夏休みを迎える前に

修行めちゃくちゃ休みたいと思いながら行った。よくやった。
夏休みまであと少し。つっても自分の長い夏休みはとっくに終わってしまっていて、本当の休息はもう少し先で、カレンダーが休みというだけ。


修行先のQさんは昔、香港や台湾に行ったことがあり、「どこへ行ったんですか?」とか話した。

「美術館行ったことある?台湾の」とQさん。

「博物館ならありますよ」
「いいなあ行けばよかったな。あたし博物館行かないで海老釣りに行ってたよ」
「そっちのがいいですね」
「なんかすごいんでしょ、彫刻が」
「そうみたいですが、めっちゃ混んでたんで見なかったです。釣り、いいな」
「海老がすごい釣れてさ、向こうの親子が話しかけてくるんだけど言葉がわからないの。ガイドの人に聞いたら『海老のデパートですね』って言ってたらしくて」

楽しそう。私は博物館に行ったものの目玉の作品は大行列で、割り込みで揉めている様子に怯んで結局見なかったし、どんな作品が並んでいたか、8年経った今ではほとんど覚えてない。展示内容や建物の造りよりも、中国からの観光客がとにかくたくさんいたこと、赤とかピンクの服を着ている人が多かったことを覚えている。頭の中に、そういうのが写真みたいに残ってる。

ここに来たらこれを見るべき、というものに、全員が同じ見方をする必要はない。一人一人の多角的な目線や記憶があれば、あとから情報を集めたときにその解像度が上がる。記憶とは貴重なデータだ。
(周りのみんなが称賛する作品に触れてみて全く心が動かなかったとき、私はそのことがすごく気になっちゃう人間だけど)

だから、それが自分にとっての観光、体験だった、と肯定したい。している。選ばなかった道を思うことってあるあるだけど、限られた時間の中ではそのときのことが全てだ。それにしてもエビ釣りは気になる。

…と、思いながら地下鉄に揺られ、この人たちきっと横浜帰りだろうなあと思われる疲れ切った家族を見る。子はポケモンのTシャツを着て満足そう。

今日は気の進まない修行内容をタラタラ1日かけてやった。途中で嫌になりながら過ごしたから、桃のケーキなんかを買って帰った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?