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映画『スラムダンク』の声優交代劇はなぜ、炎上したのか~「シークレットを多用するうえに、旧作ファンを軽視するマーケティングがこざかしいからでは?」

お疲れ様です、pontaです。

映画『THE FIRST SLAM DUNK』の声優交代劇が物議をかもし、トレンドにもなりました。

『SLAM DUNK』とは1990年から週刊少年ジャンプで連載された超人気バスケットボールマンガで、筆者も当時、夢中になっていました。全巻持ってますよ、ええ。

僕だけではなく、現在、30代後半~40代の多くの人にとってかけがえのない作品のはずです。

テレビ朝日系列で放送されたアニメも大ヒットを記録し、韓国や中国など、アジア各国でも『SLAM DUNK』ブームを巻き起こしました。

今年12月に公開されるアニメは、その大ヒット作の、連載終了から25年以上のときを経ての映画化となります。

しかし、その旧作アニメ声優陣がすべて交代と発表されたことにより、オールドファンたちが一様にショックを受けました。

問題は声優交代劇そのものではない

まず最初に言うと、声優交代劇そのものは悪ではありません。

声も、顔ほどではありませんが、老けます。高校生役を50歳、60歳になった声優が演じるとするならば、多少の無理は出てくることもあるでしょう。

そもそも作品の質を担保するために、自由に声優を選ぶ権利は監督にあります。

加えて、本作の監督は、原作者でもある井上雄彦先生です。彼のイメージに最も近い声優をあてなおすことは、究極の原作リスペクトでもあります。

ただ、それくらいの理屈はオールドファンはみんなわかっとる。それでもなお不満の声を上げざるをえなかったのです。

同様に声優が総とっかえされた例として、ドラえもんやサザエさんがあります。ただあちらは演者の高齢化や、死去による交代などが相次いでおりました。作品を長く続けていくためにどこかのタイミングで切り替えなければいけないのは誰の目にも明らかでした。

つまりはドラえもんは“コンテンツをこれからも永遠に続けていく”という意思の現れだったのに対し、今回は“監督のエゴ”が前面に出た交代劇といえるでしょう。

“エゴ“というと悪く聞こえてしまいますが、原作者の井上雄彦先生が『SLAM DUNK』にエゴを持つのは当然であり、その権利が誰よりもあります。本当にいいものを作りたいと思った時、声優選びでマーケティングに日和ったり、忖度をするのもまた違うと思います。

ただいっぽうで、旧作アニメファンの多くは、『SLAM DUNK』を思い出すとき旧声優の声が耳に鳴り響いてました。

イケメン流川は緑川光氏の冷めた声で、桜木花道は草尾 毅氏の熱っぽい演技で脳内再生されていました。

20年間、声とキャラがセットのお値段だったので、いまさら声が変わっても「ガワが同じだけの別人」に思えてきても仕方のないことでしょう。

このあたりは、「オールドファンの感傷」と言われてもしかたないと思っています。

「Not for me(自分のための作品ではないのだ)」の一言で終わりです。(「そのオールドファンが見ないで誰が見るんだよ」というのはさておき)

だから、問題の本質は「声優全とっかえ」ではありません

シークレットを多用するうえに、旧作ファンを軽視するマーケティングがこざかしい

自分が「クソだなあ」と思うのはシークレットを無駄に多用するマーケティングと、旧作アニメへのリスペクトのなさですね。

本作は、情報を可能な限りシークレットにしておいて、期待感をあおるやり方を多用しています。公開1か月前においてさえ、“山王戦”なのか”オリジナルストーリー”なのかもわかりません。

でもね、大々的に『特報』を告知しておいて実際は中身なしの20秒動画とか、なめとんのか。

旧作アニメの露出を各所で増やしておきながら、公開1か月前になって声優全とっかえの発表とかもそうですよ。

期待値を高めるのと同時にヘイトを高めてどーするよ。

視聴者を信じてないっていうか、やり方が古いっていうか…。

制作陣が、本当にファンを信じているなら、声優交代やら、作品の中身やらをオールドファンに真っ先に知らせたうえで「内容を知っても面白いのでリピートしてください!」と言うんじゃないですかね…。

こんなだまし討ちみたいなマーケティングを繰り返さなくてもいーでしょうが。誠意がないんよね。

そもそも井上雄彦氏が、旧作アニメを好きじゃないのが節々から伝わってきてますよね。『リアル』だったかな。「コートが何メートルあるんだよあのアニメ」ってキャラに愚痴らせてましたね。

旧作アニメは最高じゃなかったかもだけど、最高だって思ってる人もいる



そりゃね、旧作アニメじたいが最高の出来だったかというと、むつかしいところは確かにあったと思いますよ。30年前の手描きアニメの限界というか、『鬼滅の刃』や『呪術回線』にはなかなか及びません。

桜木花道や、仙道の声もイメージとは違うと当時から言われていました。

だからまあ、いろいろ一新してもいいんですよ。気に入らなくてもいい。

でも、もしそこに誰かの『好き』が張り付いているなら、その思いもきちんと大事にするのが誠意ってもんじゃないかなと思うんですよね。

私は若かりし頃、中国に留学したことがあるんですよね。まだ今より貧しい上海でしたわ。

そしてそこではスラムダンクの花道のユニフォーム(おそらく偽物)を着たちびっこがいたるところにおりバスケをしてましたわ。

それくらい『SLUM DUNK』が人気でしたし、彼らをそうさせたのも、監督や制作陣があまり興味がない旧作アニメだったんですよね…。

私自身、ホームシックになりがちな上海生活で、iPhoneもない中、数少ない地上波で触れられる日本のコンテンツの『SLUM DUNK』に励まされましたわ。

「I LOVE YOU!流川!(うぉーあいにー!りゅーちゃんふぉん!)」ってね。まだおぼえてますもん。

あの、軽視されている旧作アニメにもそれだけの影響力があり、『SLUM DUNK』という作品の歴史において欠かせないパーツであるというのをわかってほしいんですよねえ。

たとえば、旧作のOP/EDの曲を歌っていた大黒摩季とかWANDSのBGMを差し込むとかさ。キャラの一人を旧作のままの声優にするとか、それだけでおっさんおばさんは泣くんですよ。ちょろいので。

最後に旧作アニメ愛にあふれた 『劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>』のコピペをはって本記事を終了にします。


『THE FIRST SLAM DUNK』、劇場版シティハンターみたいに面白いといいなあ。

でもシティハンターみたいなサービス精神、なさそうなんだよなあ井上先生…。
腕を組んで修行僧みたいに怖い顔してるラーメン屋っぽいっていうか…。

以上、よろしくお願いします。

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