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MIDSOMMAR

公開から遅れること約5か月。
絶対にないと思っていたのに地元の映画館にミッドサマーがやってきたので観ることにしました。

※当たり前にネタバレします

公開当時、東京へ行った時に観ようかなと思っていて。ツイッターでかなり盛り上がっていて気になったから。ヤバい、怖い、胸糞、とか聞くと「自分はそれにどのくらい耐えられるだろうか?どういう感情を抱くだろうか?」という興味が湧いてしまうのでね。
でも途中で耐えられなくて映画館を出たという人の感想を読んで、ちょっと、嫌かも、しれない…という気持ちが強くなり、そもそもミッドサマーはストーリーに興味があるわけじゃなく根性試し的な意味で見たかっただけなので、結局その時はそれよりも単純に映画として観たい!と思うお話を観ることにしたのですが。ちなみに観たのはスウィング・キッズとダンサー。どちらも素晴らしく良かった。

さてミッドサマー。わたしは公開当時にしこたまネタバレを見ていました。

だからどんな凄惨なシーンがあるかは大体知ってるつもりでわくわくしながら始まるのを待っていました。多分途中で食欲が死ぬはずだから、買っておいた食べ物は序盤にさっさと食べちまおうと思いながら。

冒頭、主人公ダニの家族が一気に死にます。
この部分、すっかり忘れていて、いきなり頭をぶん殴られた気持ち。見ながら、「あ、そういえば、なんか…」と少しずつ記憶を取り戻して、妹の姿が映ったところでまじご勘弁状態。この後とんでもない死体(または死にかけ)がいくつも出てくるけど、わたしはこの妹の姿が一番キツい。

というか、そう、オープニング。雪の積もった冬の森林。暗い歌声。この時点でもう鬱々とした気持ちを揺さぶられまくってるんですよね。からのダニ家族心中。しんどい。

主人公のダニは彼氏が友人と会ってて絶対この後来る気ないだろーってわかりきってるのに何度も「来る?」って聞いたりとか、彼氏が男友達と遊んでるとこに一緒に行くって言いだしたりとか、あ~、ない、こういう恋人嫌だわ、とまったく共感できなかったし彼氏のクリスチャンにしても優柔不断でハッキリしなくてこれまた嫌いだわ~という感じだし、ダニも、クリスチャンも友人たちも、みんな少し居心地の悪い状態のまま旅に出るこの気持ち悪さ。
頼れる人が(たとえスーパー頼りなくても)クリスチャンしかいなかった、のかもしれないけど、ほんとに~?ほんとに他に居ない~?電話してた女友達は~?とか思ってしまった。でもここでクリスチャンにすがっちゃうのがダニで、だからこそこの物語が展開していけるわけだけども…
男たちが集まってる家にダニがやってくるシーンの、鏡を使って全員を映すの良かったですね。
あほマークは登場から最後まで一ミリも好感を持てなかったし、ペレは怪しいし、ジョシュだけはわりと共感して見られるキャラクターだったかな。あとサイモンとコニーね。彼らは本当に、可哀そうに…という言葉しかないわ。イングマールに付いてきちゃったのが運の尽き。

ペレの地元の夏至祭、90年に一度の大祝祭について行くダニとクリスチャン、そしてマークとジョシュ。みんな目的は様々だけどクリスチャンだけはやっぱりここでもイマイチ目的がはっきりしない。なんとなく来た感じ。(なのに重大な役目を背負うことになっちゃう)
人里離れた小さなコミューン、辿り着いた時点で生きて帰れなそ~~~感は満載です。わかりやすいホラー的演出。

そう、この映画単純に「ホラー」とはくくれないお話だけど、「この後こいつ死にます」感をわかりやすく気づかせてくれるし、絵で「こういうヤバいことが起きそう!」を伝えてくれるし、伏線なんて難しく考えなくとも危険を教えてくれる。それが、親切って言うよりは観客への「お前ら逃がさねえぞ」というメッセージのようで怖い。監督まじド変態。これから恐ろしいことが起きるよ、ちゃ~んと見ててね、っていう。そんでちゃんと想像以上のやつを見せてくるんだもの。もう!アリ・アスターのばか!大っ嫌い!

天地がひっくりかえったり、謎の草で謎のジュースを作るシーンをやたらアップ&大音量で見せたり、あとジョシュが殴られるシーンのあのいびき(これに関してはネタバレであの音が何を意味するか知ってたから尚更怖かった、嫌なシーンベスト5に入る)
どこのシーンか思い出せないんだけど静かにホルガの男性が話してるところで何の音かわからない、映像ともリンクしてない音が流れてたのも気持ち悪かった。強い雨が降ってるときに室内で聞こえる音みたいな…
それでいてコニーの悲鳴にわたしは全く気付かなくて、後から知っても全然思い出せないの、これもまた怖い。観た人みんな普通にわかってるのに…コニーの悲鳴なんて、ありました…?え…?

ちなみに普通版だとコニー激おこで村を去ろうとする→しばらくして案の定遺体で登場(韻踏んでしまった)、という流れでしたがディレクターズカットだとコニーがなぜ水死体だったかがわかるみたいです。水辺での儀式があるとか(その時はコニーは死なないんだけど)

まあでも最初の儀式を見たサイモンとコニーの反応は至極真っ当ですよね。ちょっと騒ぎすぎな気はするけど(ここではそれが普通なんだ、っていうのは説明せずともわかりそうなもんだよ、あの雰囲気からして)そら逃げようとしますよ。ええ。勿論逃げられないけど。
アッテストゥパンというのは崖って意味なんですって。観てるときはその意味を知らなかったけど、人生の春夏秋冬の話でちゃんとペレがヒントくれたし、ある程度知識を持ってるジョシュの反応からして、大体の予想はついてました。あの食事会、何人かのホルガの人々はちょっと悲しそうな顔してたりするんだよね。72歳を迎えて死ぬことは彼らにとって喜びである、といってもやっぱり少しは悲しい辛い怖いという気持ちはあるらしい。儀式の主役である老人二人も悲壮な様子に見えた。
でも崖って意味なの知らなかったし、まさかあんな激しいやり方で逝くとは思わなかったよ~。てっきり乾杯の飲物に毒が入ってるとかそんなものかと…確実に死ねるように、なのだろうか。いや一人失敗してたけども。たすきを掛けた人が何人かいて、これは何の意味だろう?と思ってたらトドメ刺し係だったんすね…むごかったな~。ここで大概の人は食欲が死ぬはず。
トドメ係3名のうち2名は若い女性だったけど、容赦なく顔面に木槌を振り下ろしてました。可哀そう。顔じゃなくてもいいじゃないか。一発目でかなりぱっくりピスタチオ状態だったけど木槌であんなにいけるもの?相当重い木槌なのか?

ペレがダニに「クリスチャンどうなん?」と近寄ったり、二人だけの秘密だよ!って絵をプレゼントしたり、あれはダニをホルガに取り込むためだったのかガチでダニのこと気に入ってたのかどっちなんだろう。ダニがメイクイーンに選ばれたとき挨拶とかじゃない本気のキスしてたけど、わたしは「あ~!ちょっと!クリスチャンに見られちゃうよ!」とヒヤヒヤしましたが特にそういう描写はなかったっす。なんだよクリスチャン。
「クリスチャンに守られてると感じる?」ってペレがダニに尋ねるとこあったけど、アッテストゥパンの時にさ~、普通だったら、ダニにあの光景を見せないようにするとか、体に触れて少しでも安心させるとか、あると思うんです。ダニは家族を亡くしたばかりで死に敏感になってるじゃん。普通彼氏じゃなくても近しい人物ならそういう意識が働くと思うんだけど、クリスチャンはほとんどダニにお構いなしって感じだったんだよね。サイモンがコニーを置いていなくなったって話をした時も興味なし男だったし、ジョシュが一生懸命論文のために頑張ってるの知ってて同じテーマでやるわとか言い出すし、もうほんとクリスチャンには全く同情できなかったね。だから彼の末路はわりかし「ざまあ!」という気持ちでした。とはいえ最後「ダニよくやった!あんな男いらねえよな!」みたいなスッキリ感もなかったけど。

結局よそ者たちはメイクイーンになったダニ以外みんな殺されてしまうんだけど、マークはまあとんでもない事やらかしてるので納得なんですが(自分のしたことを指摘されても「だから何?」みたいなところが最悪)、ジョシュも禁忌を破ったわけで納得、ところでサイモンはあそこまでされる必要があったんですか…?サイモン一番可哀そう。血のワシですよ。お目目にはお花咲かせちゃって。大騒ぎしたし、村の風習を侮辱したかもしれないけど、でも彼らも「巡礼」で世の常識は一応知ってるわけじゃん?ああいう反応されるのも無理ないってわかるじゃん…?その辺はイングマールの人選ミスということなのだろうか…
この映画観た日、鶏むね肉を調理したんだけどサイモンの最期を思い出してしまったよ。ちゃんと美味しくいただきました。えらい。
しかし血のワシについて疑問。レシピとしてはまず生きたまま肋骨を脊椎から綺麗に外し、肺を外に出して翼のように見立てる、だそうですがそんな事したら途中で死なんか…?サイモンの肺、動いてたけど。あれは加工直後だったのかな…肋骨外しの段階で死なんか?

ホルガの人たちといえば激おこネクロパンツのウーフも熱いですがやっぱりマヤちゃんよね!マヤちゃん好き。
マヤちゃんが最初に登場するシーン、気合を入れるように例の呼吸をするところめっちゃ好きです。最初はマヤちゃんの役割が見えず、何かヤバそうな女、ってくらいなのですがマヤちゃんはこの夏至祭で外部の血を取り入れる大役を担っていたのですね。後々になってあの気合の意味が分かる。
ここからは想像でしかないのだけど、あのタイミングで妊娠できそうな条件がそろってる女性って限られるだろうし、マヤちゃんと、もしかしてマークを誘ってたインガも妊娠担当だったのかなーとか。そんでうまくいったのがマヤちゃんだった。終盤で多分インガだと思うんだけど、小屋の横で泣いてるシーンあったよね?端に小さく映ってただけで、泣いてる女の子をホルガの女性が慰めてるような場面があって、気になったけどそれについては何も触れられず…もしかして自分が大役を担ってたのに果たせなかったから泣いてた?とか勝手に想像していました。あとインガ途中から顔に傷があったけどそれについても触れられず。マークにやられたんか?

恋のおまじない★マン毛パイと経血ジュースは気持ち悪いながらも笑えましたね。毛、そのまま入れるんかい!っていう。細かく切ったりしないんだね。子作り小屋で、さまざまな体型・様々な年齢の女たちが裸で立ってるのは怖かったけど、お花のシーツの上で待ち構える全裸マヤちゃんはとっても美しかった~!普通だったらあんなのギャン萎えしちゃうシチュエーションだけど、そこはホルガ村名産・ドラッグで余裕なわけ。メイクイーンが決まった後の食卓に着いた時点でクリスチャンはもうギンギン状態だったのかな?とわたしは思ってたんだけど(もしくは下痢しそうな人みたいだった)、そのあとトドメのお薬を処方されて顔つきが変わります。あの場面怖かった。目が、あれはどうなってるの?カラコン?説明できないけど目が変わるんす。怖い。
そして女たちに見守られ、時にサポートをされながら(ケツ押しおばば…)無事フィニッシュ。マヤちゃん大喜び。良かったねマヤちゃん!

ところでこの子作りシーン、途中から思い出したようにボカしを入れてきたのは一体…?ネクロパンツになったマークもぶらぶらさせてたし、クリスチャンが小屋に入ってガウンを脱いだ時も丸出しだったのに、ケツも映ってたのに、なぜか途中からデカめのボカしが入るんですよね。あれは興ざめするのでやめてほしいな~全裸で逃げ惑うシーンの滑稽さは増してたけど。

子作りと並行してダニがメイクイーンとしてのお仕事をすることになるわけだけども、急に現れるめちゃくちゃメルヘンな馬車(馬は居ないから人力車?)可愛かったな~。車を引く女たちの勇ましさも素敵だった。ここも好きなシーン。
ダンス大会も良かったんだけど、なんか見てて息が苦しくなってしまった。ダニに色々教えてくれるカリンちゃん可愛かったな。ホルガの女の子たちもっとじっくり見たい。ダンス大会の衣装とか特に。あと美少年もたくさんいたよね!

最後はむごたらしい遺体たち大集合&最初に亡くなった72歳男女のレプリカ、そして熊ちゃんの生着ぐるみを着たクリスチャンが真ん中に据えられ、志願した生贄のウーフとイングマールと共に黄色の神殿小屋ごと炎に包まれ大団円(?)というわけ。
熊ちゃん着ぐるみのクリスチャン可愛いじゃねえかよばかやろう、と思ったのはわたしだけではないはず。着心地は最悪だろうけど見た目はかなりカワイイ。
72歳ズはデスマスクみたいなの事前に作ってたのかな~。人の体に枯れ木を合わせるのはわたしのトラウマムービー、タイタスを思い出すのでご勘弁…
自ら生贄になったウーフとイングマール、本当に志願なのか?というところもありますが、焼かれる前に悲しげに見つめ合うところとか人間らしさがあって良かったですね。そして痛みを感じないよ~ってお薬的なもの与えられてたのに普通に痛みに大絶叫っていう。ひどい!あれを見たらみんな生贄やだよーってならんのか。大丈夫か。

ホルガの人々は感情に共鳴するのがお決まりで、誰かが泣けば同じように泣く、苦しめば一緒に苦しむ、ちなみに例の見守りおセッセでも一緒に喘ぐ、これがめちゃくちゃ気持ち悪くて嫌だったな。ダニにとってはあれが救いになったのかもしれないけど、わたしは絶対に嫌だよ。
自我を捨ててホルガの中でパーツのひとつのように生きれば楽だろうとは思う、ダニみたいに絶望の淵に立たされたら全てを捨ててああやって生きることを受け入れてしまうかもしれない。でも、絶対に嫌だよ。
メイクイーンに選ばれたとき、次々に人の顔が近づいてくるのとかめちゃくちゃ怖かったもんな。無理すぎる。
余談ですが最後みんなで燃え盛るウーフとイングマールの痛み苦しみを共有してるシーン、舞台役者とかが稽古でああいうのやるじゃん?感情を思いっきり表現してみましょう!っていう。あれに見えて少し覚めてしまった。劇団ホルガのみなさん…

外部のものたち、最初から生贄にされることが決まっていたのか、村での振る舞いで決まるものなのかわかんないけど、ジョシュがばしばし写真撮ったり論文に書いてもいいって許可したのは「ま、どーせ生きて帰れないし」っていうことでの許可だったのかな~。そうだよね~。

マヤちゃんはあの一発でちゃんと妊娠できたのだろうか。できなかった場合ってどうなっちゃうんだろう。みんなで悲しんで新たな種を招くだけかな。
あと「夏」の時代に巡礼に出るわけじゃん。そこで外の世界に触れてホルガにはもう戻らない!ってなる人とかいないのかしら。やべーじゃんって気づいて告発する人とかさ。ホルガの人たち、そんなに機動力はなさそうだし逃げた奴を見つけ出して殺すとかはしなそうじゃん?
いや、そもそもスウェーデンの冬はあんなところで暮らすの厳しそうだしもしかして夏至祭り以外はみんな街で普通に暮らしてたりするのかな…ほらもうホルガへの興味が止まらない。こういうことなんですね、この映画にハマってしまうのは。
エンドロールの時点で「もう絶対に見たくないし、映画館出たら記憶を消してほしい」とすら思ってたのに、結局その日から毎日ミッドサマーについて検索してあれこれ読んでるし、ディレクターズカット観たいとも思ってる…怖いのはほんとに怖かったのマジで。でも日が経つと怖さよりも可笑しさとか細かな疑問とかが湧いてきてしまうのよね…メイクイーンの末路も気になるし…

監督が言う「カタルシス」なんてわたしには1ミリも感じられなくてカタルシスってどういう意味だったか今一度調べてしまったわよ。

あ、そうそう、最初から最後までとんでもない緊張感で身を震わせながら観たけどエンディングの唐突なポップソングで笑ってしまったよ。悪趣味すぎるだろ監督。しかもそのあとまたオープニングの怖い歌聞かせてくるからほんと性格悪い。やっぱりアリ・アスター嫌い。


くそ長になってしまったな。まだまだ喋れるけど。


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