者は、今にも爆発せんとする激情を込めてアトラスにアイサツしようとした。

間違いない、あれはゼウスだ、シーチ先生は考えた。(ゼウスが雷霆をもってティーターンを打ち据える、例えティーターンがニンジャだとしても、ゼウスがゼウスであれば些細なことだ。これは実際文献学的記述と合わせても正しい)先生は安堵した。

「よもや余の前で驕るまいぞ地虫ども。ドーモ、ゼウス・ニンジャです」(アイエッ!?ゼウス・ニンジャ?ゼウスがニンジャナンデ……)アワレなシーチ先生!「ゼウス」もまたニンジャだった!(然り。雷霆と見えたのは巨大なデン・スリケン。ライデン・ニンジャ、ゼウス・ニンジャの武器にして、アラシ・ニンジャに掠め取られたる畏き天上の雷火……)

自分の知るはずもない太古のニンジャ知識がニューロンに溢れた。「こんなのはおかしい。発狂マニアックの妄想だ!断じて、私の思考ではない!!」シーチ先生は叫んでいた。しかしその叫びも、戦場に響く轟音にかき消される。

「『イイイイイヤアアアアァーッ!!!』」ゼウス・ニンジャが巨大デン・スリケンを放ち、アトラス・ニンジャはウォーハンマーで渾身の一撃!

「グワーッ!」アトラスの一撃はゼウスをガードの上から叩き潰し、地に埋め込む!しかし見よ!接地点から迸る雷光を!雷光は再び天上ニンジャ装束を纏うゼウス・ニンジャの姿となる。これは雷と化しダメージを実際軽減するデン・ウケミ!

一方、『ARRRRRGHAAAAA!!』デン・スリケンがその身を苛み続けアトラス・ニンジャ苦悶!そして!
「「「「アバーッ!!!!」」」」その背後でティターンニンジャ複数感電……溶解!
「「「「サヨナラ!!!!」」」」爆発四散!!

「余を叩き伏せるとは実際ズガタキェー也」ゼウス・ニンジャは苦悶するアトラスを見下ろす。そして、彼のさらなる激情とともに周囲の大気は激しく帯電しプラズマ化する。バチバチと音を立てて広がるのはゼウスの怒り。相対したものをケシズミめいて滅ぼしつくす超巨大デン・スフィア。実際宇宙全てを溶融しうる威力が、この戦場に解き放たれる寸前であった!

「イヤーッ!」気づけばシーチ先生はヤリを持って、ゼウスのヒサツ・ワザをインタラプトしていた。「慮外者グワーッ!」ゼウスは怒りの稲妻をその瞳に宿しシーチ先生に向きなおった。

先生の唇は勝手に言葉を紡いでいた。「我が師父アトラスを貴様ごとき下郎がカイシャクすべからず」そうだ、アンブッシュの後はアイサツするのだ。名乗らねば。「ドーモ、ゼウス・ニンジャ=サン。ヒアス・ニンジャです」いつしか彼はフード付きニンジャマントと輝く青銅鎧を纏っていた。そうか、あれは私だったのか。絶え間ない衝撃に苛まれ続けたシーチ先生のニューロンは、ついに己がニンジャであると受け入れるに至っていた。

ドスン!衝撃と共に目が覚める。座っていた椅子が壊れたのだ。それにしても荒唐無稽な夢だった、そういえばこの椅子も古くなっていた。立ち上がると天井に頭がぶつかった。シーチ先生は絶望した。6フィートに少し足りなかった痩躯は、今や高密度の筋肉を備えた9フィートの巨体になっていた。シーチ先生はニンジャになったのだ。

◆シーチ先生 (種別:ニンジャ)
カラテ    1  体力   5
ニューロン  3  精神力  3
ワザマエ   7  脚力   5/UH
ジツ     2  万札   0

攻撃/射撃/機先/電脳  2/8/3/3
回避/精密/側転/発動  6/8/6/5
即応/緊急回避     3/3
◇装備、サイバネ、ジツ、スキル
ヤリ、ニンジャブレーサー
☆巨神化の秘儀LV2
●連射2、◉◉タツジン:ヤリ・ドー、☆◉イサオシのティターン
◉交渉:超然、◉知識:古代ニンジャ文明、◉知識:高級嗜好品

ここまでがキャラメイクだ。前回記事の【狡知のヤリ使い】のサイバネアイをニンジャブレーサーに変え生存性を重点してみた。老講師ということもあり、戦闘用サイバネは少しイメージにそぐわなかっただろう。そしていきなり強大なアーチ憑依者としてお話を作り始めたことで、奥ゆかしくないとお考えの方もおるやもしれぬが、私はこのソロキャンペイグンでは徹底的にやるときめた。実際憑依後即16ポイントのニンジャナンデ?となった時に腑に落ちやすく、またゼウス・ニンジャとのソウルの因縁はアマクダリのあいつに絡めたストーリー重点しやすいので、べんりなのだ。出自に関しては今回は触れないがいずれもう一段階盛られる。わたしは徹底的にやる。
蛇足ながら、冒頭のニンジャティタノマキアの描写や登場人物のキャラ付けはほぼ私の妄想イマジナリ重点である。原作にデン・ブンシンはあってもデン・ウケミはないし、ゼウスがあんな見た目だったとも電磁浮遊したとも書いていない。オリュンポス山頂にあほがかんがえたような目立ちまくるドージョーがあったという記述もない。ヴァルカン・ニンジャに至っては名前以外ほぼ全部妄想だしアトラスとヒアスは存在自体オリジナルだ。アトラスはアイアンアトラス=サンを憚ってササエ・ニンジャとかにしようかとも迷ったが、ストレートに行くことにした。わたしはやる。

2

しばし呆然とした後、シーチ先生は自身の講義のことを考えた。今期は実際ゆっくりとヘシオドスを学生の皆と読み進めるつもりでもあったのに。三回に一回くらいは人工庭園でハニー・サケを振る舞いつつピクニックじみた野外講義を楽しんでもらおうと思っていたのに。こんな姿では講壇に立てない。がっくりと肩を落としながら、先生はひとまず学内IRCで残り授業のリモート講義化を申請した。

数十秒で自動返信IRCメッセージが届く。『申請受理ドスエ。リモート講義は給与半額、コマごとに別途学生評価に応じたインセンティブドスエ。』インセンティブの額を確認する。実際安い。フェイス・トゥ・フェイスを重んじるネオサイタマ華族大学では、先進的なネオサイタマ大と違い、リモート講義は奥ゆかしくない、あるいは駆け出しの研究者を低コストで利用することに優れたコスト重点の講義形態だと考えられているのだ。

一瞬、シーチ先生のニューロンを突発的な怒りが支配した。ニンジャとなった今なら、威張るばかりで能のない学部長や株券ゴルフに興じトリュフ豚めいて利権を漁ろうとする学長、ハイクもアレクサンドランもろくに詠めぬくせに文学部への予算減を訳知り顔で唱える金融ビズ重点理事どもをみなカラテ殺できるのではないか。コンマ2秒後、シーチ先生は自身の思考に恐怖した。

必要なのは気晴らしだと思った。そうして、ふと部屋に飾っていた美術品のヤリに手が伸びた。ヤリを手にした瞬間、シーチ先生は全身にカラテが満ちるのを感じた。「イヤーッ!イヤーッ!イイイヤアアアアア!!」体はひとりでにヤリ演武し、ベランダへの窓は滑らかな長方形にくり抜かれていた。
「アイエ……」シーチ先生は自身のワザマエに恐怖した。

そして、「イヤーッ!」シーチ先生は衝動的にヤリとPVCレインコートを掴み、くり抜かれた窓から回転ジャンプで逃げ出していた。「アイエーエエエエ!!」行くあてもなく、叫びながらただ駆けた。シーチ先生の巨体が夜のネオサイタマを走る!

「アイエーエエエエ!!」シーチ先生の巨体がカネモチ・ディストリクト8番街を走る!
「アイエーエエエエ!!」極めて強大なニンジャ存在感に、すれ違ったカチグミ・ワナビーユーレイゴスは訳も分からず失禁!

「アイエーエエエエ!!」シーチ先生の巨体がトコシマ区の裏路地を走る!
「アイエーエエエエ!!」極めて強大なニンジャ存在感に、裏路地に迷い込んだ学習塾帰りのカチグミ家庭高校生をカツアゲしようとしていたスモトリヤクザは訳も分からず失禁!

「アイエーエエエエ!!」シーチ先生の巨体がツチノコ・ストリートを走る!
「アイエッ!?」極めて強大なニンジャ存在感に、ソウカイニンジャ、タウマシオンは一瞬硬直し僅かに失禁!そして!「イクサの最中によそ見とは、実際見上げた余裕よ。タウマシオン=サン!イヤーッ!」「アバーッ!サヨナラ!」一瞬の隙にネオサイタマの死神のチョップが貫通心臓摘出殺!爆発四散!

「アイエエエ……実際疲れた……」半日以上走り続け、最終的にシーチ先生が座り込んだのはネオン煌びやかなネオカブキチョ、ニチョーム。一度学会懇親ノミカイの二次会を断り切れず入ったニチョームのバーを思い出す。あの時は、確か。ネオサイタマ大のウミノ=センセイも……。思い出に浸っても、人前にもう出られない巨体も、全身にみなぎる異常なカラテも、どうにかできるものではない。実際捨て鉢でデスパレートな心境が、彼を支配しようとしていた……その時!

「アラ、アータ前にいらしたシーチ=センセイじゃない。ご機嫌はいかがかしら」スキンヘッドの巨漢ドラァグ・クイーンがシーチ先生に傘を差しだしていた。「ああ、遥かに良いよ」声は震えた。「覚えててくれたのね。嬉しい。ドーモ、ザクロです」巨漢は、ザクロは改めてアイサツし、実際優しく呼びかけた。

「ね、今日サービスデーだから来て来て。一杯ご馳走しちゃうわ」「いえ、悪いです」反射的に口をついて出たのは幼いころより親しんだ作法。実際ネオサイタマでは希少なものであった。「ンまーッ!こっちも商売だから、ね」だがザクロは察してくれた。実際奥ゆかしい心遣いが染み入るようだった。

……開店前のバー「絵馴染」の店内には、二人だけだった。「ありがとう、ザクロ=サン。少し参ってしまってね」ホット・サケに人心地つきながら、シーチ先生は口を開いた。「どうにも疲れると、実際突拍子もないことを考えてしまうものだよ。信じるかね、例えば、ギリシャ神話のゼウスがニンジャだったとか」

精一杯ジョークめかした口調だった。彼は、ザクロが突飛さに笑ってくれると思っていた。目の前の実際奥ゆかしいザクロ=サンは、笑い飛ばして、自分を楽にしてくれると思っていた。

「信じちゃうわよアタシ。アタシも実際ニンジャだもの」和やかに返ってきたのは予想と真逆の答え。ザクロ=サンの顔にはメンポ。ジャケット姿はいつのまにやらレザーニンジャ装束。「アイエッ!」困惑する先生をよそにザクロは続けた。「アータだってニンジャじゃない」優しい口調は、事実を決断的に受け入れよと促している。

仮にこれがティーンエイジャーからの問いであれば、さにあらずともニンジャソウルの憑依によって異常巨体を得たものからの問いでなくば、ザクロは奥ゆかしくはぐらかし、ゆっくりと自分がニンジャとなった事実を本人が消化し、受け入れるだけの時間を与えようとしただろう。

しかし、目の前のシーチ先生はそうではない。彼が自らに突如押し付けられたニンジャ異常性を可能な限り早く受けいれずば、その後に待つのは恐らく本人と、不運な周囲を巻き込んだ破滅であろう。

「いい?ニンジャになったって、アタシはアタシ。センセイもセンセイよ」ザクロは真摯なまなざしを投げかけた。
「ニンジャには実際カラテがある。ニンジャにしかできないこともある。けれど、それが全てではないの」「ニンジャにしかできないこと……?」「ニンジャのカラテがないとできないようなビズとか、ね。あんまりいいモノじゃないわよ。ソウカイヤの連中なんかはニンジャの力でヤクザやってやがるけど」

「ビズか……とはいえ私にはネオサイタマ華族大学の……」ザクロは手で制した。「着の身着のままで飛び出してきた。今までの住所には実際住めない。今の仕事だって前みたいには続けられるかわからない、でしょ?ニンジャになって体に変化があったひとにはよくあることよ」実際、リモート分の給与ではあのアパートの家賃や公共料金を払うのが精いっぱいだろう。ため込んだ貴重書の類を思えば引っ越しも現実的ではない。しかしそうすればそれ以上はトーフ一つだって買えるまい。

「ちょっとの間ならここらの空き物件、探しといてあげられるし……、うちの二階の空き部屋はちょっと前に埋まっちゃったんだけどね。仕事だってバウンサーとか、ううん、センセイならバーテンかしらね。占い師なんてのもあるわ。実入りはしばらく実際シケてるとはおもうけど」

「フゥーム……しかし、うちには管理に実際費用が掛かる貴重資料も多くてね……。多少危険でもよい。ニンジャ向きのビズがあるのなら、紹介していただけないだろうか?」貴重書のためにビズをする。ニンジャは手段。そう考えるとシーチ先生は不思議なほどに落ち着いた。そう、貴重書。貴重なる、ヒアデスの七つのニンジャレリック……。

「ちょっとアータ……」ザクロは逡巡した。実際今は冷静さを取り戻したかと見えるシーチ先生だが、その実ニュービーにありがちなカラテ衝動に駆られているのではないか、と危惧したのだ。「恥ずかしながら、カネが居るのです。ウチはリモート講義にはろくに払わぬゆえ」しかしシーチ先生の眼には生活者でありながらもそれを逸脱せず趣味を重点しようとする者の苦悩があった。

それはここニチョームにもありふれたもので、当人にとっては厄介ながら、実際奥ゆかしくもありうるものだ。特にニンジャにとっては。「ま、いいわよそういうことなら。じゃあ少しついてきて頂戴」ザクロは半分呆れ、半分安堵した。悪い気分ではなかった。

3

「ビズの中身はこうよ」自治会の会議室で、ザクロがビズのブリーフィングをする。「最近できた中華レストランなんだけど、どうもそこが、というよりバックのヤクザクランがニチョームのルールを守ってくれなくってね。この前なんかとうとう警告に行った自治会のコムバ=サンが殺されたの。だから、もう次はニンジャの出番しかないのよ」ニンジャ、と言われても、もうシーチ先生に動揺はない。

「ニンジャを寄こして、実際態度を改めるならケジメしてテウチ、改めないなら……ニチョーム全てで排除重点しないといけない。改めて言っておくけれど、センセイの手を汚すことになる可能性もある。それでもいいのね?」
「構わないとも。まず難しいタスクからこなすのが私の信条でね。ニンジャになった以上は物騒なこともあるんだろう」

「なら実際頼もしいけれど……。いい?もしあちらにもニンジャがいて、そいつが荷が重いと思ったらすぐアタシにIRCを入れて、自治会の援護を要請して頂戴。しっかりバックアップはするんだから」「それはありがたい。それで、向こうの情報はここにまとめてあるんだね?」シーチ先生は戦略チャブの上のファイルを精査し始めた。

調査判定ワザマエU-HARD
`/nd u7``7d6=6` = (6,6,~~5~~,~~1~~,6,~~3~~,~~5~~ :成功数:3)
合計値:3
知識でのボーナスダイスを忘れていた。成功したのでヨシ!

「フム、フム、フゥーム……。おや、キョートの食材を使っているのか」
レストランの宣伝チラシに見えた文字をシーチ先生は見逃さなかった。実際割高になろうキョートの食材を、ネオロポンギの高級料亭でもないのに?それは何故か、考えられる答えの幅はそう広くはない。

「例えば、食材は別の何かの輸送のついで、ということかもしれぬ。いかがですかな?」ファイルから顔を上げた先生はザクロに奥ゆかしく問いかけた。「実際その通りだと思うわ。ここらでメン・タイが流行りだしたのも大体同じくらいだもの。それを問いただしてもしらばっくれるだけだったんだけどね」やり取りを思い出して憤慨するザクロにシーチ先生は続ける。

「そのメン・タイ、ネオサイタマのものはみなキョート産で?」「そんなわけないわよ。確かこの前もソウカイヤに、ああ、さっきも言ったけど、ニンジャ同士で組織作ってヤクザやってるやつらよ。そのソウカイヤが卸さないキョート物使ってたってんでどっかのヤクザクランが潰されてたわ」

「ならば、だ。先方には十中八九ニンジャが居ましょうな。それも恐らくはキョートとネオサイタマを行き来する形でなく、アジトに常駐している。いつネオサイタマのニンジャと衝突する可能性があるとも知れぬとなれば、働いているものもまた全員ヤクザの筈」シーチ先生の推理には、つい先ほどまで自身のニンジャ化という事実に狼狽していた人間と同一人物とは思えない冷静さがあった。

「あすこの店長、ワン・チンウェイ=サンね。彼はナギナタのメイジンだとは聞いたことがあるわ。なら、おそらく」ザクロの証言が推理を裏付けた。

「でしょうな。しかしそうわかっていれば備えることもできる。例えば……」「いいえ、センセイ。ニンジャ相手とわかっているなら、これはアタシの出番だわ」遮ったザクロを、今度は逆にシーチ先生が制した。
「ひとたび引き受けたビズなのです。私に行かせてくださいませんか」穏やかに、しかし決断的に発された声だった。

「……わかったわ。でもバックアップには詰めているから、何かあれば絶対にIRCを飛ばす事。センセイはニンジャとしてはニュービーなんだから、そこを重点して頂戴」しばし視線をぶつけあって後、ザクロは折れた。
「ありがとう。ザクロ=サン。最善を尽くしてくるよ」今度は、奇妙な確信を感じさせる声音だった。

会議室を出て、自身の初めてのニンジャとしてのビズへと歩みだす。実際掴み合いの喧嘩とすら縁遠かったシーチ先生の人生には、これらは全くの異物と言っていい。しかし、不思議と恐怖はなかった。向こうにもニンジャがいるのだとしても。然り。ヒアス・ニンジャたる身からすれば、モータルに薬を捌いて儲けを吸い取る惰弱者等実際ヤリのサビにすぎぬ故。

おお、我が身にふさわしきイサオシのイクサよ。思い出すはかの7人のプレイアデス・ミコーの探索行、オリュンポスなる怨敵との大いくさ、そして忌まわしきかの「狩り」……。……?奇妙なニューロンの騒めきに、通りの真ん中でシーチ先生は立ち止まり、首を振った。

私はヒアス・ニンジャその人ではない。ヒアスの知るところを知るわけもない。私は私の知っていることのみを知っているはずだ。それは研究者として、絶対に譲れぬ一線であった。だというのに。ナンデ。シーチ先生は畏れた。しばしの後、己を強いてまた歩き始めた。

中華レストラン『ズーズヘウア』は開店前だったが、ゴメンナサイ私たち準備中な、の掛かった扉の奥では、既に数人のスタッフが行き来している。シーチ先生が入店すると、マネージャーらしきスタッフが誰何した。

「ドーモ。ズーズヘウアはまだ準備中です。ご用向きはなんでしょうか」一見にこやかな声音の裏に、シーチ先生は確かな警戒を読み取る。
「ドーモ、シーチです。実際ニチョーム自治会からの言伝を預かってまいりました」シーチ先生は可能な限りフラットな調子で話すことに努めた。

襲撃感知:ニューロンNORMAL
`/nd 3d6``3d6` = (6+1+4)
合計値:11
続いて攻撃、全員対象、●薙ぎ払い突きを使用
`/nd 8d6``8d6` = (5+6+2+4+1+2+5+2)
合計値:27
まだ天狗ダイスの仕様をよく理解していなかったため、しばらくこうしたメキシコめいたダイス振りが混ざる。

「自治会の方ですね」
確認するようにスタッフが復唱すると、たちまちバックヤードからサイバネスタッフヤクザが殺到!一斉にチャカガンを抜き放つ!

「「「「「「ザッケンナ自治会コラー!!!」」」」」」
BLAMBLAMBLAMBLA……「イヤーッ!」
「「「「「「アバーッ!!!」」」」」」」しかし銃弾が届くより早く稲妻じみて踏み込んだシーチ先生のヤリ薙ぎ払いがスタッフヤクザ半数を上下半身分断殺!

「「「「「「自治会ナマッコラー!!!」」」」」」
BLAMBLAMBLAMBLA……「イヤーッ!」
「「「「「「アバーッ!!!」」」」」」」しかし銃弾が届くより早く稲妻じみて翻ったシーチ先生のヤリ薙ぎ払いがスタッフヤクザもう半数を上下半身分断殺!

そして……「「アイエッ……」」情けない悲鳴を上げたのはふたり。すなわちツキジめいたゴアを作り出したニンジャのカラテに失禁したマネージャーと……シーチ先生その人だった。然り。あの踏み込み薙ぎ払いは先生の全く無意識に行われたものであったのだ!

「マネージャー=サン。お話の出来る人のところまで案内し給え」
動揺を悟られぬよう、シーチ先生は精一杯威圧的に呼びかけた。

「アッハイ」マネージャーはガタガタ震えながら先生を二階に案内し、事務所スペースへの扉の指紋認証ロックを解除した。「シ、シーチ=サン。うちのボスはネ、実際ニンジャなんです。あなたも殺される。私もあなた案内しちゃったから殺される!」

ロックを解除しながら号泣するマネージャー。彼はヤバレカバレだった。
「ニンジャがいるだろうことは承知の上だ。それに……」それに、斯様な場所に踏ん反り返るサンシタごとき。我ヒアス・ニンジャのヤリにかかること自体を喜ぶべし。

シーチ先生は自身の奇怪な思考をすんでのところで口から遠ざけた。ヤクザの頭目を務めるニンジャだ。冷静に考えれば考えるほど恐ろしい。その筈だ。目の前にはマネージャーが呆然と言葉の続きを待っている。

「それに、今回は自治会のバックアップもあるんです。マネージャー=サン。死にたくなければ自治会に行き、あなたの知るところを証言しなさい」
シーチ先生はザクロに手短にIRCを飛ばし、マネージャーのピックアップを要請すると事務所スペースに足を踏み入れた。

そう広くはない事務所スペースには、濃密なキリングオーラが立ち込めていた。あからさまなニンジャ存在感は応接室らしき最奥から動く気配を見せない。逃げず、追わず、しかし目の前に現れた侵入者を確実に殺す、敵対マフィアのデイリを待ち構える禁酒法時代のオールド・マフィアめいたソンケイが感じられた。これは私には荷が重いかもしれぬ。シーチ先生はそう考えることができた。

しかし、ここで逃げるわけにはいかぬ。シーチ先生は己を強いる。良しや、最終的にザクロ=サンの支援を請わねばならぬとしても、その前にこのスペースをクリアリングし、せめて万全のフーリンカザンを整えるべし。さしあたっては電子スペースのUNIXデッキ、一つだけ豪華なデスクの上にある漆塗りの金庫、そして……おそらく人の気配のある応接室手前の扉。

UNIX調査:ニューロンU‐HARD
`/nd 3d6``3d6` = (3+4+6)
合計値:13
ダメもと成功だったのでそれらしいラッキーに描写変更だ。
ランダムトレジャー
`/nd d``1d6` = (4)
合計値:4

その時!ピー!ピー!ピーガガ!UNIXデッキにIRCが着信!『ドーモ、ススン・ジイアン=サン。近々ネオサイタマGM接待、見積もりを送られたし。追伸。過日のラオ・チュウ・スピリット実際美味なりし故、今月メン・タイ卸値当方負担により5%割り引いたり』

あからさまに違法薬物の卸元からのメッセージなのだ!そしてその差出人名義は……ナムサン!ザイバツ・シャドーギルド、大師(マスター)ワイルドハント!当然シーチ先生はザイバツの名を知らぬ。しかしニンジャ相手にこの尊大、恐らくは……否、確かに、差出人もまた強大なニンジャなのだと気づくには十分すぎる証拠であった。

さらにその時!漆塗り金庫からオイラン電子音声!『電子錠メンテナンス重点日時ドスエ。精密物理錠重点モードに自動移行しますドスエ』これはシーチ先生にとって福音だった。

実際IRCに強いとは言えぬ先生にとって電子錠はいささか荷が勝つ相手。しかし、物理錠ならば!ゴウランガ!ニンジャ精密動作性で瞬く間に開錠!キャバーン!中からドロップしたのはトロ粉末だ!

最後にシーチ先生が注意深く向かうのは応接室手前の扉。スターン!シーチ先生が足を踏み入れたのは、タタミ敷きの四角い小部屋であった。それはシュギ・ジキと呼ばれるパターンで、十二枚のタタミから構成されている。四方は壁であり、それぞれにはドラゴン、イーグル、ゴリラ、タコの見事なチャイニーズ・ウキヨエが描かれていた。
「フーン!フーンク!」そしてその中央には、拘束され口枷を噛まされた若者が侵入者に気づき、必死に身を捩っていた。

「君は、ここにどうして……」シーチ先生は若者の拘束を解きながら問いかける。ややもすればこれは罠やもしれぬと思いながらも、教え子達と実際同年輩の若者ともなれば、見捨てるに忍びなかったのだ。

「アイエッ!?そ、そのう、ここで実際ナード・コミック・コンが開かれていて、限定品購入重点だってIRCで読んだんです……そしたら、ヤクザしかいなくって……」

もはや愛おしいほどの愚かさであったが、それを責めるも愛でるも今すべきことではない。むしろ気にかかるのは、身代金重点か臓器販売かサイバネ押し売りか、裏社会に実際なんの接点も持たぬシーチ先生でも知るような雑な手口のシノギを、ニチョーム自治会は勿論、巨大組織であるらしきソウカイヤと事を構えるに吝かではないようなヤクザクランがとるだろうかという点だ。

今もそうだ、この隙に侵入者に奇襲を仕掛けても良いはずだ。しかしニンジャ存在感は奥から動かない。ならば、美学よりも目先の小利を優先する実際愚鈍で短慮な相手ではありえない。シーチ先生は沈思黙考する。

「あの……僕は……」恐る恐るといった風情で不安げに問いかける若者に、シーチ先生は実際簡潔に自治会に保護を求めるように伝え、同時にザクロに二度目の手短なIRCを送った。

4

若者が逃げ出した後も、シーチ先生の思考は続く。この一見隙だらけで脇の甘い立ち回りが、その実誘いだとしたら。ネオサイタマの諸勢力を挑発しているのだとしたら。……おそらくザイバツというこのクランが恃む支援者は、途轍もなく強大な、ほぼ確実にニンジャ組織であるに違いなかろう。
思考の終わりと同時に、彼は応接室の扉に手をかけた。これまでの相手の動きからして、実際アンブッシュは悪手。この巨体にそれが可能とも思わぬ。ならば。

◆ブラッドスライサー(種別:ニンジャ)初期装備:短いナギナタ(カタナ読み替え)
カラテ    6    体力    9
ニューロン    3    精神力    6
ワザマエ    5    脚力    3/N
ジツ    0    万札    0

近接/射撃/機先/電脳 9/8/3/3
回避/精密/側転/発動 6/5/5/5

◇装備や特記事項
 『◉滅多斬り』
 短いナギナタ(カタナ読み替え)
 ニンジャソウルの闇×3(反映済み)

スターン!シーチ先生は勢いよく扉をあけ放った!直後!
「ニーハオ、自治会の使い走り=サン。私の名前はブラッドスライサーです。よくも人の商売を台無しにしてくれたものだ」
応接室中央、高級クリスタルチャブの上に直立する龍頭メンポのニンジャがアイサツした。その手には一見してワザモノと分かる4フィートのショート・ナギナタ!
「ドーモ、ブラッドスライサー=サン。初めまして、オールドコロッサスです」
初めてのニンジャとのイクサ、初めてのアイサツ、極度緊張するシーチ先生の口はひとりでにニンジャネームを紡いでいた。手にするヤリにカラテが漲る!

イニシアチブ同値によりオールドコロッサス先制。
`/nd n4,4``4d6>=4` = (~~1~~,~~2~~,~~3~~,4 :成功数:1)
`+4d6>=4` = (6,~~3~~,6,4 :成功数:3)
合計値:4
ブラッドスライサー回避
`/nd d6``1d6` = (2)
合計値:2、命中
`/nd 5d6``5d6` = (5+3+6+3+6)
合計値:23、回避(カウンターカラテの発生を忘れていた)
長くなりすぎたので以降OC攻撃E(X,X,X)、BS回避N(Y,Y,Y)のように表記していく。
攻撃失敗時、命中時に明記するので無表記の場合は成功だ。
BS攻撃N(4,4,3,1,3,5)>OC回避N(3,3,6)
OC強化精密攻撃N(1,1,3,6),N(5,3,3,3)>BS回避不能、2点ダメージ
BS強攻撃H(3,5,3,6,5,1,1,3,2)>OC回避N(6,2,1)
1ターン目終了。OC-BS体力5-6

「ネズミめいた使い走りに語る言葉もなし。死ね。イ「イヤッ!イイイヤァァァーッ!」アイサツからコンマ1秒後!猛烈にショート・ナギナタ滅多切りを仕掛けようとしたブラッドスライサーを、逆にオールドコロッサスのヤリが襲う!

ミニマルなフェイントからまともに当たればネギトロ重点の渾身の螺旋回転突き!「イヤーッ!」しかしブラッドスライサー寸前でブリッジ回避!即座に体勢を立て直す!

「逃さぬ!イヤーッ!」「グワーッ!」メイジン!オールドコロッサスの突きは回避されたとみるや軌道を変え、痛烈な横薙ぎとなってブラッドスライサーを打ち据えたのだ。

「コソ泥風情が猛々しいわ!イ、イヤーッ!」されどブラッドスライサーもまた油断ならぬニンジャ。即座にワン・インチ距離に近づきショートナギナタ斬撃!構えで実際幅広い距離に対応できる得物の有利だ!

「イヤーッ!」オールドコロッサスは手繰り寄せたヤリの柄で受け流し、逆に勢いをつけて弾き返す。巨体の有利だ!

「初めに撃ってきたのは君の部下だ!イィーヤヤヤヤ!」ニンジャアドレナリンが分泌され、もはやオールドコロッサスにイクサ直前のような緊張はない。

「グワーッ!グワーッ!」弾き飛ばされたブラッドスライサーに襲い掛かるヤリ精密刺突連撃!内腿!股間!水月!腋!心臓!喉!かろうじて致命部位への刺突を避けながらもスイスチーズめいて穴だらけになりゆくブラッドスライサー。しかし!

「手ぬるいぞ!イヤーッ!」一瞬の機を逃さず再びワン・インチ距離!渾身の斬撃を袈裟懸けに叩きつける!

OC強化精密攻撃N(3,2,3,3),(4,3,4,5)>BS回避N(6)
BS滅多切りH(2,1,1,4,5),(2,6,1,4)>OC回避N(1,4),(4,1)
OC強化精密攻撃N(6,5,1,2),(5,5,1,1)>BS回避N(4,1,4),(1,5)
(回避ダイスの仕様方針を無視して全力回避してしまった)
BS強攻撃H(1,6,2,1,5,2,5,2,1)>OC回避N(1,4)
2ターン目終了。OCの初撃失敗を前ターン最後のBS強攻撃と関連付けて描写してみた。


「ヌゥーッ!」オールドコロッサスの切り上げ追撃と相殺!「イヤーッ!」オールドコロッサスは石突きで殴り倒し、再び距離を取る。「ニチョームの連中に何を言われたか知らないが……貴様は私の商売を、ひいては栄えあるザイバツ、その友人たる我がススン・ジイアンに障りをなした!その一命で償いとせよ!イイイイヤァァァーッ!」

食らいつくブラッドスライサー!小ぶりの斬撃を小刻みに繰り出し滅多切りを狙う!キキキィン!ギギギィン!オールドコロッサスは巧みにヤリで受ける!弾く!払い反動で後方跳躍!そして!

「自治会のルールも守れぬケチなヤクザの栄えある友人とは、ザイバツとやらと私もお近づきになりたいことだ!」着地と同時、巨神ニンジャがヤリを上から叩きつけ、跳ね上げる!

「我らと共存共栄するギルドのニューワールドオダーを侮辱すべからず!イヤーッ!」無慈悲なY軸攻撃をブラッドスライサーは半身回避、すかさずそのままナギナタを背負うように回転し大振りの横薙ぎ一閃!オールドコロッサスは柄を立て受ける。巨神ニンジャの巨体は小動ぎもせぬ!

OC強化精密攻撃N(4,4,6,1),(5,6,4,5)>BS回避N(5),(4)
BS滅多切りH(5,1,1,3,5),(3,6,5,1)>OC回避N(2,4),(4,6)
OC強化精密攻撃N(4,3,1,1),(6,4,1,1)>BS回避N(4),(3)命中
BS強攻撃H(4,6,6,1,5,1,5,5,4)>OC回避N(3,4)
3ターン目終了。OC-BS体力5-5。惜しくも回避されたがサツバツが出たので描写上流血させた。

「実際道理の分からぬでくの棒の老いぼれめが!」オールドコロッサスが次いで繰り出した残像を残す鋭いヤリ刺突反撃を最小限の動きで避け、ブラッドスライサーはクンフーめいた歩法で接近!再び滅多切り!オールドコロッサスはまたもや柄でしのぐ!受ける!弾く!払う!反動で斜め後方に跳躍!そして!

「道理は分からずとも君のカラテの隙は分かる。そこだ!イヤーッ!」オールドコロッサスの反撃切り払いはしかしブラッドスライサーによって皮一枚のブリッジ回避!

「大言壮語甚だしい!貴様は私のナギナタでネギトロ重点よ!グワーッ!?」ナムサン!オールドコロッサスの初撃は実際フェイントであったのだ!回避時とは逆の軌道で襲い来るヤリに切り裂かれるブラッドスライサー!

「当てたがどうした!イヤーッ!」しかしブラッドスライサーは一向に戦意軒昂!跳躍し傷を意に介さぬザンフェイ・ニンジャじみた重いショート・ナギナタ唐竹割り!!オールドコロッサスはヤリの柄を構えて受けに回る!

「グ、グワーッ!?」血しぶき!ブラッドスライサーの一撃は、オールドコロッサスのヤリ防御の上から肩に刃を食い込ませていたのだ!ゴウランガ!なんたるニンジャ膂力と重力加速度のもたらす防御無視攻撃か!

OC強化精密攻撃N(2,1,5,1),(6,2,3,5)>BS回避H(1)命中,(2)命中
BS滅多切りH(5,2,6,3,4),(3,6,2,4)>OC回避H(1,6),(4,6)
OC強化精密攻撃N(4,2,1,6),(6,4,2,4)>BS回避H(2)命中,(2)命中
BS強攻撃H(4,3,1,6,3,3,2,6,6)>OC回避UH(5,4,3,6,2)緊急回避ダイス3使用
4ターン目終了。OC-BS体力5-1。アトモスフィアの上昇に伴い、回避ダイスを縛っているBSの被弾が著しい
5T最初の攻撃で終了したのでそれもここにまとめる。
OC強化精密攻撃N(4,1,5,4),(2,2,4,5)>BS回避H(2)命中,(2)命中

オールドコロッサスはこのまま押し切られてしまうのか?否!巨体がブラッドスライサーを弾き返し傷口を筋肉のアイソメトリック収縮にて止血!そして変わらぬ鋭さの突きを繰り出す!

「当てたがどうしたと言ったのは君だ!イヤーッ!イヤーッ!」
「グワーッ!グワーッ!」弾き返され体制を崩したブラッドスライサーの両肩が貫かれる!タツジン!

「オノレ、オールドコロッサス=サン!イイイイヤァァァーッ!」ブラッドスライサーは怯まず冷静に刺突の隙を衝き、突き出されたヤリの柄に沿って滑るようにクンフー歩法接近!捨て身の滅多切り!しかしヤバレカバレめいた突撃をオールドコロッサスは受ける!弾く!払い反動で距離を取る!その時!

『ズガタキェー。我が体にその刃を触れさせたことが汝のステュクス渡し賃也、下郎!イヤーッ!』オールドコロッサスが十文字ヤリ斬撃とともに超自然の声音を発した。「アイエッ!?」ブラッドスライサーは畏れた。その身をヤリが十字に切り裂くのに抗えなかったほどに。

「ア、アバーッ!オールドコロッサス=サン、貴様……!イ、イヤーッ!」ALAS!何たる悲壮な突撃か!ブラッドスライサーは今や全身をヤリに貫かれ、切り裂かれながらもデスパレートに吶喊!そして!

「イ、イヤーッ!」オールドコロッサスが困惑しながらも放った下からのヤリ斬撃がブラッドスライサーの両足を切り飛ばしていた。

両足を切り離されたブラッドスライサーの上体は血を噴きながら飛び、空中で一回転してオールドコロッサスの目の前に仰向けに落ちた。「な、なんて顔してやがる。私が、こんなヤツに……ワイルドハント=サン、スマヌ。サヨナラ!」

無慈悲なるマフィアニンジャ、ブラッドスライサーは爆発四散した。

5

ミニガン:回避判定N
(3,5,4,3,4,6)(6,1,3,6,4,2)
連続側転H
(1,2,1,2,5,2)

元シナリオではミニガンではなく襲来したワイルドハント=サンのコマなのだが、ニチョーム自治会ルートを選んだ≒ニチョームにこのレストランが存在してしまう関係上、不干渉の掟に駐留組のワイルドハント=サンがマッハで抵触してしまうことになる。(駐留組は恩恵を受けている側とはいえ、ザイバツ自体がニチョームを軽視しているため、ワイルドハントといえど掟を無視した行動に出ること自体は不自然ではない)この路線で私が書き続けるならばザイバツに対抗するキャンペイグンで固定されてしまいかねないため、ミニガン&自爆装置に差し替えた。

オールドコロッサスは……シーチ先生は応接室に立ち尽くしていた。実際ヤクザを殺し、ニンジャを爆発四散させた。そして何よりも、なぜ自分があのようなことを口走ったのか。無限に続くかと思われた行き場のない懺悔めいた自問とゼンモンドーを、マイコ電子音声がかき消した。

『責任者バイタルサイン消失につき機密保持爆破シークエンス起動しますドスエ。なお、機密保持のため残存生体反応にミニガン射撃重点ドスエ。残り10、9……』

いくらニンジャ敏捷性があれど、出口までは到底間に合わぬ。そして実際危険なミニガン!BRATATATATATAT!BRATATATATAT!「イヤーッ!」オールドコロッサスは回避の後状況判断!「イヤーッ!」応接室の窓を長方形切断!ヤリを背負うと……「イヤーッ!」ゴウランガ!巨体に見合わぬ俊敏性で連続側転!

KRA-TOOOM!!!オールドコロッサスは事務所部分爆発を背後に裏路地に三点着地し、遠くにマッポビークルのサイレンを聞きながら色付きの風と化して報告のため絵馴染に向かうのだった。

6

バー「絵馴染」、本日貸切なの札が掛かったドアの向こうで、ザクロとセーラー服の少女がオールドコロッサス……シーチ先生を出迎えた。

「アーラお帰りなさい。連絡のあったあの店のマネージャーは自治会長のキリシマ=サンとこ。若いコのほうは後でお話聞くかもしれない、くらいだから連絡先だけ教えてもらってマッポに送って貰ったわ。実際大変だったでしょう」

ザクロは外部の状況を簡潔に報告しながらシーチ先生を労った。向こうのニンジャも相当な手練れであった筈。ニンジャとしては実際ニュービーなシーチ先生が無事に相手を討ち果たしたのはザクロにとって驚きだった。実際、IRCもできないくらいの窮地かもしれぬと介入するかやきもきしていたほどだ。

「実際良かったね。ザクロ=サン、すごく心配してた」そう微笑んだのはセーラー服の少女だ。少女はシーチ先生のほうに向きなおり、アイサツした。「ドーモ、シーチ=センセイ。ヤモト・コキです。アタイもニンジャで、ここの、ザクロ=サンのお手伝いしてるんだ。今後一緒に仕事するかもしれないから、そのときはよろしく」

「ドーモ、ヤモト=サン。ネオサイタマ華族大学のシーチ・シャオダです。実際タフなビズでした。私が、ニンジャを爆発四散させてしまった。ヤモト=サンもザクロ=サンも、他者のためにあのような難しいお仕事をいつも……頭が下がります」シーチ先生はアイサツを返し、二人の顔を交互に見た。

「だからあんまりいいものじゃないって言ったじゃない。でも、センセイが無事で実際良かったわ」ザクロは苦笑し、「それに、誰かがやらないといけないことだから。今回も、シーチ=センセイのお陰で助かった人がいたよ」
ヤモトが補足した。

「そうそう、報酬だけどね。キリシマ=サンがうんと色付けとけって。貴重書の管理?だっけ。きっとしばらくは安心なはずよ」ザクロの提示した金額にシーチ先生は目を丸くした。向こう数か月は書庫管理モニタリングサービスを利用できるだけの額だったからだ。

しかし、それに喜ぶより先に、ニチョーム自治会には伝えておかねばならぬことがあった。「そういえば、これは大事なことなのですが、ザイバツ。ザイバツ・シャドーギルド。それがかのヤクザクランの後ろ盾であったようです。ザクロ=サン、ヤモト=サン。ご存じかな?」

シーチ先生は事務所UNIXのIRCログを広げつつ二人の顔を見た。明るい表情ではない。「ザイバツね。薄気味悪いキョートのニンジャ連中よ。実際ネオサイタマにも来てはいるけど、ニチョームはどこも不可侵のヘイヴンの筈。直接動かず代わりにヤクザクラン動かしてたってわけかよ……ソマシャッテコラー!」

ザクロは怒りを隠さない。ザイバツは表向き中立地帯のニチョームを尊重しているように見せかけながら、ススン・ジイアンを通して間接的に切り崩そうとしていたことになるのだから。

これはとりもなおさず、ギルドが不干渉の掟を、あるいはネオサイタマの秩序そのものを、どうとでもなると軽視しているということに他ならない。そして、組織としての規模の差を鑑みれば、この軽視は恐らく……実際軽視とは言えない。

ザクロは考える。ザイバツの上層部はいざ知らず、ネオサイタマ駐留組には実際不干渉の掟の利益は大きかった筈。ならば、ザイバツ自体の方針転換が最近あったと考えるのが妥当だ。

もしそれが、ここネオサイタマでのニンジャ組織同士の暗闘を苛烈にするものなら……ニチョームは、改めて生存戦略を練らねばならぬ。これは実際針の穴にラクダを通すようなものになるだろう。

「ザクロ=サン。アタイ、今週から少しパトロール増やすよ。いいよね?」
緊張した面持ちでそう言うヤモトの考えるところも、それと同じであったことだろう。

「そういうことであれば、私も実際微力をお貸ししたい。いえ、しばらくこちらにいればまた貴重史料の情報なども重点できるやもしれぬし……」シーチ先生も続いた。ザクロへの、そしてニチョームへの感謝の気持ちから出た言葉だった。

否、それだけではない。実際探索行に赴くためのパーツを揃えねばならぬ。差し当たっては、ヘスぺリデスの七鍵の一つ、シルバー・ハニー・サケ・オブ・ダイギンジョ……。

「アータ達……!この際、実際頼りにしちゃうんだから!さ、いろいろ考える前に、今からはうんと楽しくしましょ、ね」
重苦しい空気を振り払うようにザクロが言った。ヤモトは笑顔で頷いて見せ……シーチ先生もまた、一瞬過ぎった奇異な思考を振り払うように頷いた。

A+:ブラッドスライサーを爆発四散させ、ワイルドハントの追手を退け、
  さらにザイバツとのやり取りの記録を入手した。
 【万札】25 【名声】+2
初陣としては相当の戦果だ!ゴウランガ!

【ディア・プロフェッサー・アイム・ニンジャ】終

あとがき

お読みいただきありがとうございました。初めてのリプレイ作成ということもあり、色々至らぬところがあろうかと思いますが、ゆっくり歩みを見守っていただければ幸いです。
今回はビルド例で作ったニンジャと近いニンジャで、【同程度のダイス数の、回避ダイス使用方針がサツバツ以外の被弾をあまり重要視しないニンジャ】と戦いました。痛打もエンハンスもこちらにないため実際そこそこターン数が掛かり、かつ連続側転で回避ダイスを増やせないことから、もう少しダイスが悪いか長引けばかなり危なかったと感じました。恐るべしブラッドスライサー。
ワザマエヤリ殴りビルド自体は☆で体力をジツ依存で盛り、★で攻撃難易度を下げ、★★★までいけば基本ダメージを盛る以上、相当適性を与えようと意図してデザインしたビルドです。なので、プレイした時は☆のペナルティをサンシタ~アデプト帯ではもう少し緩和したほうがいいのかな、なんて考えていました。
さて、やたらと壮大なバックボーンを与えてしまった(主にソウルに)シーチ先生ですが、当然これで終わりではありません。できれば成長上限まで育ててみて、各段階でのソウルの機能について検証したいと考えているからです。
既にあと3シナリオほどプレイさせて頂きログを取ってあるので、今回の報酬での成長リプレイのあとで順次リプレイ化していこうと思っています。

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