母のこだわりー美容院




母にはお気に入りの美容院がある。実家から歩いて5分もかからないところだから、交通量の多い道路を2つも渡らなければならない。おまけに美容院は建物の2階でエレベーターはなく、急な階段を登らなければならない。

母も91歳になり、足腰が衰えて近くに住んでいながら歩いて行くことができないし、階段も心配。

もうパーマもしないと言うので、わたしが行っている隣の小さな美容院に連れて行ったがどうもカットが気に入らなかったようで、どうしても行きつけの美容院に行きたいと言う。どこに出かけるわけでもなく、寝て、食べて、居間でも横になりテレビを見る生活だから髪型なんてどうでもいいじゃんと思うわたし!

わたしがあまり小倉での運転に慣れていないことと、交差点近くに美容院があるため、歩道に乗り入れないといけないこと、駐車場への出入りが難しい、おまけに乗り降りに時間がかかるため、母を連れて行くことに躊躇があり、渋っていた。これで喧嘩ばかり、いくら言っても運転などしない母にはわかって貰えない。
最終的には「じゃあ、自分で行くからいい」と歩いていけないくせに言う。そして痴呆が都合よくまた、次の日にも同じことを言い始め喧嘩になる。

結局、連休の昼間は車が少ないため、昨日連れて行くことにした。前もってお電話をし予約した。その際にはすぐに「お母様、元気ですか?」と声をかけてくださった。そして予約した時間になったが母の支度に時間がかかり、15分ほど遅くなった。にもかかわらず、階段下で待っていて下さり、美容院の方が母の手を取って連れて行ってくださった。

また、帰りには終わり次第、母には電話をするように携帯を持たせて、使い方も教えていたが、美容院の方がわざわざ自宅にお電話くださって、母の手を取り階段下まで連れて行ってくださった上に、わたしの迎えの車が来るまで一緒に待っていてくださっていた。もう感謝と感動で涙が出た。

巷ではお店が有名になって行くとサービスが低下していくとよく耳にする。
どんなにパーマやカット、セットの技術が素晴らしくてもそのお店で働く方々の温かさ、人となりに魅せられてまた通いたいと思うわたし。母がどうしてもそこに通いたいと言う気持ちが理解できた。

わたし自身も長く実家を離れていたが、成人式、兄の結婚式には髪のセット、着付けとお世話になったところだが、実家に帰って来て、値段が高いこともあり通っておらず、あまり髪にはこだわりもないため、隣の安い美容院に行っていた。

何だか久しぶりに感動して、どうしてもこの気持ちを伝えしたく美容院のFacebookを見つけてメッセージをした。

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