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【超個人的】クラリネットメーカー3社の音色や設計への考察

みなさまこんにちは。
いや、メリークリスマス!
クリスマスもいつもと変わらぬ執筆練習編集撮影をしているクサノです。
今週の有料noteのお時間でございます。

さて本日のお題なんですが、
クラリネットを買おう!となるときメーカーを選ぶじゃないですか。
でも中学生の時のクサノは思いました。

「クランポン、セルマー、ヤマハがどうやら主要メーカーっぽいな」
「で、何が違うん・・・?」
「動画見ても記事見ても情報がバラバラすぎてわからん」

と。

ということで今回は、

クランポン、セルマー、ヤマハ3社の音色や設計の【超個人的】レビュー、考察をしていきたいと思います。

例によって「クサノがどう感じているのか」ということがメインですが、なるべく数値や事実を紹介していければと思います。

ではでは早速行ってみましょう!

ビュッフェ・クランポン

概要

Buffet crampon (ビュッフェ・クランポン)
1825年パリ市内のパッサージュ・デュ・グラン・セルフ(牡鹿小路)で誕生した。1839年ベーム・システムのクラリネットをクラリネット奏者のH.クローゼと協力して開発した。サクソフォーンも考案者アドルフ・サックスの特許権が切れるとすぐに改良に着手した。現在はヨーロッパ統合の流れに乗ってシュライバー社やユリウス・カイルヴェルト社を買収し、高品質の木管楽器を作り続けている。また近年は木管楽器に留まらず、アントワンヌ・クルトワ、ベッソン、B&S、シェルツァー、ハンスホイヤーなどの金管楽器ブランドも傘下に収めている[1]。 

wikipediaより

クランポン考察

ベーム式クラリネットのシェアではおそらく日本一、いや世界一のメーカーだと思います。日本の体感だと6~7割くらいのプロ奏者はこのメーカーを使っている気がします。

最高級機種から学生向けの安価なモデルまで発売していますが、お値段は総じてやや高め。最安価のモデルでも17万円~(E11)最上位機種だと130万近くします。
どのモデルも「ビュッフェ・クランポンらしさ」というのが感じられ、音色の設計はメーカー全体を貫いているように思います。

音色

モデルごとの差異はもちろんありますが、ビュッフェ・クランポンの音色のベースは明るくキラキラしたもののように感じます。
真ん中に芯が通っていて朗らか、愛嬌のある女の子、天真爛漫さ、品の良いフランスのお菓子のようなイメージがあります。

音程よりは音色を重視するような印象で、クランポン特有の立体的な音色で音程を気にならなくさせるような作りかなと思います。
裏を返すと音色と音程は自分で作る意識が無いと結構暴れちゃうかもしれません。

クランポンのクラリネットは大きく分けて3ラインで展開していて

R-13系統(密度が濃く明るい音)
RC系統(ダークでなめらか柔らかい音)
GALA系統(新設計の第3の内径によるピュアな音)

があります。
この系統は「内径の設計」の違いによるもので、それぞれの内径の違いにより音色はもちろん、吹き心地や音程感まで異なってきます。
(クランポンの内径については別の機会に詳しく記事や動画にします)

内径
クラリネット内部の空洞部分の太さのこと。ここの太さやくびれ具合などにより楽器の音は大きく変わると言われている。クランポンの名匠ロベール・カレによって今まで一直線だった内径を複雑にくびれさせるアイデアがもたらされ、ビュッフェ・クランポンのクラリネットは大きく進化した。以降、他社もこの複雑化した内径を取り入れることとなる。

設計思想への考察

常にクラリネット界の最先端を走るメーカーのビュッフェ・クランポン。

新設計やアイデアを生み出すことに非常に優れており、先述した内径のアイデアはもちろん、グリーンラインの採用、音程補正や運指のためのコレクションキイの積極的搭載、最近発売されたBC21に見る新たなクラリネットの在り方など、世界シェア一位のプライドがあるように思います。

しかも、その設計はただの思い付きではなく、社内でかなり精査され磨き抜かれてから世に出されるように感じます。トスカなど上位機種のキイデザイン、音設計は、吹くほどになるほど、と思うことが多いです。
反面、上位機種ほどかなり練られた音作りをしているため、狙っている音へアプローチするのがやや難しいという印象もあります。

アバンギャルドよりも保守的で職人気質のメーカーだと思っていて、新製品のトレーラーでは工場で黙々と楽器を作る職人のシーンが多く採用されています。

革新は目指すがそれはあくまで音やプレイヤーのため。
そのためには工場での職人仕事こそがすべてなのだというメッセージを感じます。

一方、フランス的なユルさも持ち合わせており、ガチガチに「この音を出せ!」とガイドされるというより、余白を多く持った楽器を開発するようにも思います。
プレイヤーに音作りをゆだねてくれる…というのでしょうか。楽器の操作や音に関して「自分」が入り込む余地がかなり多いです。

この「良い距離感」こそがビュッフェ・クランポンがここまで世界中で好まれている理由なのではないかと思います。

(余談)Toscaの衝撃

ビュッフェ・クランポンのToscaが発売されたのは2003年のこと。

それまでクラリネットと言えば、ベルリングがついていてややぽってりとした見た目と、木の暖かさを感じさせる音がフューチャーされていたところにさっそうと現れたのがこのToscaです。

ベルリングを排除し新しいキイデザインを搭載したスマートな見た目、どこまでも伸びるような感覚になる音、暖かさよりもハイテクさを感じるこの楽器にクラリネット界は騒然となった記憶があります。(当時中学生でしたけどね)

このTosca以降、クラリネット界全体は洗練とスマート、ノーブルでハイテク方面に舵を取ります。
セルマーの新型プリヴィレッジ、ヤマハのイデアル、イデアルGあたりは見た目も音の設計も確実にToscaの影響があると思います。

しかし近年のクラリネット界はまた少し変化がある気がしています。
過去の楽器から学ぶ姿勢で開発されたGALA、トラディション、レジェンドの第三の内径ラインは、ハイテクさよりもピュアで素朴なクラリネットの音を目指したような設計に感じます。
しかし、まだ奏者もメーカーもToscaやDivinneのような最終的な音の着地点は見つけられてないようにも感じます。

一度純粋なクラリネットの音に立ち返ろう、というビュッフェからのメッセージのようにも感じますが、果たしてこの第三の内径ラインがこれからどんな音を作っていくのかは興味深いところです。

セルマー

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