記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。

ファントムパレード「青の玉響」感想

 呪術廻戦ファントムパレードの今月のストーリーイベント、五条悟たちの高専時代のとある任務を描いた「青の玉響」をプレイした感想記事です。
 タイトルにある「玉響」(たまゆら)は「少しの間」「ほんのしばらく」(デジタル大辞泉より引用)という意味の言葉。最強の2人の短すぎた青い春を表すのにも、懐「玉」・「玉」折の時間軸のストーリーのタイトルとしてもぴったりですね。


ワンクッションとしてファントムパレード公式PVです。
以下、詳細なネタバレが含まれますのでご注意ください。

ストーリーイベント「青の玉響」のあらすじと感想概要

「青の玉響」あらすじ

 ここからは詳細なネタバレを含みますのでご注意ください。まずは、今回のシナリオのあらすじを簡単に。
 今回は、五条・夏油・硝子の3人が派遣された呪物回収の任務の話です。時系列としては懐玉・玉折より前ですね。五条・夏油がメインで硝子は治療要員として後方で待機していました。
 任務内容は、強力な呪霊を生み出す呪物「冬虫禍根」に、呪霊が生まれる前に対処すること。冬虫禍根は土地に根を張って陰気をばらまき、付近住民の負の感情漏出を促進して強力な呪霊を生み出すという時限式の呪物です。
 3人が派遣された段階で、呪霊誕生を止めるには呪物が設置された山ごと地図が書き換わるレベルで削らなければならないほど事態が進行していました。
 五条は自分の術式で即座に山ごと吹き飛ばすことを提案しますが、夏油は住民の今後の生活を案じてその提案は最終手段だと主張し、呪霊が生まれる猶予ギリギリまで他の手段を探ります。最終的に、呪霊誕生の直後に2人が速やかにその呪霊を祓うことで、土地に影響を残さずに呪物を回収することができました。

「青の玉響」感想概要

 よかったですオリジナルストーリー。五条と夏油の高専時代は、原作およびアニメでは星漿体護衛というイレギュラーしか描かれていなかったので、日常の任務をめちゃくちゃ見たかったんですよね。
 尺の都合もあってか、シナリオの進行はあっさり風味でした。しかし、キャラクターの掘り下げ、キャラクター同士の関係性、2人の共闘シーンなど、ユーザーが期待しているポイントが押さえられていました。
 使命感に満ちた夏油の粘り強さ、クレバーさ、大胆さがうかがえるシナリオでした。夏油は思っていたより革新的で頑固な問題児でした。これは五条と並んで問題児2人と言われるのも納得です。
 五条と夏油が喧嘩しながら互いを信頼しているところが見られてよかったです。五条は本当に夏油の判断に重きを置いているんだな……。
 後方支援の硝子が2人とがっつり絡んだのも嬉しいサプライズです。2話、3話は3人の会話からなる章でしたが、距離感が絶妙でした。
 メインは五条と夏油の2人でしたが、「待つのも疲れるんだよ?知らないの?」(「青の玉響」5話より引用)という硝子の台詞で締められたことがとても印象的です。この発言は、硝子が今回の任務で2人の決断と行動をずっと待っていたからなのですが、この3人の関係性をよく表していると思います。数年後、十数年後を思うと切なくなりますが。
 それぞれの考え方の相違があって、信頼し合っているがゆえのハッピーエンドを迎えて、これからもそんな日常が続いていくんだろうと思わせる余韻があって……爽やかなシナリオでした。

「青の玉響」で見せた五条の夏油への信頼

 今回のシナリオを読んで、五条から夏油への無言の信頼が厚いな……と思いました。今回の任務では、初めに呪物の進行具合の調査をした時と、最後に呪霊を祓った時以外、五条と夏油は別行動をしています。五条は任務のリミットが迫るまで、ひたすら夏油の調査と判断を待っていました。

「自分で自分の考えた方法に納得がいっていないから、私に考える時間を与えたんだろう?」(「青の玉響」4話より引用)

 この夏油の問いを、五条は明確には肯定していません。それでも、リミットぎりぎりまで待ったのは夏油への信頼ゆえと見て間違いないでしょう。
 六眼を持つ自身が一番詳細に状況を分かっていますし、それが最適解であると自信を持って断行してもいいはずです。街の機能が維持できないほどに深刻な被害を受けている住民の様子も見ています。五条自身が完全に割り切っていたなら、夏油の納得を待つためだけに2日も費やす必要がないです。
 それこそ、硝子が待つのも疲れると言ったとおり、何もしないでいるというのもストレスがかかります。五条がギリギリまで待ったのは、夏油なら何か良い方法を見つける可能性があるという信頼があったからでしょう。
 
「これしかねえんだよ。他に方法はないって調べただろ?それがオマエの結論なんだろ?」(「青の玉響」4話より引用)
 
 そして、あえて「オマエの結論」というあたり、仮に同じ答えにたどり着くのだとしても、夏油の判断を待って実行すると決めていたのでしょう。解決後、五条は夏油の判断根拠について質問しています。
 
「住民達のことを気遣って、俺の案を却下したけどさ。冬虫禍根が生まれるまで待ったことで、その分―住民達は呪いの影響を長く受けることになった。それは良かったのか?」(「青の玉響」5話より引用)
 
 山を早々に削ろうとした五条の判断も、住民達を気遣う別解のひとつです。というか任務の命令に沿う範囲では最適解です。それでも夏油が違う判断を下した理由について聞いておきたい。「五条は当時、夏油の判断を善悪の指針にしていた節があります」(「呪術廻戦公式ファンブック」41pより引用)という原作者のコメントを思い出しました。今回のシナリオでも五条が夏油の判断を重くみていることが伝わってきます。ここが最強コンビの独特なバランスですね。
 
 ところで、夏油って察しが良すぎませんか?元々、心の機微に敏くて気を遣う描写があるので原作に忠実なのですが。正直、今回シナリオ読んでいて夏油の発言まで五条の心の機微よく分かってませんでした。ただ拗ねてるとか、早く帰りたいとかじゃないんだろうなぁとは思いましたが、住民達への影響を考慮していることとか、夏油の判断に重きをおいていることとか最初は分からなかったです。
 言われてみれば、五条は硝子に夏油に怒っている訳じゃないと言っていました。また、夏油が発動前に根を取り除く方法は見つからなかったと言った時の「そうか。そりゃあ残念だ」(「青の玉響」4話より引用)という声色にも皮肉っぽい調子は全くありませんでしたし、もう少し根の進行が緩やかなら、とも言っています。
 でもあの態度と行動で五条の真意が分かる夏油は、察する能力がありすぎると思います。しかも原作読む限り五条相手に限った話でもなく全方面そんな感じです。何なんだこの男は。

「青の玉響」で描かれた夏油像と玉折へのつながり 

 今回のシナリオの夏油は、非術師のために心を砕く100%善良な呪術師でした。夏油は今回の任務で、長期的な視点で根本的な解決を望み、それを強者ゆえに実現しています。かっこいい革新的な問題児でした。
 でも、個人的にはその描写から、この考え方なら確かに玉折のような追い詰められ方したら呪詛師に……と改めて納得もしてしまいました。どれも夏油の美点ですし、今回のシナリオではいずれもいい方向に働いているのですが。
 
 まず、長期的な視点での解決を望んでいることについてです。今回の任務で、夏油は一貫して住民達の今後の暮らしという視点で動いていました。五条の山削り案に反対したのは、地形変化による住民たちの動揺および国道の損傷による生活への影響を見越してのことです。
 任務達成後の五条との問答に、夏油が長期的な視点を持って望むスタンスの根本がよく表れています。夏油は、五条から呪霊誕生まで待った分だけ住民が呪物の影響を長く受けたことを指摘され、こう答えました。。

「よくはないさ。だが……『冬虫禍根』の呪いは死に至ることはない。だったら問題を解決した後の暮らしを守ることを優先する方が、住民達のためになるだろう?呪われる時間よりも、その後の人生のほうが、彼らには長いのだから」(「青の玉響」5話より引用)
 
 住民達を呪物の影響から早く解放しようとする五条の視点は、任務の命令の範囲内での正解です。でも夏油は「少々、ルールは踏み外す」(「青の玉響」4話より引用)としても長期的な解決を望みます。夏油の優先順位はルールよりも守るべき相手の今後です。
 この長期的な視点をもっているからこそ、後に、呪術師は仲間の屍の上でマラソンゲームを続けるという現実を直視したんだなと実感しました。次に、根本的な解決を望んでいることがうかがえる台詞がこちらです。
 
「呪霊誕生まで泳がせたことで、呪物も回収できたね。悟のやり方だったら消し飛ばしてたところだ」(「青の玉響」5話より引用)
 
 命令違反をしてでも、今後の被害が出ない確実な解決方法を取っています。現実的でなくても、術師だけの世界という原因療法、呪霊を生まない根本的な解決手段の存在を知ったら選択肢に入れるよなと思いました。

 そして、呪物を放置して呪霊が生まれるまで待つという今回の手段は強者だからこそ取れる手段です。元々、呪霊誕生前に処理しろという命令がくだっていたのは、冬虫禍根が特級を生む可能性もある危険な呪物だからです。
 今回の冴えたやり方は、生まれてくる呪霊に勝てるだけの力があるからこそ取れる手段でした。なら、勝てないほど強い敵に当たったら?自分が勝つだけじゃ解決しない理不尽にぶちあたったら?
 
 長期的な視点で根本的に解決しようとするのは夏油の長所です。今回の任務以外にも良い方向で働くことが多かったでしょう。夏油が呪詛師になった原因は性格だけでも、環境だけでもなく、何もかもが悪くかみ合ってしまった負のピタゴラスイッチのようなものだと思っています。
 ただ、個人的には今回のシナリオを読んで夏油が呪詛師になる決断をしたことへの納得感が増しました。見事なキャラクター解釈だと思います。
 そして、その考えと力を高専で使命感に燃えてふるっていた頃の夏油が見られたことがとても嬉しいです。

終わりに

 五条と夏油、そして硝子の青い春のひとときを垣間見ることができて楽しかったです。夏油、五条の考え方や関係性の解像度も上がり満足度の高いシナリオでした。でもまだ満足とは言いたくないです。贅沢だけどもっと青い春が見たい。
 懐玉・玉折の全4回のメモリークエスト第1弾も実装済みですし、順次実装されて数か月のうちにファンパレの中でも青い春が終わってしまうことは確実です。でも、今はもうしばらくこの青に溺れていたいです。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?