チューリップに頼る

1月12日

 帰り道、地下鉄に乗車した。自分が乗った車両にたまたま、大声でなにか言ってるおじさんがいて、これはソワソワして乗り続けられないと思い、すぐに隣の車両に移動した。その優先席付近で私はしばらくスマホをいじるなりして立っていたが、途中で少しよろけて片足を後ろの方についた。その直後、後ろから「やめてください!」と言う女性の声が聞こえた。怒っている声だった。誰に言っているのかわからず、なにも反応しなかったが、再び女性は「やめてください!」と叫んだ。続いて、「踏まないでください!」と言った。振り返ると、女性は私に向かって言っていた。

「踏まないでくださいよ!足を怪我しているんです!」

 女性は自分の足を指差していた。キョトンとしてしまった。私は、きっと踏んでいない…踏んだ実感がなくても踏んじゃったパターンは実際あるかもしれないが、なんとなく様子を見るに、女性は怪我もしていないし、私から女性の足まで距離はあるし、きっと踏んでいない。私は、女性の言っていることを一旦受け止めて、ごめんなさい、失礼しました、と言った感じで謝った。私の声は通りにくいもので、ボソボソしてて伝わっただろうかと思ったが、女性はそれ以上言わなかった。次の駅に着いて扉が開いたので降りたふりをして、また移動した。

 この短時間のうちに二度も移動をした。こういうのは、自分になんかついてんだろうなとか、星回りとかを考えてしまう。凹む…恥ずかしかった。ドキドキする。なんか、慰めてもらいたくて、花屋に吸い込まれて、一番惹かれる色のチューリップを買った。

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